パンッ!


「った…………ユウちゃん突然平手は酷いさ」
「ばっ…………かじゃねぇかお前!? なんで笑ってんだよ!!」
「…………笑顔が俺のチャームポイントだから?」 
「アホか、――――――そんな無理矢理作った顔の何処がだ!?」
「――――――…………」

 ラビが、表情を消した。

「…………凄いねユウ。ユウってお馬鹿な割には勘が鋭いよね…………あ、逆に言うとお馬鹿だからこそなのかな?」
「うるせぇっ! んなもん誰でも分かるっ!!」
「――――――分かんなかったよ、誰も」

 ラビの声が、一気に低くなった。

「お袋もジジイも、祖父さんも祖母さんも、多分クロスもティキもアレンも。誰も分かんなかったよ」
「――――――、」
「アレンのはさぁ。アレは仮面を被るって感じので結構露骨だったから分かりやすかったんだろうね。でも俺のは、もう本当のも嘘のも全部混じってへばりついちゃった感じだから分かり辛いんさぁ」
「ばっ…………か…………」
「だってしょうがないじゃん、泣いても泣いても、誰も助けてくれなかったんだから。せめて笑っていようって思うのが、そんなにマズかった?」
 
 ラビが、俺の目を覗き込む。

「ねぇ、ユウ?」
「――――――ってめぇはっ…………!」

 そのラビの頭を、強く抱き寄せた。

「痛いんならそう言え、助けて欲しいんならそう言えよ! 分かるけど、分かり辛いんだよお前のはっ…………!」

 どうして、こいつは。
 誰も、なんて言い切る!?

「誤魔化すな、誤魔化しで無理な笑い方すんな! 見てるこっちが心臓痛くなるっ…………!」

 ――――――いつも飄々として、笑ってたから。
 俺までも、安心してたのかもしれない。

「家族だろ、頼れよ!!」

 あの雷雨の晩のように、

「――――――幾ら俺が馬鹿だって、痛い時に傍にいるくらいはできるんだぞ…………?」
「――――――ユウは、」

 ラビが呟いた。

「本当に暖かいね。――――――アレンが落ちたのも良く分かるさ」

 俺の腕を解いて、顔を上げる。
 
「――――――『誰かを愛するには、誰かに愛された事がなければならない』って、本当の事さね。俺とアレンはだから人を愛せなくて、ユウは愛せるんさね」
「…………馬鹿言ってんな、それならお前らだって愛せる筈だろ」
「へ?」
「俺がお前ら愛してるんだから、お前らにだって出来る筈だろ?」
 
 ――――――たかが三ヶ月、されど三ヶ月。家族になって、ずっと。家族への情を「愛」と呼ぶなら。

「…………ユウ、それ超殺し文句…………」

 ラビが、泣き笑いの顔で俺を見た。 
  
「…………こんないい男泣かせて何がしたいのさ」
「泣きっ面の兎がいい男かは知らんがな」

 寒いときには身を寄せ合って、
 痛いときには慰めあって、
 何時如何なる時にも帰ってくる場所。
 
 ――――――俺にとっての家族ってのは、ずっとそういうもんだった。
  
「俺らさ、ユウが来る前に一度話してた事があるんさ」
「…………何だ?」
「『俺達って家族っつーよりは家族ごっこの他人だよな』って。…………あの時は言い得て妙だと思ってたし、それでも良かったけど」
「…………」
「でも、ねぇユウ。――――――俺達、本当の家族になれるかな」
「なれる、っつーか、なってんだろ?」

 血が繋がってて、想いあってさえいるならばきっとそれは、家族と呼べるんだろうから。

「そっか、――――――そうだね」
 
 独りでなければ。
 堪え難い冬の寒さですら――――――乗り越えられる。

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