「…………大丈夫? ユウ…………」
「…………ああ、」
「大丈夫そうには見えんがな」

 最上階までのエレベーターの中で、足取りの怪しいユウはふらついている。
 最初の一杯のシャンパンと、あとは食事中に一杯のワインだったんだけど…………ユウにはやっぱりきつかったみたいだ。
 この間みたいに泥酔状態ではないけれど。

「…………」

 俺やティキに支えられながら、ユウはふらふらとエレベーターから降りた。


 



 部屋にはいると俺達はユウをソファーに寝かせて、アレンと二人でユウのジャケットを脱がせた。シャツのボタン上二つを外し、ベルトも緩める。
 ソファーにぐったりと沈み込んだユウは、動かない。
 酒に弱いアレンですらピンピンしてるのに、ユウが沈没してしまった。

「へえ。結構いい部屋じゃん」

 ティキが感心したように言う。
 最上階のスウィートルームはこの辺りではトップクラスだ。

「…………う、」
「大丈夫?」
「水でも飲ませてやれ」

 クロスに言われ、アレンがバーコーナーを漁った。冷蔵庫の中からミネラルウォーターを見つけ、すぐに戻ってくる。
 栓を抜き、グラスに注いでユウに手渡した。

「はい、神田」
「悪ぃ、」

 受け取ったユウがグラスの水を飲み干す。

「少しそのまま休んでな? 水飲んでれば楽になると思うから」
「ああ…………」
 
 くったりしているユウの手を握りながら、俺達は事細かにユウの世話を焼いた。









「もう大丈夫?」
「ああ」

 俺が風呂から上がってきたら、ユウはもうソファーから身を起こしていた。先に風呂は行ってきたクロス達と何か話していたらしい。

「じゃあ次、風呂入る?」

 酔いも醒めたみたいだし。

「ああ。そうする、」

 ふらつく様子も無くユウは立ち上がると、バスルームに姿を消した。

「おーい、覚悟しとけよ?」
「覚悟って何さ?」

 ユウがバスルームに消えると、ティキが言った。
 聞き返すとティキはにやり、と笑う。

「先に一発抜いてきたらどうだガキ共。暴発して醜態晒す前にな」
「ぶっ…………」

 こ、このクソ親父はっ…………!

 しかしまぁ、言いたいことは把握した。
 ユウと話してたのもそれなんだろう。

「持ってきたのが無駄にならなくて良かったです」

 言いながらアヤシイグッズをナイトテーブルに並べているアレンは見えない振りだ。
 
「お前な…………そんなの何処に…………」
「何言ってるんですかティキ、神田に万が一にも怪我させる訳には行かないでしょう!?」

 ローションのボトル持って力説すんなよ…………。
 言ってることは微妙に正論なんだけど。

 しかもそんなの見て微妙に居たたまれなくなるのが俺自身。

 …………っていやいやいや、俺何時からそんな純情キャラになったよ? オカシイだろ…………。
 あんなの見慣れてるし、使い慣れてる。最近ご無沙汰だったから、使い慣れてる、っていうか、てた、ってのが正解なんだろうけれど。

 だけど、これからするのは――――――ユウとなんだ。

 そう思うと無駄に緊張した。生まれて初めてセックスした時だってこんなに緊張しなかったのに。緊張しすぎて勃ちませんでした、なんて情けないオチにならないよう今から祈る。そんな事になったら良い笑い者だ。それは勿論、クロスティキアレンにより、だろうけど。

「お前さんは随分余裕そうさね」

 嬉々としてアヤシイグッズ、細かく言えば避妊具とローション数種、あと多分媚薬の類、を並べていたアレンに声を掛けた。
 経験値が0一個以上違うクロスやティキは、ともかくとして。

「それは勿論、度重なるイメージトレーニングの結果です」
「堂々と妄想を公言すんな!!」

 それ要するにユウをオカズに…………って事だろ!!
 
「何言ってるんですか、思春期なんだから当然でしょう!?」
「思春期っていうより」
「発情期だな」

 ティキとクロスが分けて揶揄する。

「万年発情期の人種に言われたくありません。貴方達に似たんです」

 するとアレンがプイッとそっぽを向いた。
 確かにまぁ、クロスに似たんだよな。下半身が。
 そんなとこだけ父親似でなくても良いと思うんだけど。

「まぁでも、そんなもんじゃねぇ?」

 笑いながらティキが取りなしに掛かった。
 
「ところでお前等余りにも下手クソだったらひっぺがすからな」
「ひでー!!」

 そんな軽い言い争いの中。
 だけど俺の意識は、ドア一枚隔てたところにいる筈のユウにばかり、向いていた。


after days 10へ


after days 8へ
beautiful daysトップへ  



小説頁へ