「妹または姪の間違いだ」
「…………、…………。女の子?」
「ああ」
「…………良かったですね師匠! 初めての女の子ですよ!」
「おい」

 父上の子決定なのか。

「はいはい、お待たせお待たせおちびさん。ユウ、温度こんくらいで大丈夫?」

 ラビが哺乳瓶を振りながら持って戻ってきた。  
 受け取ったそれを握って温度を確かめる。

「ああ、大丈夫だ。…………ほら飲め」

 俺はソファーに腰掛けて、腕の中の赤ん坊の口許に哺乳瓶を持っていった。先端が僅かに触れると食いつくのには、まさに本能っていう言葉を感じさせる。


 んくっ、んくっ、


 見る見るうちに白いミルクが減っていく。

「おー、良い飲みっぷりさ」
「食欲だけならモヤシ似だと思ったんだがな…………」
「滅茶苦茶言わないで下さいよ、大体僕女の人「とは」経験ないですよ!?」
 
 そりゃまぁその歳であったらびっくりだ。

「そんなん言ったら俺だって女の子「とは」無いさ」

 …………こっちはちょっと意外だった。

「二人とも其処にイントネーション置かない置かない」
「?」
 
 何の事だ?

「しかしまぁ…………」
「何と言うか…………」
「良い光景だよな…………」
「?」

 何が?

「師匠ー、この子うちの子にしましょうよ。んで勿論神田がお母さんで」
「お前何馬鹿言ってんだ。犬猫の子じゃねーんだから簡単に拾った貰ったって出来る訳ねーだろ!!」

 …………大体、まだ届けてないが、これ間違いなく警察に届け出ねぇとまずいんじゃねーのか。

「大体神田母親にすんなら俺かクロス、どっちかその子の父親だったら旦那って事にn」「やっぱ止めましょう!」
「…………何下らねー事言ってんだ」

 そんな下らない事を言ってるうちに腹が膨れたのか赤ん坊は哺乳瓶の先から口を離した。
 
「もう満足か?」

 抱き上げて背中を軽く叩く。小さな音を聞いてから俺はまた横抱きに抱きなおした。

「ユウ、代わろっか?」
「ああ。首据わってねーから気ぃ付けろ」  
「待て待て待て何其処何気に夫婦みたいなやりとりしてんの」

 赤ん坊をラビに渡す。と、それまで満腹で満足そうに目を閉じていた筈の赤ん坊が、

「ふぇぇぇぇぇっ」

 泣き叫び始めた。

「あ、あれ?」
「神田がいいんだってさ」

 ラビに返された赤ん坊を抱いてゆすってやるとすぐに大人しくなる。…………何だかな。

「…………手、ちっちゃ…………」

 モヤシが物珍しげにしげしげと覗き込んだ。
 指をそろそろと握られた赤ん坊の手の近くに持っていく。と、

「わ、掴んだ!」

 意外にがっしり掴まれてるな。

「ど、どうしましょう!?」
「放せばいいじゃねぇか」
「ど、どうやって!?」

 テンパるなよ。

「…………しかし、おちびさん。早くお母さんが迎えに来てくれるといいさね」

 ラビが何気なくそんな事を言って、小さな頭を撫でた。
 ふと、視線をモヤシに落とすと、…………モヤシは、俯いて小さな手を自分の手で包み込んでいた。

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