夜。モヤシや兎から逃g…………違う、戦略的撤退しつつ、襲撃を回避していたが何時の間にか奴らの姿も消え(一生消えてろ)、漸くの安堵に溜息を付いていた頃。
 たまたま通りがかった談話室にはマリとミランダがいて(しかしこいつらは良く傍にいる、まぁヒゲの公認の恋人同士なんだから当然なのか)、俺に声をかけてきた。茶に誘われ、断る理由もなく共に飲んでいた。しかし、突然マリが顔を蒼褪めさせたので声をかけておく。

「マリ? どうした、顔色が悪いぞ」
「…………いや、何でもない」
「? マリさん?」

 同じ室内には監査野郎がいて、お前モヤシはどうしたんだと訊くと「今は監視対象外時間です」とどこか斜め上を見上げながら呟いた。よく知らんが、そんな時間あるのか。見ればマリとミランダは監査野郎作らしき甘ったるいもんを食っていた。
 つーか、そう言えば人の気配があんまりねぇな。
 出払ってんのか?

「――――――あー、くそ。早く任務寄越せよ…………」

 体が鈍るし、奴らからも逃げ…………戦略的撤退出来る。
 同行のファインダーも大概おかしい奴らばっかりだが戦闘能力的から考えるとさしたる問題は無かった。いや、何度か夜這いにきやがった奴を半殺しにして放置してきたことはあるが。

「…………。鍛錬してく…………」
「や め ろ」

 いい加減マリとミランダの近くに居るのも悪いからとそう切り出せばすかさずマリが制止してきた。

「?」

 疑問に思ってマリ達を見れば、マリと監査野郎が溜息をついて首を振った。そこに籠められていた「聞かないほうが幸せになれる」「関わってはいけない」という二つの意味を汲み取り俺は鍛錬は諦め、その周辺で今行われているかも知れないことに関しては努めて気にしないことにした。――――――大体においてこの教団では見ざる聞かざる言わざるの方が幸せになれる。少なくとも俺はそう思う。

 …………俺が教団を裏切ったらその時の理由は絶対アイツらだろう。
 疲労に溜息をついて、天井を見上げた。









 ――――――一方その頃。
 修練場。


「これより、第十四回教団主催オークションを開始致します…………」

 カコン。

 鎚が一つ、鳴らされた。




 いつもはエクソシスト達が技量を磨くために使われている修練場が、今は黒い布を引かれ何処と無くおどろおどろしい雰囲気。その場に集まった多くの人間が中世のテンプル騎士団のような被り物をしており、顔は分からない。
 中央には巨大スクリーンが設えてあり、そこには出品物が映しだされている。スクリーンの直ぐ脇にいる二人は司会者だった。どこぞで聞いたことのある声であることはけしてツッコんではいけない。
 それはただの、何の変哲もないシーツが映っていた。

「ナンバー1。神田ユウ使用済みシーツ。出品数は3、入札価格は1枚当たりの金額です」
「1ギニーからスタート!」

 スクリーンに最初表示されていた数字が瞬く間にと釣り上がって行く。
 それを見ながら司会の二人のうち、一人がマイクを切って隣に話しかけた。

「やぁー、いつもながら凄いねぇ。一枚幾らもしないただのシーツが神田君が使ったってだけでこんな金額になるんだから」
「そうね。これで予算も補えるもの」

 自分達の考えながら良い考えだった、と満足気に頷くのは勿論司会兄妹だ。

「支払った人件費の30〜50%がこれで回収出来るんだからね」

 しかもそれでいてただ単に給料を削るのとは違って団員達の不満は出ない。彼らは満足、教団側も潤う。まさにWIN WINの関係だ。
 ――――――因みにこの場合、約一名のプライバシーなどは全く意に介されない。
 瞬く間に変わっていった数字が止まったのを見て、

「後はありませんか? ――――――49番の方、15ギニーで1枚! 33番の方14ギニーで2枚!」
「お次の商品は、こちら! 数少ない盗撮成功写真、自室で寛いでいるシーンを中心に20枚一セット、中身は全て違いますが5セットの出品です。3ギニーからスタート!」

 教団の夜はゆっくりと更けていく。






 リンクは関わり合いになりたくないのが本音。
 マリが蒼褪めた理由は修練場の声と音が聞こえてたから。
 オークションの収益は半分が出品者、もう半分が教団に入る仕組み。
 因みに出品最大手はリナリー。


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