「って神田! 危な…………っ!」

 神田を追って屋敷に侵入ると、その先のエントランスホールでは神田が数人に銃を突きつけられていた。
 突きつけられている神田は全く気にした様子が無いが。
 俺も慌てて銃を構えて――――――クロスなんかは最初から照準を定めてたけれど――――――奴等に対抗する。

「ちょっ、」
「大人しくしろ、さもないと、」
「さもないと?」


 ヒュンッ


 また剣が一閃された。
 

 ゴトッ

 
 …………床に、銃身だけが転がる。

「え、」

 集まっていた奴等の視線がその銃身に集まる。あからさまに戦意を喪失した目で。そりゃ目の前でそんな神業を見せられたら戦意だって喪失するだろう。
 無造作に銃身を叩き切った神田は、無表情に問い掛けた。

「…………此処の息子の部屋は何処だ」
「な、不審者を…………っ!」

 正面にいた奴の、目の数ミリ先に切っ先を近づけて神田は再度問う。

「何処だ?」  
「に、二階の、」

 震えだした男の言葉を最後まで聞かずに、神田は手近な階段を駆け上がり、
 俺達もそれを追って走り出した。








 口の中がカラカラする。
 まるで酸素の無い水の中の魚みたいに口をパクパクさせて息を吸う。
 
「…………、…………、」

 妙に体が熱い。  
 …………人間、何も食べれなくても水だけあれば結構生きられるけれど、水無いと駄目だもんな…………

「お前も大概強情だな」

 水差しを持ったディックが腰を落として視線を合わせてきた。
  
「はっ…………」

 揶揄するような奴の言葉を、鼻で笑ってやる。虚勢に見えようが何だろうが、だ。 

「ディック様、そろそろ何か差し上げたほうが…………」

 俺の脈を診ていた男が控えめにディックに声をかけた。

「何で? 元気そうじゃん」
「ですが、」
「意識だってはっきりしてるし。…………なぁ? ラビ。まだまだ頑張るつもりなんだろう?」
「…………」

 黙って目を閉じた。これ以上ディックの言葉もその姿も、聞きたくも見たくも無くて。

「…………ん? 何だ、騒がしいな」
「旦那様がお戻りになられたのでは?」
「あいつがそうそう戻ってなんか来るもんか」

 棘々しい物言いに、どんな表情をしているか予想がついた。
 憎んでいるのか、省みられないのを寂しがっているのか。どっちかなのか、或いは両方なのか。
 両方、なんだろう。多分。
 
 だけど、確かに騒がしい、気がする。
 俺が此処に連れてこられて以来初めてだ。
 此処の人間の大多数は俺の存在など知らない。夜に乗じて連れ込まれて、あとは日に数回ディックが誰かを従えて様子を見に来るだけで 、


 ガチャッ、バタンッ



「…………?」

 段々騒がしさが近付いてきた。
 まるで、何かを探しているように、多分この階のドアを開けたり閉めたり…………

 探し、て?

「おい、何だ!?」
「様子を見てまいります、」

 側近の男が一人立ち上がって、ドアを出た。

「何だ、!? ぐあっ!!」
「「!!」」

 まるで蛙が潰されたかのような声。
 
「…………何だ…………!?」

 ディックが呆然と呟いて立ち上がる。
 何だ? 何が起こってるんだ!? 

 そして、

「「「「「「居やがったか、誘拐犯」」」」」」

 

 ドアから姿を現したのは、六人と五つの銃口と一本の刀、だった。

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