「「「「…………」」」」

 俺達の視線は今、ユウへと注がれている。
 そのユウは足を崩し、肘置きに半ば伏せるようにして体を預けていた。
 
「…………ん、…………」

 ユウがぼーっとした顔で俺達を見上げる。
 …………桜色に染まった頬に、微かに開いた紅い唇。潤んでいつもの力強さを失った漆黒の瞳。

「「「「…………」」」」

 四人して黙り込んだのだって仕方ない筈さ、だってこんなの、
 こんなの、誘われてるようにしか思えない…………っ!

「ボーっとする…………」
「そ、そっかー」

 二杯目の盃を空にした頃、どうやら回ってきてしまったらしい。
 …………弱かったんさね…………。 

「…………おい、お前ら」
「?」

 クロスがやれやれ、という響きを滲ませて言った。

「ちょっと席外せ」
「「「何するんだよっ!!(つもりですか!!)」」」
「そりゃお前ら…………」

 クロスはユウが抵抗しない…………というか出来ないのをいい事に、捲れて膝の上辺りまで脚が露になっている浴衣の裾から手を忍び込ませた。
 ふくらはぎの辺りから撫で上げられているユウは不思議そうな顔をしている。

「?、??」
「こんな可愛い顔で誘われちゃあ、なぁ?」
「なぁ? じゃねー!!」
「一人だけ美味しい思いしようってんですか!!」
「アレンお前それおかしいだろ」

 何言ってるんさ。このインモラル共め!

「じゃあお前は参加しねーのか?」
「参加って何にだよ、そういうのヤメるさ!! ユウが嫌がるような事はしない!!」
「嫌がってもねぇけどな」

 クロス達から視線をずらしてユウを見ると、…………ユウは寝てた。

「ってか、起こすなよ…………」

 ティキが呆れた顔で溜息をつく。
 

 シュルッ…………


「「「!!」」」

 微かな衣擦れの音と共に、クロスの手によってユウの細い帯が解かれた。
 支えを失った浴衣が肌蹴けかける。 
 ついでにクロスは髪留めも外した。漆黒の髪が滑り落ちるようにして解ける。

「…………おいおい、あんた洒落になってねぇって」
「僕ら全員煽ってどうするんですか」
「だぁぁぁぁっ、もーやめるさっクロスっ!!」
「そこの二人、ラビ抑えとけ」
「「ラジャー」」

 !?


 ガシッ!!


 俺の体はティキとアレンに拘束された!!

「ちょっ…………こらー! ティキの裏切り者ー!!」
「いやだって、流石にこれはねぇ…………キたよ?」
「そういう問題じゃないさ! 放せー!! 俺にはあの変態親父からユウを取り返す役目がっ!」
「取り返すも何も神田は貴方のじゃないでしょう」

 うっ…………
 で、でもそういう問題でも無いし!!

 俺はじたばた手足を動かすも、体格で勝るティキと馬鹿力のアレンのタッグの前には無力だった。

「やめろって、ユウに嫌な思いさせてどーするんさ!」
「何だお前、相手を悦くさせる程度のテクニックもねぇのか?」
「いやそれは…………ってか違う!! だから違うって!! 息子に手ぇ出すなよ変態親父!!」

 こいつも出来上がってるんさ!?

 クロスによって上半身ほぼ丸裸に剥かれてしまったユウは、それでもまだ目覚める様子が無い。
 ユウの白い肌に手が這わされるのは、確かに凄くソソられるものがある。
 だけど、だからって…………!

「こらー!!」


 ガッ!!


「「「!!??」」」
「?」

 正にその瞬間だ。ユウが突然振り上げた腕がクロスの顎に直撃したのは。

 …………うわぁ痛そう!
 
「…………」

 無言で顎を押さえるクロスは流石にのた打ち回りはしないがかなり痛そうだ。
 
「…………天罰テキメン?」

 ぼそっ、と呟いてみる。ちょっとだけ、いい気味さ。

「何かと戦ってる夢でも見てるんですかね…………」
「何かって何だよ」
「痴漢とか」
「ああ成程ね、納得。…………さて悪ふざけもいい加減にして、酔っ払いは布団いれちまうか」

 言いながらティキが俺を押さえつけていた腕を放し、クロスの傍にいるユウを抱き上げた。
 隣の襖を器用な足先だけで開いて、隣の部屋に用意されていた布団の一つにユウを寝かす。
 アレンもとっととついて行ってたった今迄俺の邪魔をしてた事なんてさらっと無かった事にした。

 …………何か納得行かないさ…………。

「んー…………」
「二日酔いにならないといいんですけど…………」
「そーだねぇ」


 ちゅ…………
 

「!!」

 そんな事を言いながらティキとアレンはユウの頬にキスして、そうしてからニヤリ、と笑って俺を見た。

 こっ…………こいつらっ!!

 その優越感たっぷりな笑みに俺はチリチリ神経が焼けていくみたいな感覚と、やり場の無い嫉妬に眉根を寄せた…………。

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