連日の任務。連日の夜這いやら何やらの嫌がらせ。一連のことは確実に俺の体力と精神力を磨耗させた。
…………何処にいても俺に安住の地など無いのだ、と思わず嘆息してしまう。
昔は良かった。
アルマは鬱陶しかったがそれでもこんなことは…………
『ユウ、将来僕のお嫁さんになってね! 絶対、絶対だよ!?』
…………あれ? 実はそうでもなかったのか? あの時ガキだったから、ってだけで…………
そんな事を考えていると半端なく精神にダメージを受けた。俺の味方って本当いねぇな、実はマリとミランダだけなんじゃねぇか?
味方がいないのは日頃の行いのせいもあるんだろうが、それにしたって皆して俺の尻を狙わなくてもいいだろう、嫌がらせが過ぎる…………!
「…………はぁ」
まさに世の中はDo or Die。やらなければ、殺られる。というか殺らなければヤられる。
どうしてこうなった、と思わず組んだ手に額を載せる。
「イイコト、教えて上げようか?」
「帰れ元凶!」
頭上から降り注いできた声に思わず反射的に返す。野郎共は知らねぇが女まで変になったのは大体お前のせいだろうが!
顔を上げて睨みつけると案の定、笑顔のリナリーがそこにいる。
「酷いわね、イイコト、教えてあげるっていうのに」
「お前の言う良い事は俺にとっての良い事じゃねぇだろうが」
「あら…………」
驚いたように肩を竦めるリナリーは歌うように呟いた。
「信用ないわねぇ」
「お前これまでの自分の行いを良く思いだせ、それでどこに信用される要素があるのか教えてくれ」
大体碌な事をしていない。
リナリーの所為で教団の女はおかしくなったし、俺の事を盗撮しやがるし(少し前、夜に自分の欲を処理していたところを撮られたときは流石に血の気が引いた)、俺の私物を盗んで売り払うし(コレについては新品の物を返されてたから当初別に気にしてなかったが、その売られた物の「使い道」を聞いて流石にドン引きした)、俺の部屋の鍵を何度取替えさせても合鍵持ってるし(よく考えたらコムイがバックアップしてるんだから意味無いのは当然だ)、挙句の果てにラビやモヤシを俺の部屋に送り込むし!!
…………俺はどうしてこんな女に惚れてたんだろう…………。
「誰か一人、決めちゃえばいいのよ」
「…………は?」
「誰か一人に絞れば、もう他の人は気にしなくて良くなるのよ? だってその人が命がけで守ってくれるもの」
「だから俺の相手を野郎前提にするのはやめろ」
「駄目よ神田、食わず嫌いは」
「食わず嫌いとかそういう問題か!?」
絶対にそれ違うだろ!!
「選ぶなら誰か強い人にしたほうがいいわ。弱かったら護れないものね」
「…………」
思わず大きく溜息をつく。
「健闘を祈るわ」
勝手なことを言ってリナリーは足取り軽く去っていく。
馬鹿馬鹿しい…………。
だが。
誰か一人、我慢して受け入れれば他の奴らは気にしなくていい?
毎度毎度、部屋に仕掛けられた盗撮カメラの処分も夜這いに来る奴らの処理も人の部屋から消えていく物の行方も、ソイツが探してくれるのか?
「…………」
いや、違うだろ俺。ちょっといいかもしれねぇ、とか思うな。リナリーに騙されてるぞ!!
だがしかし、そこまで望むのはともかく誰かこう、強い奴を選べばそいつの事を恐れて俺に近寄ってこなくなるんじゃねぇか?
「…………」
と、すれば…………。
疲労にフラつく足元を叱咤しながら立ち上がる。
行き先は決まっていた。
そんな俺を隠れて見ていたリナリーが、期待を滲ませたキラキラした目をしていたことなど今の俺には知る由もなかった。
「話は分かったが…………それでどうして俺のトコに来るんだよ」
「…………貴方が一番マシかと思って」
「マシって…………失礼な奴だな」
俺達普通のエクソシストとは作りが違う元帥用の部屋の中。
部屋の中の大きな椅子に座って多分眉根を寄せているだろう(仮面に隠れていて見えない)ソカロ元帥の前で俺は床に座って正座していた。
「他にも色々いるだろうが。…………あー、つーか女がいいんだろう? クラウドでいいじゃねぇか」
「…………あの人が俺を見る目は確実にラビやモヤシが俺を見る目と一緒なんです」
そりゃ俺だって最初に考えた。つか、クラウド元帥から直接誘いを受けた事もある。その視線にただならぬ物を感じて断ったのを、勿体無いことをしたかと後悔したこともあったが今から考えれば多分正解だ。
「…………賢いな。アイツは若ぇ男のケツ掘るのが好きだからな。変な癖付けられる。昔俺の弟子に手ェ出そうとしやがって、随分喧嘩になった」
「…………は? クラウド元帥、女性ですよね」
「まぁな」
「…………」
どうやって?
と訊きたいような気がしたが、同じ位の強さで聞きたくなかった。どうせ碌でも無い事だ。
「ティエドールは? お前の師匠だろ、泣きつきゃ守るくらいしてくれんだろ?」
「…………知ってますか。あの人、近親相姦願望あるんですよ」
「…………」
今度はソカロ元帥が黙り込む番だった。俺も二の腕辺りに寒気を感じてこすり上げる。因みにその近親相姦願望とやらは俺限定らしい。マリ達に脅威が及ばないのは良いが、何で俺だけ…………。
「クロスは…………まぁ、いねぇしな。ウォーカーの奴を抑えるんなら最善だが」
というかモヤシの師匠な時点で怖ぇよ!
「イェーガー元帥が存命だったら、頼ったんですが」
「ってお前、イェーガーのジジィなんて相手にしたらアイツ腹上死するだろーが」
「…………? 何もしなくていいなら俺はそれが最善なんですが」
「そうかよ…………」
ソカロ元帥は考えこむように顎に手を当てている。仮面のせいで表情は見えない。
俺は何も本気で男と付き合いたいなんて思ってない。
ただ、守ってくれるなら、代償として要求されるなら身体を差し出すのも仕方ない、とは思っている。
出来ればその可能性が低そうで、尚且つ強い相手を…………と選んだ結果がソカロ元帥だ。この人は男女問わず興味がなさそうだからいい。要求されたら…………もう諦めて大人しく応じよう。少なくともヒゲに近親相姦で変なプレイを要求されたりクラウド元帥に掘られたりするよりはマシそうだ。
ふ…………っ、と諦めの笑みが思わず口の端に浮かぶ。
「まぁ、お前の所有権主張してりゃ喧嘩相手に事欠かなくなりそうだな」
「!」
パッ、と希望の光が見えた気がした。しかし何故かソカロ元帥は溜息を付き、
「お前な。…………野郎引き寄せたくないんなら、そういう表情はヤメろ。元々お前は自分が女顔だっつーことをちゃんと認識出来てねぇだろ」
「え?」
…………言うほど女顔か?
首を傾げていると、ふと。
背中に怖気が走った。
見られて、いる。
「ひっ…………」
堪え切れずに小さく声が上った。
嫌だ、絶対に嫌だ、振り向きたくない…………っ!
「盗み聞きっつーのは感心しねぇなぁ? おい、ティエドールよ」
あの人何やってんだよ――――――!
「…………だけじゃねぇな? おい、そこに何人いる?」
どんだけ居るんだよ!?
「全く…………リーに呼ばれて来たから良かったものの…………うちのユー君を毒牙に掛けようとするなんて!」
「違ぇだろ。お前最初から聞いてただろ。毒牙に掛けようとしてんのはお前だろ」
ソカロ元帥が呆れたように言うがヒゲは聞いて居るのかいないのか。
「ユー君は返して貰うよ!」
「わっ!」
ぐいっ、と腕を引かれた。ソカロ元帥にだ。
立ち上がった元帥の後ろに庇われる。
「…………」
あ。今ちょっとだけ、何かが動いた。気がした。
「言っとくけどね戦闘民族。相手は一人だけじゃないからね?」
こっそりとソカロ元帥の影から外を、その開かれたドアの方を見る。思わず言葉に詰まった。クラウド元帥、ラビ、モヤシ、何で居るチャオジー、ファインダー多数、その中に混ざってるコムイとリナリー。ぞろぞろと連なって、そこにいた。
「返して欲しいなら力で奪ってみせろ。行くぜぇ!」
あ。ソカロ元帥がヒャッハーモードに…………。
物の数に入らないファインダーを蹴散らしつつモヤシやラビを殴り飛ばしヒゲやクラウド元帥とやりあうソカロ元帥をぼんやりと眺める。実に楽しそうだ。ヒゲの言う戦闘民族という言葉がぴったりだと思う程に。
「そう、だよな」
そして納得した。
――――――誰かに守ってもらうなんてあほらしいこと、何で考えついたんだ?
俺は男で、エクソシストで、戦えるんだ。これまでだってずっとそうしてた。これからも、そうするだけだ。
「行くぞ、六幻」
愛刀をつぅ、っと撫でる。答えるように輝いた六幻を握りしめて。
俺も混沌とするその戦場に飛び込んだ。
<終>
リナリーはソカロ元帥相手は気に入らなかったらしい。阻止のために色んな人間に声をかけて部屋に突撃。
ちょっとお疲れモードだった神田が復活。
そして此処で終る。ん? カプ成立? 一生しません。
きっとこの神田は最終的にあの人(=アルマ)と幸せになるんじゃないでしょーか。
しかし色々はしょった。うん。バクとか丸っと出番削った。仕方ないね。
流石にティエドール元帥とコムイのコラボ作品、アートオブ神田のダッチ○イフ話と盗撮された神田の処理なお話はヒドすぎてカットカット。エロイのダメ絶対(嘘つけ)
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