R15。
 ラビの一人遊び。














 ユウ兄達がいなくなったから、俺も部屋に戻る。
 デスク前の椅子に腰掛けて、適当に記憶しろと言われていた本を広げた。だけど目はぼんやりと文を追うだけで全く身が入らない。ぼんやりと何度も何度も同じ一文を見返していた。

 …………。
 こんな時間に来るなんてリナリーはやっぱりユウ兄の彼女、なんだろうか。
 っていうコトは、さっきユウ兄がシャワー浴びてたのって、もしかしてあの二人これから部屋で、…………。

 自分の想像で顔が真っ赤になる。う、羨ましい限りさ。まだそういう相手は居ない。
 でも、確かにお似合いのカップルだ。何処と無く似てるし。それにそういう関係だったって不思議じゃない、だってもう大人だ。

 聞こえる訳もないのに思わず耳を済ませて気配を探ってしまう。
 覗けるような穴がないのは残念なのか、どうなのか。
 そんな事ばかり考えていたら目の前の本の内容なんて全然頭に入ってこなかった。
 それ所かそうなるようになって久しい、オスの性で下半身の一点に血が集まってきてしまう。
 …………あぁ、もう、クソ。
 こんなんならそういう用の本でも持ってくれば良かった…………。
 此処に来て最初の日の夜にも思ったことだ。何処かで買ってきたって良いんだけど。
 一度立ち上がってベッドサイドに置いてあったボックスティッシュをデスクの上に置いて、椅子に深く座りなおした。少し腰を浮かせてベルトを外して、ジーパンのホックを外して、ファスナーを降ろす。太腿の辺り、必要最低限だけパンツと一緒に脱いでもう形を変えている自分のムスコを両手で掴んだ。

「、」

 そう言えば久しぶりだ。五日ぶり。普段だったら二日と空けずにしてた。だって仕方ない、俺達位の年代が一番性欲が強いんだから。なのに長い間性欲を催さなかったのは人の家だという緊張感があったからだろうか。それとも菜食主義一歩手前みたいなユウ兄の食事で精力が減退したとか。うわ、それは怖いさ。俺まだ若いのに。
 緩く扱くとやっぱり何時も通り気持よかった。目の前にエロ本もエロビもないから、目からダイレクトに入ってくるような性欲を煽る情報は無い。代わりに脳の中で勝手な妄想をする。妄想相手のその人が、綺麗な長い黒髪が白いシーツに乱れる様を、空想の中の俺の動きに応じて喘ぎ狂うのを妄想する。
 それはオカズとしては悪くなく、暫く機械的に手を動かし続けた。段々無意識に手の動きが早く強くなり、時折先走りでヌメってクチクチと音がする。

「…………っ、ふ、」

 あ、出そう。
 乾いた唇を自分で舐めて、デスクの上のボックスティッシュに手を伸ばした――――――その瞬間。


 ガチャ。


「おいラビ、リナリーが置いてった菓子食う…………か…………」

 …………。

 俺はティッシュに手を伸ばしかけた格好のまま固まる。
 最初は俺、其の次は俺の手元を見ていたユウ兄の視線がつつつ…………と下に下がった。
 そこまで来て漸く見られている見られているものに気付いた俺は慌てて両手で股間を抑えた!
 〜〜〜〜〜〜〜っ!! 最悪だ!! ジジィにだって見られたこと無いのに!!

「…………あー、その、何だ。悪ぃ、いいとこで邪魔したな。ゆっくりしてこい」

 視線を逸らしながら言ったユウ兄はパタン、とドアを閉めた。
 俺はそのまま目の前のデスクに突っ伏す。…………ゆっくりしろって言われたって、今ので萎えたさ…………元々脳内妄想だけでしてたから、普段よりは興奮の度合いが弱かった。
 僅かにまだ硬さはあるけど、此処からまた妄想だけであそこまで持っていくのは面倒だ。
 諦めて先走りと手を軽くティッシュで拭い、それからパンツとジーパンを一緒に引き上げる。
 丸めたティッシュは屑籠へ放りこんで、部屋のドアを開けた。ユウ兄がいるだろうリビングには向かわず、先にバスルームの洗面台で手を洗う。
 それからテレビの音が聞こえるリビングに入ると、ソファーに座ってたユウ兄の視線が俺に向いた。

「「…………」」

 何だか気まずくて黙りこんでしまう。
 暫くテレビのバラエティ番組のお笑いタレントの大袈裟な笑い声を鬱陶しいBGMにしながら俺達は無言でいて、それから。

「…………で、食うか?」

 先に口火を切ったのはユウ兄だった。
 ガラスのお皿に盛られた小さな焼き菓子の詰め合わせ。

「あ…………うん」

 イタダキマス、と呟いて盛られた包みの一つを取った。銀色の包み紙を取って口に放り込むとバターとアーモンドの甘い香り。これはリナリーが好きそうだ、と思う。いや彼女の事なんて何も知らないんだけど。

「…………変なもん見せてスイマセン」

 モゴモゴしてからユウ兄に頭を下げた。
 するとユウ兄はパタパタと手を振りながら、

「気にすんな、あんなの男なら誰でもやるだろ。ましてやうちは男所帯だぞ? 大体ノックしなかったのは俺だ」
「誰でもって…………ユウ兄もする?」

 思わず不躾に訊いてしまう。すると少し嫌そうに顔を顰め、

「…………お前は俺を枯れ果てたジジィが悟り開いた仙人か何かだとでも思ってんのか?」

 しねぇ訳ねぇだろうが、というお返事が帰って来た。ついでにお前ほどじゃねぇけど俺だってまだ若いんだよ、とも。
 そ、そうなんだ。何かあんまりそう言うのとは縁遠そうだったからピンと来ない…………。

「じゃあ、何かスゴイの持ってたりする?」

 成人済みのユウ兄なら中坊の俺が手に入れるのには苦労するような子供に見せちゃイケマセンみたいなのも持ってるんだろうか。
 ちょっと期待を籠めてユウ兄を見ると、

「あー…………あんまそういうのは持ってねぇな。使わねーし」
「使わない?」

 それでどうやって抜くんだろう。いやさっき俺だって妄想だけで抜こうとしたけど。あれか、経験のある男はそれをフラッシュバックさせてそれだけでオカズにできたりするんだろうか。まだ童貞の俺にはよく分からない。

「チャオジーかデイシャの部屋になら…………、…………持ってっちまってるか」

 天井を睨むようにして考え込んでいたユウ兄は諦めたように首を振った。

「お前英語は得意か?」
「? うん」
「ヒアリングも?」
「ネイティブ並みには…………」
「そりゃすげぇな。じゃあ大学で借りてきてやるよ、洋ピンだけどな」
「う、うん」




 二人とも若い。
 因みにリナリーの髪は長くない。



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