ある者はギリィ、と奥歯をかみ締め、ある者はキュッと唇をかみ締めこぶしを握る。
 ある者は苛立って食器を乱暴に机に置き料理長ジェリーに睨まれ、ある者は箸を二つに折った罪でジェリーの部下に連行された。

 どれもこれも、見ているだけで糖分過多、それどころか糖尿病になりそうな程ベタつく二人組の所為だった。

 いちゃこらいちゃこらいちゃこらべたべたべたべたラブラブしやがって! 鬱陶しいんじゃそこ二人!!
 部 屋 で や れ !


 その瞬間、食堂にいた人間の内約八割の思いが一つになった。
 が、悲しいかなそれを言葉にできる人間はいなかった。
 何といっても二人はエクソシスト。その場でイラつく多くの人間にとっては喧嘩を吹っ掛けて勝ち目がある相手ではなかったからだ。
 哀れ人々は…………


「ラビ…………」
「ユウ…………」

 手を取り合って互いの名前の後にハートマークでも付けそうな、世間一般的に言う所のバカップル…………というより馬鹿二人のラブラブっぷりを延々と見せ付けられる羽目になったのだった。





「…………あー鬱陶しい」

 舌打ちしたそうな顔で彼らを睨むアレンに周囲の科学班の人間は苦笑して首を横に振る。――――――何言っても無駄だ、放っとけと。
 完全に自分達の世界に入ってしまっている彼らに、周囲の声や視線など届くはずは無い。
 公共良俗に反しない限りは放置、視界に入れないようにするのが最良の手段だ。時折油断していると公共良俗に反する、お子様見ちゃ駄目な事をおっぱじめるから厄介なのだが。

「なんかあーいうの見てるとどうしてかな、心が荒むんだけど…………」
「疲れてるんだよアレン」
「気持ちは分かるけどな、ちょっとは独り者の事も考えてくれればいいんだが…………」

 ジョニーとリーバーに慰められたアレンは黙々と食事の手を早める。
 …………あの割り込みようの無いバカップルの片割れが片思いの相手となればそりゃイラつくのも仕方ない。肝心の本人達は完全に自分達の世界に入ってる。
 実際周囲の苛立ちの原因の一つは「嫉妬」だ。
 何せ女性の少ない教団のこと。そこからさらに既に相手がいるとか既婚者だとか年齢的にアウトとか室長の妹だからとか、そういう条件を引いてしまうと実は殆ど誰も残らない。
 …………と、すれば男性にも目が行ってしまうのは、少なくとも若人としては普通だろう。
 んだがしかし、その場合一番人気になるであろう彼はたった今そこで周囲の目など憚らずにいちゃいちゃしてる真っ最中だ。「あーん」とかやっている。

 畜生。アイツら爆発しろ。

 そんな人々の怨嗟の念など我等関せず、と彼らは思う存分にいちゃついていたのだった。


『他人なんて目に入らない、お前しか見えない、見たくない』



<終>





 で、これがゴミ箱の小さくなった18歳ネタに続きます。