ラビがソファに押し倒した!そして…→うっすら笑って「抵抗してもいいんだよ?」 http://t.co/ZoEQslQ




 どうしてこうなった、と一つ小さく溜め息をついた。ラビの体の下でだ。





 本部で顔を合わせたのは一月ぶりだ。
 相変わらず何がそんなに楽しいのか聞きたくなるような笑顔のラビに酒に誘われた。教団の奴等は付き合いが悪いとラビは口を尖らす。まあ、ガキで酒を嫌うモヤシ、飲ませたらコムイが五月蝿そうなリナリー、妙に仕事熱心で職務中の飲酒など断固拒否の姿勢を崩さない番犬、それどころじゃねえ科学班。付き合い以前の話ではある。
 俺は別に嫌いでもないし(かといって自分で用意してまで飲みたいと思う程好きでもない。あくまで目の前にあれば手を延ばす程度だ)どれたけ飲んでも翌日に残らない便利な体質「だった」こともあり自然とラビと飲む回数は増えていっていた。

「いっそルベリエでも誘ったらどうだ」
「ヤだよ酒がまずくなるさ…」

 何処からくすねてきたのか知らないが瓶二本を後生大事に抱えるラビに揶揄しておく。嬉々として応じているなどと勘違いされては堪らない。ただでさえ鬱陶しいタチなのにその上そんな勘違いまでされたらそれはもううざいことだろう。斬り捨てたくなるかもしれない。

「ユウ、ドア開けて」

 瓶二本と塩漬け肉やらチーズやらが入った籠を抱えているラビが俺の部屋の前でそう促す。ラビとブックマンの部屋は教団員の中でも一、二を争う程汚いという(因みに対抗馬はモヤシの部屋だ、最近番犬と同室だから多少はマシになったらしいか)飛んでもない部屋だから飲むときは大概俺の部屋だ。まあそれはいい。いつもの事だ。



 そう、全部いつもの事だった筈なんだが。



 いや違うな、いつもと違うことも無きにしも非ずだった。ラビがグラスを空にするペースは妙に早かったし、食いながら飲むタイプの筈なのに二本の瓶が殆ど空になっている今も籠の中身はほとんど減ってない。何時だったか忘れたが、次の日残ってると困るから何時でも控えめにしてる、と笑っていた筈の奴が。
 まあそれは兎も角、取り敢えずこの人の上に乗っかってやがるこいつを可及的速やかに排除すべきなのは自明の理だろう。男に乗られて嬉しい男などいるまいし、こいつはヘタレ兎の分際で俺よりガタイがいいという俺にとって不都合で不愉快な現実を思い出しそうになる。まあもう思い出してるが。

「ユウ…………、」

 溜息と混ぜるように掠れた声で俺を呼んだラビが、俺の顔を撫で回した。触られたところがざわっとする。嫌悪による鳥肌とはまた違うざわめきに閉口した。なんだこれは。
 
「ね、いい?」

 何がいい? だ。嫌な予感しかしねーよ。良くない。全然良くねぇぞ。
 薄っすらと口元を笑みの形に歪めたラビが、

「…………ヤなら、抵抗してもいいんだよ?」

 熱を持った声で囁きかけてきた。

 …………。
 手を伸ばした先、枕元にあるのは硬質な感触。

「よし、なら遠慮無く」


 ゴッ


 掴んだ愛刀の柄で、ラビの頭を横から殴りつけた。








 しくしくしく…………

「…………ヒドい、ヒドいさ…………」

 しくしくしくしくしくしく…………

 部屋の湿度が上がっている気がする。実に鬱陶しい。いい加減うんざりして、ベッド(勿論俺のだ)の上で体育座りしながら恨み言を呟いて泣いて? いるラビに声を掛けた。

「うっせぇな、抵抗していいっつったのはお前だろうが」
「こんな時くらい空気読んでくれたっていいじゃん! 普通あそこで殴る!? 俺達恋人どーしだよね!?」
「空気は読むもんじゃなくて吸うもんだろ何言ってんだお前。あと誰が恋人だ、人の部屋の湿度上げてるようなヤツのことを恋人とは言わねぇ。大体お前が殴っていいっつったんだろうが」
「殴っていいなんて一ッ言も言って無いさ!!」

 言ってなかったか?
 あの状況じゃ抵抗の方法なんて殴るか蹴るかしかないだろう。
 ――――――あぁ、

「蹴り上げられる方が良かったのかお前」
「誰 も そ ん な 事 は 言 っ て ま せ ん !」

 一字一字区切って強調しながら答えたラビは、俺を迫力のないタレ目でキッと睨みつけてからがっくりと肩を落とした。

「ほんとにもー…………信じられねーさ…………どれ位ぶりに会ったと思ってるんさ…………」
「一月じゃねーのか」
「…………。三十四日と八時間六分ぶりね」
「一々そんな事記録すんな、無駄だぞそれ」
「ユウには意味なくても俺にはあんの! ユウと会える時間の記録は俺の趣味なの!」

 へー。変な趣味…………。
 呆れが顔に出たのか、ラビがまた拗ねたように体育座りで壁のほうを向く。

「…………」

 会えただの一月ぶりだの言いながらその時間を無駄にしてんのは誰だって話だが。
 仕方無しに立ち上がり、背を向けるラビに腕を回す。

「…………何さ」
「そもそも逃げ道作るお前が悪い」

 抵抗してもいいなんて言われたらせざるを得ないんだ。そんな俺の性格はとっくに知ってるだろうに、何度似たようなことをすれば覚えるんだか。

「うー…………」

 肩越しに顔を近づける。互いの視線が近い。
 暫く視線を交わし合い、

「あーもー、仕切り直しさ」
「そうかよ。次は逃げられねーようにな」
「じゃあ逃げんなってーの」



 んで仲直りでにゃんにゃん。