真夜中の教団。

 ガチャ。

 任務から戻り疲れた体を引き摺って自室に戻れば「何時も通りの自室」で心底嫌になった。
 出かける前と大差ない内装。だが。

 天井の隅に二つ。照明の影に一つ。カーテンの影に…………一、二、三、四…………四つだと!?
 全部即座に引っぺがして、部屋の中央に一纏めにする。
 箱のような形のもの、筆のような形のもの…………色々あるが、共通しているのは透明のガラスが付いている事だ。
 それはつまるところ俗に云うカメラという奴だ。それも、盗撮用の。
 …………あいつら…………

「人の留守中にくだらねぇもん仕掛けやがって…………!」

 いつもの事ではあった。毎日毎日、教団に来てからはいつもの事だ。何時まで経っても慣れはしないが。そして中身の記録を消し去る作業に慣れてしまったのも心底嫌だ。
 溜息をついてから、カメラに怒鳴った。



「リナ! 今すぐ取りに来ねぇと、お前のカメラも叩き壊すぞ!!」



 数分後やって来たリナリーは、四つの内一つを事も無げに持ち帰って行った。「何で盗撮用カメラなんか仕掛けた」という問いは今更過ぎて無意味だ。だからしない。
 残りの仕掛け人不明のカメラについては何の躊躇いもなく、六幻を振り下ろして叩き壊す。
 飛び散ったガラスやパーツに改めて溜息をついて、俺はそのままベッドに倒れ込んだ。







 ふわり。

「…………ん…………」

 眠りがまだ足りない。
 もう少し…………だけ、眠っていた…………い…………?

 ふわり、って何だ。

「!!」

 バッ、と布団を跳ね上げて飛び起きる。
 と、だ!

 そこには丁度俺を挟むような形で、見たくもない赤白頭の嫌な奴らが――――――!

「てめぇぇぇ!! 何でいやがる――――――!」

 しかもなんでこいつら裸なんだよ! 気持悪ぃな! つーか何処から入って来たんだよ施錠してんのに!
 真剣に怖ぇ!

「んぁー? あー、おはよーユウ任務お疲れ様ー」
「おはようございます神田、今日も綺麗ですね」

 人 の 話 を 聞 け !

 何で野郎の人肌で目ぇ覚まさなきゃならねーんだよ、新手の拷問か!? 嫌がらせか!?
 朝から確実に体力と精神力が削られた。
 だが驚くべき事に、そして忌むべき事に、これが俺の日常だ。







 この教団の奴らは頭がおかしい。
 それは幼馴染と呼べるだろうリナリーを筆頭に、ほぼ全員が該当する。

 男共は、女もいるっつーのに、何故か俺の尻を追っかけまわす。(女が全く居ないならまだ分かるが、どうして俺を追いかける!?)
 そして女共はそれを見て喜んでる。(何が楽しいんだよてめぇらは!)

 …………頭おかしいだろどう考えても…………。

 此処に来てから何度所謂「貞操の危機」に晒されたか数えるのは、最早俺がこれまでに食った蕎麦の数を数えるようなもんだ。
 朝飯の蕎麦を食いながら、疲労の余り机に腕をついて額を抑えた。ジェリーが黙って朝食に添えた栄養ドリンク(科学班作)が、非常に有り難い。
 我ながらよくノイローゼにならないもんだ。
 視界の隅では食堂の机の一つを借りきってリナリーが何やら「薄っぺらい冊子のような物」を作っているがあれの中身は気にしない方が身の為だ。大体の予想は付いてるが。
 じわり、と首筋に感じる粘着質な視線にももう苛立つ事すら出来ない。


 ――――――あー、くそ。転職してぇ。


 思わずそんな事を思って、深く深く溜息を付いた。



 オー人事。

 2011神田誕生日記念特設ページへ
 小説頁へ