服を着替えて車を呼んで、何処に行こうかとラビと話しながら、僕らは階段を降りた。 

「何かいいトコないかねぇ…………」
「この辺の所、行きつくしちゃいましたもんね」

 僕らは家で取る二食の殆どを外食に頼っている為、当然付近の店から制覇していく形だ。
 此処は高級住宅街だから余り店は無いけれど、少し走ればシティホテルやちょっといいレストランはたくさんある。
 だけどこの四年間で僕は殆ど行きつくした。当然其れより前からいるラビなんて、もう飽き飽きだろう。

「遠出する?」
「やですよ、お腹空いてるんですから…………って、あれ? なんかいい匂いしません?」
「…………ほんとだ」

 エントランスに降りた僕らが感じたのは、醤油の焦げる食欲をそそる匂い。
 食事をケータリングか外食以外ではとらない此処では、珍しい。

「ティキがどっかのシェフでも呼んだんじゃね?」
「ああ…………ならお願いしたら僕らの分も作ってくれますかね」
「…………お前の腹満たす分だけの材料、持ってきてるとは思えんさ」

 そんな話をしながら、僕らは何の気なしにキッチンを覗き込んで、思わず目を見合わせた。


 そこにいたのは、青いエプロンをした長い黒髪の女の人だった。


 しかも、その隣にはティキが立っていて、手伝い…………邪魔…………いや多分手伝い? をしている。
 イコール、あの人はプロのシェフじゃない。(プロなら任せ切りにした方が確実だからだ。)
 更に、その人がふと横を向いた瞬間、僕らは息を呑んだ。
 …………横顔だけでそうと分かるくらい、とんでもなく綺麗な人だ。

(なっ、なっ、何あの彼女!? ティキのコレ!? あいついつから宗旨替えしたの!?)
(し、知りませんけど…………そうなんじゃないですか?)

 僕らが思わず注視していると、ティキが視線に気付いたのかこっちを向いた。
 そのまま僕らに見せ付けるようにして、優越感たっぷりの笑いを含ませて彼女の腰を抱き寄せた。

(…………っ!!)

 チリ、と胸に過ぎる――――――激しい嫉妬。
 

 が、次の瞬間。




 ドゴッ!!!




「「!!??」」



「テメェ…………いい加減にしやがれよ…………?」




 僕らが見聞きしたものは、
 全力でその人に殴り飛ばされ(しかも顔を、だ)床に這い蹲るティキと、
 そして明らかに女性のものでは無い、低い、更には非常に不機嫌な声だった。

 

14へ
12へ

beautiful daysトップへ  



小説頁へ