モヤシに、俗に言う告白をされたのは丁度二ヶ月前だった。











 まぁ色々あって諾の返事を返したまでは良かった。
 だがしかし、問題はその後だ。

 アイツは何時まで経っても、接吻以外の事をしてこなかった。

 それ以上の事をしたいのか、と訊かれれば正直返答には窮する。
 したいかしたくないか、というよりは「当然するだろう」と思っていたというのが正しい。
 特定の相手を作った事は無いが夜の誘いを受けたことは――――――受けたことはない――――――、両手でも足りない程ある。だから、当然、世間一般的に「恋人」と言われる関係になれば勿論するのだろうと思っていた。

 いた、んだが。

「…………チッ」

 畜生、鍛錬に身が入らねぇ。そもそも鍛錬中にこんな事で考え込むなんざ論外だ。三ヶ月前の俺なら殴ってるところだろう。俺が、こんな浮ついた事で気を散らすなんざ…………。

 何が悪い、モヤシだ、いや違う俺だ。
 纏まりのつかない思考の中でぶつぶつと文句を重ねつつ、俺は六幻を仕舞った。










「神田、こんばんは」
「…………おう」

 今日も今日とて奴は枕を抱えて、にこにこと笑いながら俺の部屋にやってきた。
 双方共に教団に居るときはこうしてどちらかの部屋で一緒に寝ている。文字通りの意味で、寝てるだけだ。アイツの部屋は汚いから俺の部屋で寝ることの方が多い。
 俺が先にベッドの奥側に入り、その後モヤシがベッドに入る。シングルのベッドは男二人で入ると大分狭い。そのうちデカイものに変えさせよう…………そんな事を思いながら二人してベッドの中へ。

「おやすみなさい、神田」

 そう言って微笑んだモヤシは俺の頬に口付ける。まるで幼いその仕草に、何故か遣る瀬無い。
 …………何なんだ、お前は。
 いや確かにこれが十五のガキの恋愛としては正しい。多分間違ってない。正しくないのはそれ以上の如何わしい事を期待してる俺だ。
 ――――――つーか。もしかして、待ってるだけの俺が間違ってるのか。
 ふとその考えに至って愕然とした。
 何時も男から受ける誘いは「抱かせろ」だったからこいつもきっとそうに違いないとばかり思い込んでいたが(そしてそれでも良いと思っていた)、でも口に出されたわけじゃねぇ。
 もしかしたら逆のことを期待されているのかもしれない。
 だとすると俺の悩みは奴からしてみれば全く意味不明だろう。

「…………」
「? 神田?」

 じっ、とモヤシを見る。そのモヤシは不思議そうな顔をして顔を覗き込んできた。
 …………俺の考えどおりだったとしても、十五のこいつを抱くというのはどうなんだろう。それは犯罪じゃねぇのか。つーか抱き方なんか知らねぇぞ…………。

 実行に移すのは犯罪染みてるだろうが、聞く位は許されるだろう。

「おい、お前」
「はい?」
「お前は抱く方と抱かれる方、どっち希望なんだ」
「――――――…………」

 俺が尋ねるとモヤシは目を見張った。そんな事を訊かれるとは思わなかった、という顔だ。そりゃそうだろう。
 俺だって普段そんな事を一々確認しない。

「そう…………ですね…………」

 モヤシは少しの間を置いてからゆっくりと呟いた。


 多分アレンは「え、何言ってるのこの人攻のつもりだったんですか!?」とか真剣に考えてる。