最初に謝罪します。申し訳ございません。
談話室。
食後の一時、或いは眠る前の、もしくは仕事に戻る前の一時を静かに楽しむ人々が集っていた。部分的には談笑の声も上がるが、まもなく日付が変わるという時間の為、それほど騒がしくはない。
そんな所に。
バンッ!!
突如として響いた大きな音に、何事か、と周囲の視線が集中する。
議論が白熱しすぎたわけでもなさそうだ。何故なら彼らは――――――
「〜〜〜〜〜〜ユウの分からず屋っ!」
教団が誇る(?)バカップル達なのだから。
「分からず屋はテメーだ、バカウサギッ!!」
意識的にバカ(ップル)二人を視界に入れないようにしてきていた周囲にはその喧嘩は突然始まったようにしか見えない。
いつもの様に、沸点の低い神田が一方的に切れている…………訳でもない。ラビも怒っているようだ。実際、先ほどの大きく聞こえた音はラビがテーブルを叩いた時の音だった。
二人は険悪な表情で睨み合い、そして。
「…………もう知らんさ!」
プイッ、とそっぽを向いたラビが足音荒く談話室から出ていった。周囲の視線は彼らしからぬ振るまいと、取り残された形の神田に向かう。
握っていた拳を所在無げに降ろした神田はぽすん、とその場で崩れ落ちるようにしてソファーに座り込むと膝を抱えて顔を埋めた。肩は小刻みに震えている。
――――――まさか、泣いてる!?
周囲の視線は焦りを含んだ。逆ならまだ、まぁ、分かる。だがしかしこの状況は一体何事だ。
「アレン君」
「はい!」
それまで一連の事を見守っていたリナリーが厳かな、そしてけして逆らうことなど許されぬ断固とした声でアレンを呼んだ。師匠に呼ばれた時か或いはそれ以上の反応速度を持って返事を返すアレンにリナリーは一言。
「ラビを持ってきて」
「連れてきて」でない所に彼女の本気が見えるというものだろう。そこにラビの自由意志など存在させない、そんな気迫すら感じる。
アレンを有り体に言えば使い走りにしたリナリーは自分の居た席を立ち、神田の元へと向かった。ソファーの隣に腰掛け、声をかける。
「神田」
「…………」
「どうしたの?」
「…………俺は悪くねぇ」
呟くような、弁解とも自分に言い聞かせているとも取れる言葉にリナリーは深くため息をついた。
「悪くなかったらどうしてラビが怒ったの?」
「…………」
そう訊かれ、神田は顔を上げた。
瞳を潤ませた切なそうな、頼りなげな表情はリナリーを含め数人以外の大多数にとってはかなりの破壊力を持つ。まぁリナリーにとっては何の意味も持たないのだが。
「…………それが分かったらこんな風になってない」
神田の言うことにしては一理あるわね、とリナリーは密かに納得した。
食堂の外からは派手な破壊音がした。アレンは文字通り、ラビを「持って」くるだろう。
「…………ラビのバカやろう」
「所で喧嘩のきっかけは?」
「…………ラビが俺に白無垢着ろって」
「…………はぁ?」
「俺は男だから婚礼衣装は紋付袴だつってんのに…………!」
リナリーは数秒だけ考え、そして考えることをすぐに放棄した。結論には至らなかったが確実にこれは「どうでもいいこと」だ。
「あー…………両方着たら?」
「白無垢なんて女が着るもんだろ!」
男同士でイチャコラして見せて時折大浴場であはんうふんな事までしくさる癖にそんなトコだけ男アピールか。
周囲のやや引いた視線に神田が気付くことはなかった。
「じゃあラビに白無垢着ろって?」
「え…………そりゃ違ぇだろ」
「違うなら神田が白無垢でいいじゃない」
「、? ??」
あれ、そうだっけ? という顔で首を傾げた神田にリナリーがもう押し切ってしまえとばかりに言い募る。
「ラビが紋付神田が白無垢、お似合いでいいじゃない」
ややヤケクソ気味ではあるが。
「――――――…………。」
パチパチと瞬いた神田はすっ、と視線を伏せた。
お粗末な脳みそでどのような結論を出すのか、とリナリーが生暖かく見守る。
と、食堂の外からアレンの道化ノ帯で拘束されたラビが文字通り「持って」こられた。
「ユウゥゥゥゥゥゥゥ! 俺が間違ってたさー! 白無垢じゃなくてウェディングドレスにしよう!」
「絶対論点違…………。あぁもういいやー」
そのラビを心底イヤそうに引きずるアレンは呆れ気味に呟いて、途中で撤回した。
構うだけ無駄だ。
今だって既に引きずられるラビの元に駆けてきた神田は先程の涙は何だったのかと突っ込みたくなる勢いでイチャついている。
本気でこのバカップル共どうにかならないかな…………。
そんなアレンのつぶやきに周囲は頷いた。
数カ月後、ウェディングドレスと白無垢を両方着た神田とラビはめでたく華燭之典を挙げた。
<終>
リクエストで喧嘩するラビュ。バカッブル教団を往くと同設定。
…………あの、うん、まぁ。
後日短編ででもリベンジしますね…………。
あ、バカップルは結婚しました。