俺がユウと一緒に通う大学は、家から車で三十分程の所にある。
建てられてまだ時間が然程経って無いらしくて、内装はまぁ綺麗なんだと思う。そりゃ高校までと比べたら…………だけど。
最初はあまりの不便さと質素すぎる設備に驚いたけど、もう流石に慣れた。他の大学と比較しろって言ったって俺が通うもう一つの方は、あれは規模が違いすぎるしきっとこれが世間のスタンダードなんだろう。多分。
階段のように席が並ぶ大講義室で、俺が見てるのは遠目にしか見えない教授の姿ではなく、ホワイトボードの拡大のための液晶でもなくて、ひたすらユウの横顔。
真面目な顔をしてノートを取るユウの横顔は…………なんていうか、こう…………そそる物がある。
と、熱心に見詰めすぎたのかユウが気付いて俺の方を振り向いた。声こそ出さないけど思いっきり眉根を顰めて俺を睨む。
声にするならきっと、「少しは真面目に聞け」だろう。
そんでもって、試験の時にはまた怒るんさ。「俺のほうが真面目にやってんのにどーいうことだ」って。
想像すると、思わず笑いが込み上げて来る。するとユウが益々眉間の皺を深くして溜息をついた。呆れたように俺から視線を外して教授を拡大して映している液晶をじっと見ている。
「…………。」
そんな真面目で秀麗な横顔に、降って沸いたのは悪戯心。
俺も正面を向く。…………勿論真面目に講義を聴く気になったわけではない。…………テスト前にテキスト見返せば充分なもの、態々聞く必要も無いし。
机の下に忍ばせた手を、ユウの方へ向かわせる。
液晶とノートに気をとられてるユウは、まだ気付いていない。
ユウのノートの下の辺りまで伸ばした手を、そのまま下ろしてデニムに包まれた膝に触れた。
…………さわ。
「!」
ユウの真っ直ぐ伸びた背筋に、震えが走った。
置いただけの手を滑らせて、膝から太腿へと撫で上げる。
「っ、」
ユウが片手で俺の手を振り払おうとする。上半身が揺れて、俺と逆隣にいた女の子がユウの方を向いた。
それを横目でみつつ、次からは列の端っこに座らせようと心の中で決める。
女の子が正面に向き直った頃、俺はそれまで休めていた手を再度ユウの膝の上で自由に遊ばせる。
掌全体で撫で上げたり、指二本だけで辿ったり。
真っ直ぐ伸びていた背筋が、まるで腹を護る時みたいに前のめりに歪む。
調子に乗って、膝から太腿へ、それからもっと上のトコにまで指で触れて――――――ちょっと驚いた。
「っ、は…………、」
ユウが、頬を紅く染めて熱い吐息を漏らしたから。
『…………気持ちよくなってきちゃった?』
『…………死ねよテメェ』
外側を撫でるばかりの手を、内側に滑り落とす。
途端に足を堅く閉じるのを、抉じ開ける様にして合間のそれに触れるか触れないかの辺りを摩って見せた。
ユウの息は止まって、足が痙攣する。
カタンッ
指を離れたシャープペンシルが転がり落ちて通路の方へ。
「…………具合悪いの? 出る?」
ユウの隣の子が足元に転がってきたそれを拾って、差出しついでに声を潜めて聞いてきた。
「うん、そーみたい。ごめん、ちょっと通して」
代わりに答えて、シャーペンを受け取って。
机の上に広がってたテキストとノートを俺のもユウのも全部一纏めにして鞄に放り込む。
鞄を右手で、ユウの腕を左手で掴んで、屈み気味に席を立つ。
ちら、と視線をやってくるギャラリーの眼差しからユウを庇うように隠すようにしながら、階段を上がって、大講義室のドアを開いた。出てから後ろ手に締めれば、中の拡声器を通した教授の声が遠くから響いていくるように聞こえる。
「くっ…………そ、信じられねぇこの変態野郎…………」
ズルズル廊下に崩れ落ちながらユウが悪態を吐く。
俺も屈んで、ユウに視線をあわせた。俺を睨みたいらしいけれど失敗してる潤んだ目も、ほんの少し開いた紅い唇と、ちらりと覗く舌。
「感じて勃っちゃったユウも立派にアレだけどね。…………さぁ、行こ?」
「…………どこ連れ込むつもりだテメェ」
流石にユウもいい加減分かるようになってくれたようで何よりさ。
「人のいないとこ。それ、どーにかしきゃ」
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