神田によるストリップショーな話。










 まさか殴り合いをする気か、と警戒(彼らの喧嘩の結果周囲の人間がとばっちりのような被害を受ける事は、ままある)していると、神田ユウはそのまま体を倒した。

「――――――は?」

 そして、ウォーカーと体を重ねあわせる。…………唇をも、だ。

「――――――…………」

 …………。

「ん…………。本当にするんですか? 確かにご無沙汰ですけど」
「最近全然だっただろうが。俺もお前もここに居るときにヤらないで、いつヤるんだよ」
「僕、結構任務先でするのも好きですけどね」
「お前真面目に仕事しろ」

 呆れたように笑った神田ユウが、シャツのボタンに手を掛けた。
 一つ一つ外しながら、人の悪い笑みを浮かべて私を見る。
 何処を見ていいのか、それ以前に見てもいいものか、いや決して良くない、それ以前に彼らは何をしているのだ!?

「な、何、をするつもりだ!?」
「何って」
「これからセックスするだけですけど」

 ウォーカーのまるで何でもない、それこそ今日の天気を伝えるかのような程度の言葉の軽さの響きに、私は絶句した。

「サービスで金は取らないでおいてやる。特等席だ、有難がれよ」

 ニヤリ、と笑った神田ユウは私に見せつけるようにしてシャツのボタンを外していく。

「っ! 〜〜〜〜!?」
「人に見せるけるような趣味はないんですけどねえ」
「は、たまにはいーんじゃねぇの」

 一番下のボタンまで外し終えた彼女は何処か芝居がかった仕草で、右肩から、そして左肩へとシャツを脱ぎ落とす。
 白い素肌を見ないように、必死に視線をそこからは放しながら。

「――――――、何を考えているんだ!? ウォーカー、長官に報告するぞ!?」

 目の前で繰り広げられるとんでも無い淫行を止めようと、彼らにとって効果がありそうな単語を選んで叫ぶ。
 だがしかし、ウォーカーが何か応える前に神田ユウが鼻で笑いつつ返してきた。

「好きにしろ。何分何秒掛かってどんな体位でどれだけヤッてたか、その時俺達がどうだったか。きっちり測って纏めてお前の大好きなルベリエに報告してみろよチェリーボーイ?」
「――――――!」

 できる、はずがない。

「え、リンクって童貞?」
「あの様子みたらどう見たってそうだろ」

 ウォーカーは兎も角、神田ユウからは馬鹿にしているニュアンスしか感じない。

「そ、そもそもウォーカー、君はまだ十五歳で…………!」
「あ、十六になりました。多分」

 片手を上げての申告だがそんな事はどうでも良く、私が言いたいのはそれではなくて!!

「馬鹿だなお前、コイツの師匠はあのクロス元帥だぞ? そもそも筆下ろしが一桁台の年齢の奴に言っても今更すぎんだろ」
「因みに初めての相手は師匠の愛人の一人です」

 次々と告げられる衝撃的な事実に開いた口が塞がらない。
 その間にも神田ユウは手を止めること無く、自分の背中に手を回した。
 確実に「絶対見てはいけないもの」が露になる、そう理解して慌てて顔を背け、これまで纏めていた報告書を顔の前に飾す。――――――見てなるものか!


 パサッ。


「は?」

 何かが突然、頭に降って来た。
 軽くて、少し暖かい何かが。
 軽い衝撃を感じた頭部へと手を伸ばし、それに触れる。それは布製の何かだった。少し固いワイヤー、のようなモノが入っている…………
 というかこれは…………。
 暫く凝視してしまう。
 繊細なレースの、黒い布地。二つ丸みのある形の…………これは、所謂、女性の胸部の保護を目的とした…………

 たった今まで神田ユウが身につけていたであろう、下着だった。




 ブラぶん投げたかと思うとシュールだ。