君が喜ぶ物は一体何?
 宝石も、花束も、全ての物は君から真の笑顔を引き出すには足りない。

 君が喜ぶ物は、一体何?




 六月六日。
 
「…………?」

 問答無用で車に載せられた神田は不思議そうな顔をしている。
 学校から帰ってきた僕達は揃って先に戻っていた神田を車に載せた。
 一路向かう先を、神田は知らない。

「何処行くんだ?」
「着いてからのお楽しみさ!」

 仕事のある師匠だけは向こうについてから合流だ。
 
 ――――――今日は、神田の誕生日。
 だけど僕らは、前神田が僕にしてくれたように家で…………なんて器用なことは出来ないので、数度の話し合いを経て選んだ都内のホテルにディナーと宿泊の予約を入れた。
 ついでに、まぁ、致せたらなぁという下心入りで。

「神田、その服凄く似合ってますね」
「そうか?」

 家を出る前にホテルのドレスコードに合うようにと着替えさせられた神田は珍しくジャケットを羽織って、髪を下で結んだしっかりして綺麗目な格好。
 やっぱりカジュアルすぎる格好よりこういった格好のほうが似合う…………なんて思った。 

 僕らも同じような服を着ているなんていう事実は、どうでもいい。

「うん…………そう、分かった。じゃあね、」


 ピッ


 前の席で師匠と電話していたティキが、終話ボタンを押した。

「クロス、もう着いてるんだって」
「へぇ、思ったより早かったさね」
「どーせ会議とかブッチしたんだろ。あのおっさんのことだから」

 まぁ多分そうなんだろうな。今日会議って言ってたし。
 不思議そうな顔の神田は相変わらずで――――――車はやがて、ホテルのもエントランス前に止まった。





「…………。」

 神田が感心した顔で吹き抜けを見上げている。
 僕らの家だって個人の邸宅としては相当大規模だけど、やっぱりこういう施設から比べれば小さなものだ。
 しばしば海外のホテルを利用してた僕らと違って、神田は前に全員で行った温泉地しか知らないだろうから、余計に見慣れないんだろう。 
 
「どっち?」
「あっちさ、」
「神田、行きましょう? 師匠が待ってます」
「父上が?」

 意外そうな顔をした神田は、先導するラビの後を付いていく。
 その先にある物を既に知っている僕らは、その後を更に追うようにして付いて行った。


 君が喜んでくれるものは何?
 良く分からないけれど、いつもは飲まないお酒で乾杯してみようか。

 
「…………あ?」

 部屋の中は既に準備が整っている。


 さぁ驚いた顔の君に、


「「「「誕生日、おめでとう」」」」


 右手にグラン・クリュ、左手に無限の愛を抱いて、さぁ君が生まれたというその奇跡に、最大の感謝を!


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