「…………えっ?」
一瞬、自分の目を疑った。
此処は何の変哲もない本部の談話室。
いつも通り人がいて、いつも通りの光景だ。
だけど。
中央のソファーにちょこん、と座っている「二人」はどこからどう見てもいつも通りじゃなかった。
「…………あの二人の子供?」
所構わず、僕の心中なんか全く気にせずベタベタベタベタベタベタベタベタしている二人組を思い浮かべる。
そんな、まさかね。
黒い髪の女のk…………男の子…………うーん? 子供と、赤い髪の男の子。
前にコムイさんの所為で神田とラビが縮んだ時よりも、まだ小さい。
そんな二人は手をつないだままソファーで、互いに頭を寄せ合うようにして眠ってた。
「…………一体…………」
この子達は何処から来たんだろう。
じぃー、っと眺めていると、黒い方の子がパチッ、と目を開いた。
真っ黒な黒目がちの大きな瞳が僕を映し出す。
暫く僕をじっ、と見つめていたその子は小さな腕を上げて、僕を指差し。
「もやち!」
一言、そう言い放った。
「コームーイーさーん!? これは一体…………!」
小さな子供二人をだきかかえて司令室に走る、するとそこは既にリナリーにより制圧された後だった。
コムイさんを黒い靴で踏みつけにしているリナリーが、駆けこんできた僕らを見て溜息をつく。
「…………犠牲者は神田とラビなのね」
「犠牲者って…………まぁコムイさんの薬のせいにしか見えないですけども」
黒い子に呼ばれた仇名と、それから赤い子が目を覚ますなり僕を「アレン!」と呼んだ事を思えばこの子達は僕の事を知っている→しかもこの色合→この二人はあのラビと神田である、という三段論法で僕は此処まで走ってきた。些か短絡的かもしれないけれどコムイさん絡みならあり得るだろう。既に前科何犯だか忘れた。
「…………、」
「ユウー、ユウー!」
イノセンスまで使って最短距離を突っ走ってきたけど、その間静かだったら二人、というかラビが騒ぎ出したのでふと腕の中を見る。すると、そこでは目を回している神田と、その神田に向かって一生懸命に手を伸ばすラビ。
「うわ、わわわ、ごめんね!?」
動かない神田をそっ、と書類まみれのソファーに横たえるとラビは僕の腕から飛び降りて直ぐに神田に駆け寄った。
心配そうな顔で神田の顔を覗き込んで、それから自分の小さな手で神田のこれまた小さな手を握り締めている。
「兄さんが、談話室のお茶に薬を仕込んだの」
「え゛」
どうしてそう、テロリストみたいな事をするんだろうこの人。
「それを神田とラビが飲んじゃったのね」
「…………子供化する薬ですよね」
以前も、本部の引越しの時にそんなようなものをこの二人が被っていた。決定的に違うのはあの時はあの二人は縮んでも中身は何一つ変わらない、18歳の彼らだったけれど今はどうも外見相応の中身らしい。神田なんて「もやち」だし。「し」が発音できないんだろうか。
「以前の薬の改良版なの。ノアの無力化を狙ってたらしいけれど?」
ぐりぐり、と相変わらず容赦なくリナリーがコムイさんを踏み潰す。
リナリーの足から下は見ないようにしながら、
「戻るんですよね?」
「戻させるわ。責任持ってね」
ふぅ、と溜息をついたリナリーは一言。
「だからそれまで、暫くその二人の事お願いね」
――――――僕はリナリーにNOという事なんて出来なかった。