「…………ん?」

 朝。
 俺が鍛錬とシャワーを終えて、朝飯の支度をしようと台所に向かうと、中に気配がした。
 …………うちの奴らは皆して朝が弱く、一番朝が早いのは俺だ。
 そして現時刻はまだ六時を少し過ぎた辺り…………普段の奴等の起床時間にはまだ大分間がある。

 …………まさか…………物盗りか?

 そう思い立った次の瞬間、俺は中に向かって怒鳴った。

「おい!! そこにいるのは誰だ!!」
「ひゃっ…………!? か、神田?」

 …………ん?

 中を覗き込むと、台所の中、冷蔵庫の前にいたのはモヤシだった。
 まだ寝巻きのままで、何故か手に牛乳と、それからハムを抱えている。

「お、脅かさないで下さいよ…………」
「そりゃこっちの台詞だ。…………何やってんだお前?」

 奴の持ってた牛乳とハムを見る。
 すると、悪戯を見つかった子供のような顔をした奴はそれを後ろ手に隠した。…………今更だな。

「え、えーっと…………その、お腹が空いちゃって…………」

 …………。

 こいつに限ってはそれもアリだろうな。うん。

「お前な…………あと一時間もすれば朝飯だ。今からんなもん食ってんじゃねぇよ」
「え、へへ…………じゃ、じゃあこれ貰ってきますね!!」
「あ、おい、こら!!」

 俺が止める間も無く、モヤシは走り去っていった。慌しく階段を駆け上がって(他の奴らは寝てるってのに迷惑な奴だ)、自分の部屋に飛び込んだ。   
 …………何だあれ。
 
 まぁどうでもいいか…………と冷蔵庫前を見て…………その惨状に額に青筋を浮かべる羽目になった。
 奥からハムを引っ張り出したからだろう、魚や卵や調味料なんかが出され、しかも卵に至っては一つ割れている。
 

 あ…………っの野郎!!
 散らかして行きやがって…………!!
 野良犬が漁ったってこうはならねぇぞ!!
 
 怒鳴りたいのを必死で堪えて、深呼吸して、それから諦めて片付けを始めた。

 
 
 
  



「アレンが? …………そういえば昨日の夜、遅くまでごそごそやってたってティキが何かぼやいてたさ」
「そうなのか?」

 大学の学食。
 愚痴めいた事をラビに漏らすと、そんな返事が返ってきた。 

「あいつ元々夜遅いだろ」
「それに輪を掛けて遅かったらしいけどね。俺は気付かなかったけど」
「お前は一度寝たら起きないからな…………」

 俺はそもそも西の父上の所に居たから知る訳がねぇ。

「そう?」
「お前俺が起きてもまず気付かないじゃねぇか」
「そりゃそうだけどね…………」
「そもそもうちの壁ってそんなに薄いか?」
「あーうん、夜にユウの声、聞こえるもん」
「そうなのか、…………、…………!」
    
 そ、それってまさか…………

「で、それが俺達の夜のオカズにn」
「黙れ今すぐその口閉じろ――――――!!!」

 手近にあった紙をラビの口に突っ込んで黙らせる。
 その先など言わせてたまるか!!
 
 モガモガ言ってるラビは放っておいて、俺は父上に防音工事を頼もうと真剣に決心した。


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