おトイレネタ。
「ふぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ティ、ティエドール元帥が倒れられたぞ!?」
「うわスゲェ、鼻血が噴水みたいになってる――――――!?」
「誰か担架、あと輸血の用意を!」
「ブックマンの魂が抜けかけてるぞ!」
「戻してやれ、じいさんなんだからそのまま逝くぞ!?」
ああ、これは一体どうしてこうなったんだろう…………。
目を覚ました神田とラビを連れて司令室を後に(だってあんなリナリーのコムイさんへのおしおき、子供の精神衛生上宜しくない)した僕は取り敢えず食堂に連れてきた。丁度ご飯時だったし。
けどそこにはタイミング悪く、ティエドール元帥とそれからラビを探していたブックマンがいた。
二人は僕が近くによるなり僕が抱えていた二人を凝視して、それからこの二人が神田とラビである事を告げると僕から二人を奪いとり、そしてこの状態だ。
まぁ確かに小さな手を伸ばして「ひげー、だっこ!」だとか「じーじ、だっこー」とか言われたら奪い取りたくもなるだろうけど。
…………でもいいのかな、ブックマンの数少ない髪の毛、ラビに抜かれてるけど。ティエドール元帥のヒゲも神田に抜かれてるけど。
だっこをせがんで、望みを叶えられた二人は満足そうにしている。小さな手に握られた細長い物は見ないことにした。
暫く望み通り抱っこされて満足そうだった神田は、ふと眉を八の字にしてラビを見た。
「ユウー?」
それに気付いたラビが、神田に手を伸ばす。
「…………ちっち…………」
「!」
神田が何事か呟くと、ラビが「!」と驚いた顔をした。
何だろう。
ラビが今度は僕に手を伸ばして懸命に訴えかける。小さな子のこんな仕草は可愛らしい、と素直に思った。
「アレンー、アレンー!!」
「はいはい、此処にいますよ?」
「ユウ、しーしー!」
「…………?」
…………。可愛いけど意味は分からない。
僕に通じていないことを悟ったのかラビもまた眉根を八の字にして、
「ユウ、もれちゃう…………」
「…………。…………、…………、」
あ、もしかして!
「トイレ?」
こくり、と神田とラビが同時に頷いた。
その瞬間のティエドール元帥は凄かった、その辺でブリッジみたいな格好で倒れていたのに上半身の筋力だけでガバッ、と立ち上がり神田を抱き抱えたまま走り去る。
行き先はトイレだろう、多分。
「あーあ…………あれ、神田が戻ったら記憶から抹消したくなるんだろうな…………」
近くにいたリーバーさんがぽつりと呟いた。ま、まぁ確かに。黒歴史だろう。僕もあの辺りに触れるのは止めておいてあげよう。多分血が流れそうだし。
「師匠――――――! 犯罪はいけません!!」
…………これまた近くに居たマリが飛んでいった。
犯罪、になるんだろうか。僕が連れてった方が良かったのかな…………
少しスッキリしたような顔の神田と、その神田を抱えているマリと「酷いよマー君!」と騒いでいるティエドール元帥が戻ってきてからわずか数分後、今度はラビが「しーし!」と騒ぎ出した。
僕は取り敢えず飛んでいったブックマンが倒れない事を祈って胸の前で十字を切っておいた。
ティエドール元帥がまるでマリに信用されていない件について。前科があると思われる。
ブックマンの場合止める相手が居ない。