「く…………来るなっ!!」
夜。
不愉快な奴らも居ないことだし今日は久しぶりにゆっくり眠れるか…………などと思っていたが甘かった。非常に甘かった。
いや、だからと言って油断してた訳じゃねぇ。何時も通りに施錠は何重にもしてあるし、手の届く所には六幻だって置いてある。
だがしかし、部屋に侵入者が入って来てしかもそいつらに拘束されるまで気づかなかったのは気の緩みの所為だろう。ほんの僅かな油断が命取りになるのにだ!
特に、
「今日はあんまり一緒に居られなかったから…………来ちゃったんさ♪」
「来ちゃった、じゃねーよ! 来んな! 放しやがれっ!」
「それは無理なご相談ですねぇ」
この二人が相手ならば尚更だ。
他のファインダー相手なら殴り飛ばし蹴り飛ばすで十分対応できるが馬鹿力のモヤシと大体モヤシと一緒に来るラビが相手だと正直なところ、六幻が無ければ非常に分が悪かった。剣を使わない体術にもそれなりに自信が有るが二人掛かりで抑えこまれた所から反撃に転じられるほどじゃねぇ。というかモヤシが馬鹿力すぎる。
ふぅっ。とラビが首筋に息を吹きかけてきて思い切り全身に鳥肌が立った!
モヤシはモヤシで俺の顎から頬に掛けてを指先でツイー、と撫でる。
あぁぁぁぁぁぁ気持ち悪ぃ――――――! 何でこいつらは俺にこういう事しやがる、何で女相手にしねーんだよ畜生が――――――!
「ん? どうしたんさユウ? 寒い?」
「今直ぐ暖めてあげますね、寧ろ暑くなりますよ」
「ふざけんなぁぁぁぁぁ!」
テメーらの所為だよ変態野郎共!!
…………しかし、非常に、とても分が悪い。
とてもじゃねぇが振りほどける気がしない。
だがここままじゃ、殺されることこそないものの何が大切なものを喪うであろう事は容易に想像が付く。あれだ。リナリーが期待する類の事だ。
何で男同士で、しかも俺が突っ込まれる方で…………などと考え出すと泣けてくる。そんな趣味はねーんだよ!
『試してみないと分からないじゃない?』
試したくねぇよ、試した時点で終わってんだよ!!
…………リナリーに笑顔で言い放たれたセリフを思い出し眩暈がした。いい笑顔で何言ってくれてんだアイツは…………。
プチッ
「っ!?」
ラビの指が、俺の上着のボタンを外した。ゾワッとした悪寒が背中に走る。
…………ヤられるのか俺は? こいつらに? 女とすら無いのにその前に男にヤられるなんざ俺の人生終るんじゃねぇか?
いっそこんなの犬に噛み付かれただけだと思えばいい、躾のなってない犬に…………
…………
……………………
………………………………
「無理に決まってんだろーがっ!」
「わ、」
「どうしたんさ?」
「どーしたもこーしたもあるか! 放せっ!!」
思い切り手足に力を籠めた…………がビクともしねぇ。
基本的にこいつらのほうが腕力強いんだよ! 畜生!
「まだ良いですけど後で力抜いてくださいね、そうしないと余計に痛くなりますから」
「不吉な事ほざくんじゃねぇ!」
ナニするつもりだクソモヤシ!
どうする。
力では勝ち目が無い。
六幻はベッドの下に落とされてる。
万事休す、ではある。
歯を硬く食い縛ると、ふと、マリの言葉を思い出した。
『神田、いざとなったらあの人を呼ぶんだ』
『余り使うべきではないだろう、しかも教団に居らっしゃらなければ意味が無い』
『だが本当に危なくなったら、やってみる価値はある』
…………教団に、今いるよな。
俺は覚悟を決めた。
もしかしたら俺が呼び出すモノは却って俺を窮地に立たせるかもしれない。そこは良心とやらを信じよう。
どっちにしろ今現在が四面楚歌だ、もうこれが駄目ならいっそ諦めよう。二人も三人も大差ねぇ…………。
傍で今は飛ぶことなく枕元に転がっているゴーレムを見る。視線だけで通信を開始させた。繋ぐ先は当然…………
俺が何処かと通信仕様としていることに気付いたモヤシがゴーレムに手を伸ばす。だがその前に、俺は叫んだ。
「…………助けてください、師匠…………!」
僅か数秒後、俺の部屋を中心に教団本部全域で「楽園ノ彫刻」による騒ぎが始まった。
俺は騒ぎに乗じて逃げ出し、マリの部屋で布団を被って寝た。
諦めたらそこで試合終了です。
神田の最終奥義「ティエドール元帥召還」
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