「ねぇユウ、明日何の日か知ってる?」
「…………知らねぇ。鳩の日か? 語呂合わせ的に」
「…………」



  まぁ、ユウが知らないのはまだ分かる。アレンの時だって知らなかったんだから。



「は? 明日? 何の日ですか?」
「? 知らねーけど、何の日だっけ?」
「知るか」



 …………全員知らないってどういう事ぉぉぉぉぉぉぉ!?



 確かにユウが来るまで、俺達は互いの誕生日なんて祝った事なんて無かった。
 でも、別に祝えとは言わないから生まれた日位認識してて欲しかった、って言うのは我侭なんだろうか…………。









「「「「…………」」」」
「泣いてるよな」
「泣いてますよね」

 リビングのソファーで膝を抱えたラビをキッチンから観察しながら、小さく囁き交わす。

「…………流石にちょっと罪悪感が…………」

 因みにラビの言う「明日」が何の日か位、全員ちゃんと分かっている。
 明日はラビの誕生日だ。
 一応色々準備はしてある。…………本人に黙って、こっそりと用意してた。なのに突然向こうから話を振ってきたからどう応えていいか悩んだ。
 全員で知らぬ振りを決め込んだわけだが、どうやらそれは結構深くラビを傷つけたらしい。

「…………」

 決まり悪げに口許を引き結んだモヤシが俺を見上げた。

「…………どうする?」
「どうするって、どうするんだ」
「どっきりでしたー、みたいな?」

 ティキが提案するが、どっきりって。ただ後味悪いだけじゃねぇかこれ。
 煙草が吸えないのが気になるのか、苛ついた様子の父上が、

「んな事くらいで一々ピーピー騒ぐんじゃねぇ、ガキや女じゃあるまいし」
「クロス、自分の誕生日終わったからって余裕じゃん、自分の無視されたら拗ねる癖に…………あいたっ!」

 父上が投げたジッポーがティキの頭にヒットする。余計な事言うからだ…………。

「…………」

 モヤシはラビの様子が気になるのか、盛んに覗いては俺を見上げる。

「まあ、祝い事なんだし。悲しい思いさせてまでやる事じゃないよね」
「それもそうだな」

 どうしても隠し通す必要なんて何処にも無いんだ。
 一つ頷いて、キッチンから出た。他三人は「後は任せた」とばかりに片手を上げてパッ、と散る。そのまま其々の部屋に戻るだろう。
 ソファーの上でスンスンと鼻を鳴らすラビに、ソファーの後ろから首に手を回して抱きついた。

「んぁ?」
「…………何泣いてんだよ、ラビ」

 ラビが振り向く拍子にラビの髪が頬を撫でた。くすぐったい。
 戯れでお返しにとラビの頬に唇を寄せた。

「、ユウ?」
「…………泣きっ面兎」
「うー…………」

 ラビの目尻がほんの少し赤い。
 明日腫れてなきゃいいが…………。

「何だか知らねぇけど。もう寝るぞ」










 流石に泣き止んで一緒に俺の部屋に戻ってきたラビと交互にシャワーを浴び(ラビは一緒に浴びたそうだったが丁重にお断りした、だって絶対にそれだけでは終わらない雰囲気だ)、ベッドに入った。
 ベッドに入る前もラビは何時も以上にベタベタと引っ付いてきて(…………多分寂しいんじゃないだろうか)、事あるごとに口付けてこようとする。傷つけた自覚はあったから、こっちは拒まなかった。
 眠るのか難しくなりそうなほどきつく抱きしめられる。時折人の胸に顔を埋めてきたからその背と後頭部をポンポンと軽く叩いた。
 時間はまだ「今日」だ。畜生早く過ぎやがれ。

「ユウー…………」
「何だよ」
「…………」

 甘えたような声で何度も呼ばれて流石に何やら複雑な…………。
 少しだけぞわり、とした甘い熱が体の芯に燻った。
 そんな事考えてる場合か!

「…………」

 ラビが顔を俺の胸に押し付ける。真平らなそんな所に押し付けたって楽しい事なんて何もねえと思うんだが、何故かラビやモヤシはこういうのが好きだった。
「今日」はそのつもりはないからきちんと夜着を着ている。だが布越しに胸の先を肌や髪で擦られると何とも言えない感じがした。

 後、数十秒。

「ユウ、」
「…………だから何だよ」
「知ってる? 兎って、寂しいと死んじゃうんさ」
「…………」

 最小にしたベッドサイドの明かりに、ラビの翠が反射する。そこはかとなく濡れている気がするのは眠気の所為だろうか。それともまだ泣きたいんだろうか。
 コチリ、と秒針とは違う音がする。短針が動いた音。

「…………知ってる。お前が十九にもなって泣き虫兎だってこともな」
「…………え、」
「誕生日おめでとう、ラビ」

 ラビの耳元に小さく囁いた。兎なら耳だって良いだろう?

「…………ユウ…………知って…………」
「知らない訳ねーだろ?」

 だって家族の誕生日だ。
 確かに一番最初にやったモヤシの誕生日は知らなかったけれど、その後全員分をちゃんと覚えた。
 誕生日は一番最初の記念日だ。他の何を置いても、忘れはしない。

 驚いたように目を見張るラビの頬に再度口づけて、







 そして俺達は翌日、昼までベッドから出ることはなかった。
 

<終>




 エロはカット。
 ラビが想像以上に女々しくなった。
 通常運転だとアレンはラビを誂うような感じだけど自分があの状況だったらやっぱり寂しいんだろうなぁと同情気味。ただし黙ってこっそり準備の言いだしっぺもアレン。