ラビ×ユウ(←アレン)海賊パロ。
 大変恐れ入りますがこちらの小説は十八歳未満の閲覧は堅くお断りします。
  エロ及び暴力・残酷表現が非常に強くなります。どちらかと言えば残酷表現がメインです。普通に人が殺したり殺されたりします。
 登場人物の大半が腹黒(アレン)かヤンデレ(ラビ)かイカれてる(神田)かのどれかです。
 上記の設定に不快感を覚える方もどうぞお帰りください。

 

3.女王の狗と海賊共


 沿岸で探していた相手を見つけたのは、船員全てが予定通り戻り船を出向させてから僅か半日ほどの事だった。
 英国海軍第一艦隊旗艦、「クイーン・グローリー」。名誉ある英国海軍第一艦隊旗艦の座に恥じず、性能のみならず装飾性にも気を配られたその佇まいは他を圧倒する。その傍に船を付けた「ブラック・スワン」は元々小型の船の事もあり、宛ら親に沿う子のような姿だ。
「クイーン・グローリー」から接近許可の信号を読み取ったラビは、しかし渋い表情だ。船長が選んだ随伴の船員の中に自分自身が含まれていないこともそれに輪を掛けた。会う相手は貴族だからと滅多に纏わない小奇麗な礼装に袖を通し、ボタンを止めている船長に今更ながらに抗議の声。

「だから。俺とお前に同時に何かあったら、それこそどうするんだ」
「俺らが死んだ後の事なんて知らないさ」
「…………お前な」

 そもそも殺される予定など彼らにも無い。ただ単に彼らは王室の財産を返還しに行くだけだ。それは称賛されこそすれ、咎めを受けるような事ではない。彼ら「ブラック・スワン」は王室からも許可を受け、税も支払っている列記とした私掠船なのだから、他国籍船への略奪行為が罪に問われる事もない。
 最もそんな事はラビも重々承知の上だ。
 ラビにとって問題なのは、これから自分達の船長が渡ろうとしている「クイーン・グローリー」の中に、絶対にいる人物のことだ。

 アレン・ウォーカー少佐。

 それはラビにとっては忘れたくとも忘れられない、仇敵の名前だった。
 代々英国海軍内で優れた司令官を輩出し、高い地位と発言力を持つウォーカー伯爵家。その「唯一」の正当な後継者。その父親もやはり高名な海軍司令官だった。当時イスパニアに押されていた海の勢力図を一気にひっくり返したのは、その先代のウォーカー伯爵だと言われている。その先代は非常に有能だった。そう、自国の船を荒らす海賊を多く拿捕した事も知られている。
 そしてその拿捕され、港に吊るされた海賊の中にはラビの父親も含まれていた。
 つまるところそのアレン・ウォーカー少佐はラビからしてみれば父の仇であるのだが、本当の禍根はそれでは無かった。

「あいつら、うちの船長に何かしやがったら土手っ腹に穴空けてやる」

 物騒なラビのセリフに、側に居て話を聞いていた操舵士補は震え上がった。この優秀な尊敬するべき操舵士、副船長殿は何かにつけて頭に血が登り易い船長を良く諌め補佐してくれるのだが、その肝心な船長が絡むとなると船長以上に激昂しやすい。そうなったらもう誰にも止められない。

「おいそこのお前、このキレてる奴縛りつけとけ。間違っても向こうに来させるなよ」

 挙句の果てに船長からはこんな無茶振りだ。俺には無理です、と力無く首を振るしか無い。
 非戦闘員とはいえ副船長は弱くない。何せ二人がこの船に来た切っ掛けは彼らによ寄る武力制圧だが、今と変わらず刀を振るっていた船長の隣でイイ笑顔で逆らう船員を殴り飛ばしていたのは他ならぬこの副船長だ。非戦闘員とされている理由が、下っ端達には分からない。
 哀れな船員達は、海軍が一刻も早く彼らの頭を返してくれるよう、碌に信じたこともない神に祈る他無かった。





 洋上での船から船への移動は、通常は小舟を介して行うことが多い。
 だか「ブラック・スワン」は衝突ギリギリまで「クイーン・グローリー」に船体を寄せるなり、数名が甲板から甲板へと飛び移ってきた。
 荒くれ者共に相応しい姿に、貴族階級の士官が多い「クイーン・グローリー」の船員は顔を顰める。相手は合法とはいえ、日頃駆逐している海賊達とそう大差ない存在だ。
 隠し切れない軽蔑の視線に、けれど向けられた「ブラック・スワン」の船員は誰一人として反応しない。そして彼らの船長の視線はただ一人に向けられている。
 人垣の奥の方からゆっくりと歩み出るのは、青年というにはまだ早いような、華奢な少年だ。けれど水兵見習いにしては、纏う軍服と、胸の階級章とが異様な存在感を持つ。

「ようこそ、クイーン・グローリー号へ」

 口の端を吊り上げての歓迎の言葉。
 一瞬の間を置いて、神田は敬礼を取った。付き従う船員達も、見様見真似で同じような形を摂る。

「来船の理由は伺っています。どうぞ」

 居住区域に招き入れようと先導する相手に、何人かはちらりと元いたブラック・スワン号を見やった。彼らの副船長殿が、大荒れで無ければ良いのだが、と。
 とても軍艦とは思えない豪華な設えの船内に、自分達の日頃のねぐらを思い浮かべた者は苦笑いを浮かべる。余程船内での地位が高くない限りは「ブラック・スワン」では四、五人が一部屋に押し込められている。荒くれ者ばかりが数人で顔を突き合わせるのだ、むさ苦しさはこの上無い。

「相変わらず派手な船だな」

 そんな船員達の雰囲気を感じ取ったのか、神田は鼻で笑った。
 先導に徹していた少年、列記とした英国海軍士官アレン・ウォーカー少佐が振り向いてくすりと笑う。

「形から入るのを好む人が多いんですよ」
「自分の屋敷と勘違いしてるんじゃねぇか?」

 気安い様子で交わされる言葉に、随伴の内何人かは目を剥き、何人かは押し黙る。
 やがて辿り着いたのは、廊下を挟んで左右の部屋。内、左側の部屋を示して少年はにこやかに伝える。

「お付きの皆さんは此方にどうぞ。エールとワイン、何方がお好みでしょう」
「飲めりゃ何でもいい。贅沢言ってられる身分じゃねぇからな」

 海軍士官からの言葉に戸惑う船員の代わりに答えた船長に声を上げて――――――それこそ少年らしく、だ――――――笑った彼は、頷いて後方から付いて来ていた別の兵士に酒の手配を「命じた」。
 明らかに歳下の少年から命じられた彼は、それを恭しく受諾する。

「船長殿は此方へどうぞ」

 そうして招かれた先は右の部屋。

「お前ら、行儀よくしとけよ」

 そんな言葉を部下に掛け、彼らの船長は姿を消した。



 ラビにとってアレンは親の敵。
 神田にとってアレンは…………