「ところでさ、ユウ何やってんの…………おわっ!!」
「だから名前で呼ぶなっつってんだろ!」

 俺は持っていた包丁をティキの顎の下に添えた。

「顎二つに割られたいか? ああ?」
「…………ごめんなさいもう言いません…………」
「よし」

 俺は一つ頷いて包丁を退けた。
 
「…………危ねぇ危ねぇ。…………で、神田は何やってんの?」
「見りゃ分かるだろ、料理だ」
「…………細い割りにこんなに食うのか?」
「んな訳ねーだろ。沢山つくっときゃ食いたい時に食えるってだけだ」
 
 パッドの上に並べられた完成品にティキは納得したのか、頷いた。

「…………ね、神田。一口頂戴?」
「あ?」
「味見味見♪」

 ティキが口を開ける。
 その様子がなんだか口を開けて餌をねだる雛鳥に見えて、しょうがねぇから俺は奴の口に菜箸で掴んだ鶏肉を一つ放り込んだ。

「あちちちちっ!」
「あ、悪い」

 つい、フライパンの上から取ったのそのまま放り込んじまった…………。
 口を押さえて目を白黒させるティキは、それでも何とか飲み込んだらしい。
 
「…………〜っ、水、水!!」
「ほ、ほら」

 俺は手近なコップに蛇口を捻って水を汲み、ティキに手渡した。
 それを一気に飲み干したティキが、涙目で俺を睨む。

「…………今のはちょっと酷いよ?」
「いや、わざとじゃなかったんだが…………」

 本当に。
 
「口ん中ヒリヒリする…………」
「氷でも舐めとくか?」

 冷凍庫の中の氷をグラスにいくつかいれてそれを再度ティキに手渡した。
 しばらくそれでモゴモゴやってたティキは、復活したのか再度肉を要求した。…………懲りねぇ奴だ。
 俺も今度はパットに並べてた方から拾ってティキに渡す。

「…………ん〜、何て言うんだろうね、こういうのおふくろの味っていうのかな?」

 感慨深げに呟くティキ。
 しかし俺にそんな事は関係無く、

「てめぇ黙ってりゃいくつ食う気だ!?」

 勝手につまみ食いしていくティキの頭を後ろから殴った。
 こいつ、黙ってりゃ調子に乗りやがって…………! 味見って量じゃないだろそれは!!

「じゃあ、手伝うからさぁ」
「…………お前料理出来るのか?」

 俺はそれこそ小学生の頃から母上が働き詰めだったので、自然と家事を覚えたのだが目の前の明らかに坊ちゃん育ちのこいつにはそんな事が出来そうにはとても見えない。 

「いんや? そういや中坊ん時の調理実習ん時以来だな〜」

 …………俺は激しく不安になった…………。

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