ボスンッ
どうやって部屋に帰ってきたのか覚えていない。
それどころか料理し終わってたのか食事を取ったのかすら、覚えていない。
…………何一つ、覚えていない中でただ残ったのは、
『そりゃ君は知らないでしょうけど。男同士でも出来るんですよ。セックスって。…………で、僕達は、ずっと君とそうしたかった』
モヤシの言葉がぐるぐる頭の中で回る。
…………なんで、男と女がする事を、俺達がするんだ?
それは本当にアリなのか? 人として。
クラクラ、する。
全員、俺とそんな事をしたい?
…………そんなの、何時の間にだったんだ。
全然、気が付かなかった。
あいつらだって、全然そんな素振り…………
見せてなかった、と思う
「…………」
どうしたらいいのか分からない。
次、どんな顔して会えばいいのか分からない。
どうすれば、いい?
コンコン、
延々悩んでいたその時に、――――――ドアがノックされた。
「神田?」
「…………、」
「大丈夫? 料理中に部屋に戻ったって聞いてたけど…………具合でも悪いの?」
部屋に入ってきたのは、ティキだった。
「いや、」
「でも確かに、顔色悪いね。…………大丈夫?」
「、」
あ。
伸ばされた手に。
一瞬、身体が竦んだ。
「…………、」
変に思われる、と冷や汗が滲む。
「寒いの? 温度上げるよ」
ティキは踵を返すと、入り口の方にある空調の機械を調節しに行った。
「暖かい飲み物持って来てやるから、ちょっと待ってて」
「…………ん。悪い、」
パタン、
ドアが閉められた。
…………気付かれなかったようで、ほっとする。
このまま寝てしまいたい、と、目を閉じた。
「ティキ、」
「どうだった? ユウ」
ラビとアレンに問われ。
思わず溜息と共に、呟いた。
「駄目だアレ。完璧怖がってる。怯えてるっつっても過言じゃないわな」
「…………だよなぁ」
ラビが、だと思ったという顔色で頷く。
「…………僕の所為ですね」
アレンが小さく呟いた。
「いや、いずれは誰かがやっただろうさ」
「、」
何時までも我慢し続けられる訳じゃない。
「そう考えりゃいい機会だったさ」
…………神田がどんな選択をするにしろ。
俺達は、それに従うしかない。
全力で拒否されたなら、大人しく引っ込むしか、ない。
「ああああ、でも緊張してきた…………」
ラビが腹を抱えてソファーに転がる。
神田の性格上顔を付き合わせたときに全力で罵ったりはしないだろうが、だけどその表情が拒絶に歪んでいたらやっぱり俺達としては傷つく。
「そもそもさ、見ててどう? 神田ってこっちのケ、ありそう?」
そもそも俺の周りが特殊過ぎるんだ。
俺とクロスは男も女も綺麗な奴なら何でも良かったし、ラビはちょっとひねくれてて好きなのは女の子寄りなのに実際は男にしか手ぇ出せない。アレンは母親との関係が悪すぎた所為か、紳士の割には女を信用してない所がある。結局男しかダメな訳だ。
だけど世の中には異性しか駄目だって奴の方が、多い。
神田も「そう」なのか「どう」なのかはイマイチはっきりしない。
「…………全っ然読めません。女性に興味あるようには見えないんですけど、」
「かと言ってじゃあ野郎に興味ありそうかっつったら、そんな事は全然ないし」
アレンとラビが分割しながら言う。
…………まぁ大体俺が思ってることと一緒だ。
「ぶっちゃけ、男にも女にも興味ないんでない? 神田って」
「…………お子様なんさ、ユウは」
ラビが溜息をついて遠くを見ながら呟く。
「まだ、他人と性的な接触持とうとか持ちたいとか全然考えられないんさ」
「知識はゼロじゃないよ?」
子供の作り方は知ってたしな。
「そりゃこの国で教育受けてりゃ全然分からないって事はないだろうさ。だけど、多分それだって教科書に書いてある内容位なもんだろ」
「…………ふむ、」
――――――そんなとこだけ、まだまだ子供って事か…………。
俺の兄弟は大体揃ってどいつもこいつも早熟だったから(そりゃ俺も他人の事言えないけどな。一番の原因はあの性的に奔放すぎた両親だ)神田みたいなタイプにはお目に掛かったことがない。
「何かそう考えると罪悪感感じるよねぇ…………」
「「??」」
「何も知らない小さな子にAV見せつける気分、」
まぁ神田は小さくもないし満更何も知らない訳でもないけれど。
それでも、まだの穢れのない生き物に向かって劣情を向けるってのは、それに近い罪悪感と背徳感と、――――――興奮を感じる。
「…………はー、」
「ユウ…………」
俺達は、溜息をついて――――――二階で一人、震えているだろう神田を想った。
→after days 6へ
→after days 4へ
→beautiful daysトップへ