「…………神田、」
「ん? ああ…………帰ってたのか」
「あの。神田、」
夕方。
学校から帰ってきていつも通りに夕食の支度をしていた時、モヤシに声を掛けられた。
そういえばこいつも様子が可笑しかったな、とちら、と見る。
制服のまま、台所の入り口で何やらもじもじしている奴に、
「何だ? お前も何か俺に聞きたいんだろ?」
「…………。」
そう促すと、意を決した様子で。
「神田…………師匠と、」
「お前も寝たかどうか聞くのか。それなら寝たぞ」
「…………」
それこそ目玉が転がり落ちるんじゃないかって位大きく目を見張って、モヤシは俺を見た。
「いつもお前らとだって、寝てるだろ」
「…………。」
「何をそんな今更…………今に始まった事じゃねぇだろ?」
そうだ。
何で今更、あんな事言ってたんだ? ラビの奴。
俺の所に誰か来たり、或いは俺が行ったりなんてもうずっと前からそうだったじゃねぇか。
「…………ああ、そういう、事ですか…………」
「あ、おい?」
モヤシは呟くと、壁に背を預けてずるずるその場に座り込んだ。
「…………はぁ、良かった…………」
「?、?? 大丈夫かお前?」
具合でも悪かったんだろうか。
近寄って、手を伸ばした。
「立てるか?」
「、」
「?」
俺が伸ばした手は、モヤシに取られ、逆に引き寄せられた。
「…………神田、」
…………モヤシが逆の手で、俺の頬に触れた。
「何だよ?」
「もう我慢、出来ません。…………抱かせてください」
「?」
それはどっちだ? ぎゅってする方か? 違うのか?
「…………?」
「ああ…………言い直しますね。僕とセックス、しましょう?」
「…………は?」
セッ…………!?
な…………に言ってやがる!?
「ばっ…………かお前!? 何言ってんだ!!」
こ、こいつガキの癖にっ…………!
「…………。」
「んな事、冗談で言うな!!」
「…………冗談じゃ、ありません」
――――――モヤシの声は、低かった。
ぐんっ
「うわっ!!」
取られていた腕を引かれ、バランスを崩した俺はモヤシの腕の中に転んで落ちる。
「な、にしやが、」
「…………僕らは、ずっと君が欲しかった」
俺が逃げられないよう、拘束して。
モヤシは、そう囁いた。
「馬鹿、お前、」
「ふざけてもないですし、冗談でもありません。…………本気です」
「あのな、その、…………それは、男同士じゃできねぇだろ」
「出来ますよ」
「…………はぁ?」
何だ其れ。
初耳なんだが。
そもそもそれは、男と女が子供を作る為にすることだろう?
驚いて、思わず見詰めるとモヤシが見返してきた。
瞳が妙に近い。
「そりゃ君は知らないでしょうけど。男同士でも出来るんですよ。セックスって。…………僕達は、ずっと君とそうしたかった」
「…………は?」
唖然とする、ってのはこういう事なんだろう。
ナニイッテンダコイツ?
理解してはならない気がした。
「…………僕「達」って、誰の事だよ、」
「それは勿論、僕と、ラビとティキと師匠です」
「…………」
家族全員じゃねぇか。
どういう事だ。
何でそんな事になってんだ。
「だから今朝、師匠だけが君とセックスしたのかと思って僕らは怒ったんです」
淡々と述べられる事実に、頭が麻痺して付いていかない。
俺、と?
俺と、誰が?
「――――――神田、」
「、」
「僕らは当然、家族として君を愛してます。…………だけど、それだけじゃなくて、個としても君はとても魅力的です」
「…………、」
「出来れば君にも、家族としてじゃなくて、そういう意味で愛して欲しい――――――無理強いは、しませんけどね」
頭が、くらくらする。
「勿論、力で無理をするつもりはありません。君が、それは無理だと言うならそれでも仕方ない。…………だけど、神田、」
「あ、」
「愛してます」
――――――目の前が、真っ白になった。
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