「う、うわぁぁぁ…………」

 俺を見た奴らが顔を引き攣らせて後退る。
 見た目が大して変わらなかったアレンと違い俺は見てわかるレベルさ。ま、別に隠そうとも思ってない。無駄だし。
 後ろでは青い顔をしてうつむき加減のアレン。ついさっきまで総合管理班のところにいた俺達は下着を貰いついでにと女物の服を勧められてた。女装趣味はないから丁重にお断りしたけど、どうしてもと言われてデニムのショートパンツに短いシャツという季節をまるで無視した服を試着だけした。…………実に残念さ、体はいいのに首から上が、てんてんてん。
 アレンはスカートを勧められて半泣きの顔で首をブンブン横に降っていた。そんなに嫌さ?

「どうしてラビはそんな普通にしてられるんですか!?」
「だって普通にゃ出来ない体験だもん。愉しまなきゃ損さ?」

 というのは建前で勿論俺もヤケクソなんだけどね。
 俺の答えにアレンはまたがっくりと首を落として、

「無理だ…………理解出来ない…………」

 とぶつぶつ始めた。その後ろではホクロ二つが右往左往している。女になったアレンにどうしていいか分からない、そんな顔だ。監視なんだから建前としては二十四時間一緒にいなきゃいけないのにその対象が異性になった、俺だったら喜ぶ(まぁ相手にもよるけどね)けど、リンクはそうも言ってられないらしい。ご愁傷様。
 因みに元凶のユウは我関せず顔で蕎麦を啜ってる。

「ねぇユウ、どう?」

 そんなユウに自分の胸を指さして感想を求めた。
 ずず、と蕎麦を啜ったユウは一言。

「正直なところ、想像以上にキモくてどうしたもんかと思ってる」
「ひっでぇ!」

 なんて女のコになりがいのない返事…………。
 いや、超タイプとか言われてもそれはそれで困るけど。ってかユウが言うわけ無いけど。

「お前はキモいし、モヤシは見ただけじゃ分かんねぇし。つまらねぇ奴ら…………」
「おーいユウさーん…………」

 だいたいつまんないとかキモいとか言われても困るさ、数日はこのままなんだから。
 ふと、後ろに通りがかったリナリーが俺を凝視した。
 視線に気づいて手を振る。ついでに胸も揺れる。
 リナリーが目眩をこらえるように目元に手を当てて、それから近くにいたエミリアにトレーを渡して食堂をでていった。行き先は大体予想がつく。コムイんところだな?
 その一部始終を横目で見ていたユウが、

「リナが戻ってくる前にズラかるぞ」
「へいへい、りょーかい」

 実に賢い選択をして、蕎麦を啜る作業に戻った。
 







 慌ててローストビーフのサンドウィッチとポタージュスープを腹に詰め込んでユウと一緒に食堂から逃げ出す。
 その途中図書館帰りかジジィとすれ違った。顎が外れそうなほど大きく口を開いてそのままぶっ倒れたけど許せジジィ、今の俺たちには救護する余裕は無いんさ!

「何処に逃げる?」
「バレなさそうなとこ!」

 修練場や書庫は駄目だ、直ぐ見つかる!
 俺達が行かなさそうな…………思いつかなさそうなとこ…………

「つってもな…………」
「あー、あそこは? 大聖堂!」
「…………罰当たりだなお前」

 俺無神論者なもんで。
 呆れ気味に呟いたユウはけれど反対するつもりはないようで、軽い足取りで走っていく。
 足の早いユウに置いていかれないよう、俺も慌てて走りだした。

「うわ、全然走れねー…………」

 全力で走ってるつもりが全然スピードでない。駄目だこりゃ。
 先行したユウを必死に追いかけて、大聖堂へ向かった。









 大聖堂は閑散としている。
 ミサをやってたり人死にが出た時でもなければ敬虔な信徒以外は中々やって来ない。
 静まり返ったそこで、俺とユウはそっと物陰に隠れた。

「うわっ、寒ぃ!」
「…………チッ」

 暖房が入っていないため、石床から冷たさが這い上がってくる。
 どうやらこの体は余り寒さに強くないらしいさ。余りにも寒いから隣のユウの腕にぴたっとくっついてみる。
 ついでにサービスの一つとして胸を当ててみた。んが。

「おい、当てるな」

 心底嫌そうな顔をするのはどういう事なんさ。

「ユウ、もーちょっと喜ぶフリでもいいからしてみせてよ…………」
「何か気持ち悪ぃ。微温い水の詰まった風船みてぇ」
「…………ユウ、それでも本当に男?」

 俺の言葉にユウはムッ、としたように眉根を寄せた。
 世の中にはそりゃ貧乳好きだったいるけれど少数派だ。そしてユウが貧乳派じゃないのはさっきのアレンに対する態度を見れば分かる。

「胸が嫌なんじゃなくてお前の顔に付いてるのが嫌なんだよ」
「そんなのちょっと想像力働かせれば薬掛ける前に分かるんじゃ」
「分かんねーよ。実物見て想像以上に変だった」
「ユウがぶちまけてくれたお陰で俺暫くこのままなんですけどー?」

 文句を言ってみるがユウは興味なさそうな顔で俺(と俺の胸)を一瞥した。それから手を振って、

「じゃあお前暫く俺に近寄んな」
「酷っ!! 本当に酷い!!」

 なんて言い草さ!!

「ちょっと喜ぶフリしたっていいじゃんか!!」
「うわ、何す…………っ、触らせんな、キモい!!!」




 ラビュ…………?(首かしげ)