「裏は取った。それだけじゃ信用出来ないからな。…………コムイに、俺とユウの髪でDNA鑑定を掛けさせた。…………結果は、それと同じだ」
淡々としたクロスの声が、痺れる様に思考停止した頭の中で反響する。
「そんな…………だって…………」
アレンが呆然と呟く。
「だって…………」
…………震えるアレンの肩を、ティキが宥める様に撫でた。
「あの馬鹿弁護士、何考えたのか…………よりにもよって誰もいない時に、本人に直接伝えやがった」
「――――――っユウは!? ユウは何処にっ…………!?」
その言葉に俺達は顔を跳ね上げる。
ユウの性格で、そんな事を聞かされたら!!
「…………出て行くって言って聞かなかったからな。北館に閉じ込めてある」
まだ此処にいるという事実にほっとして、
だけど「出て行く」という言葉に俺達は顔色を変えた。
「…………っ師匠は、そうさせるんですか?」
「アレン?」
「血が繋がってないから、神田は此処に置けないって言うんですか…………!?」
「…………。」
アレンが必死に言い募る。
クロスは無言で、俺達を見た。
ティキが渋い顔で援護する。
「…………ちょっと酷い話でしょ、だって、神田本当に何も知らなかったんだから…………元々はティエドールさんが連れてきた訳だし…………其れがなかったら、今頃…………」
きっとユウは、一人でも何とか出来てたんだろう。
此処に連れて来られたからこそ、こんな事になって。
…………ユウは、どんな思いでその話を聞いてたんだろう。
「俺…………」
俺は、知らず呟いた。
「俺、嫌さ…………だって…………」
ユウが来るまで。
俺達は家族とは名ばかりの、同居人でしかなかった。家族ごっこって、本当に言い得て妙だった。
血縁は確かにあったけど、だけどそれだけ。血と金でしか繋がらなかった関係。
「ユウが来て、変わったんさ」
キツくて気位が高くて、乱暴で取っ付き難くて、
だけど不器用で天然で、誰よりも優しくて情が深くて。
俺達が何年掛かっても埋められなかった、埋める気があったのかすら怪しかった溝を、たった半年足らずで埋めて見せた。
「家とか、家族に愛着って出来るもんなんだ、って教えてくれたのはユウなのにっ…………」
半年間。
あんなに笑って、あんなに全員で過ごした時間は、これまで無かった。
『家族だろ、頼れよ!!』
過去に捕らわれそうになる度に、ユウが掛けてくれた言葉で救われた。
――――――俺は、
「俺は、ユウと一緒にいたい…………!」
「…………俺も。なぁクロス、何とかできねぇもんなのか? 家くらいの金ありゃ、人一人養うくらい簡単だろ!?」
「…………、お前ら」
煙草の管を灰皿に置いたクロスが、呟いた。
「…………本当に変わったな。前はあんなに俺のガキだっつってた輩が来る度、嫌そうにしてた癖に」
『ああ、ほらまた来た。…………さぁてあいつは当たりかな? 外れかな?』
『外れでしょ、どうせ…………』
『あはは、ああいう手合いも懲りねぇよなー』
…………また、金目当ての奴が来た、と三人で暗く嗤っていた。
軽蔑していた。呆れていた。
そんなに金が、他人の金が欲しいのかと。
――――――だけど、ユウは。
「…………そもそもあいつを連れてきたのはティエドールで、それを調べもせずに受け入れたのは俺だ。あれは何も知らなかった。――――――連れて来て置いて、今更出て行けとなんぞ言えたもんじゃない。――――――言う気も無いが」
「「「…………」」」
「お前ら、ユウを説得して見せろ。――――――今、ユウが此処にいる事を許さないのは、あいつ自身だろうからな」
――――――その言葉に、俺達は顔を見合わせ、頷きあった。