「神田の育ったところに、行ってみたいです」
きっかけはモヤシのそんな一言だった。
何を言い出す、と奴を見る。と、そんな俺に、他の奴全員の期待の視線が向けられていた。
「…………育ったところって…………ただのアパートだぞ。しかも記憶にある限り三回は引越ししてる」
「結構引っ越してるんさね。何で?」
「多分母上の仕事の関係、だと思う」
理由は知らないが、母上は割と転職していた。
一所に腰を落ち着けたのは俺が小学校も高学年に入ってからだ。
「じゃあ一番最初に居たところで」
「…………あのボロアパート、取り壊されてなきゃだけどな」
了承の意を以て答えると、モヤシは嬉しそうに笑った。
週末。
三人と――――――ティキラビモヤシだ――――――共に昔暮らしていたアパートの前。
「これはまた…………」
「随分と…………」
「年季の入った…………」
「要するにボロいって言いたいんだろ」
家賃は変わってなければ一月三万だ。一応風呂もトイレも各部屋についててこの金額だったんだから破格だった。この金額だと普通トイレが共同だったりする。
その代わりと言っては何だがまるで防音は出来ておらず、大して大きな声で喋っている訳でもないのに両隣に会話が筒抜けだった。冬は寒く夏は暑い。子供だった俺は時折泣き喚いただろうからいい迷惑だっただろう。
『ユウちゃん、お母さん昨日今晩の夕食煮物って言ってたでしょ? これも入れなさいよ』
…………良く隣の住人だったばあさんから食材を貰ったもんだ。
あのばあさん、元気か…………?
中に入るわけには行かないので単にアパートを見上げる。
――――――と、だ。
「ユウ…………?」
「ん?」
ラビじゃない声で、名前を呼ばれた。
誰だ、と振り向く。他の奴らも同じだったらしくて三人とも振り向いていた。
そこに居たのは目を零れ落ちんばかりに見開いた男。
「誰?」
ティキが短く呟いた。
「ユウ? ユウ、なの?」
「あ、ああ…………」
誰だお前?
とは聞きづらい雰囲気だ。
直ぐに顔をくしゃくしゃにしたソイツは、
「ユウゥゥゥゥゥゥゥゥ――――――!」
「!」
俺に飛び掛ってきて、次の瞬間。
ガッ!!
「神田に触らないでください不審者っ!」
思い切りモヤシに殴り飛ばされた。
殴り飛ばされたのに受身を取って(中々の腕だ)ソイツは再び俺に向かって駆けてくる。
「チッ!!」
ラビとティキが俺を背に庇い立ち塞がった。
「退いてよっ!」
「退けるか不審者! お前何者さ!?」
ラビと相手が怒鳴り合う。
え、と、こいつ誰だ?
――――――、…………、…………、!!!
「お前…………もしかして、…………アルマか?」
「!!」
思い当たった名前を呼ぶ。と、パッと顔を輝かせたソイツはこくこくと何度も頷いた。
「知り合い?」
ティキに問われ、微妙に頷く。
「あ、ああ。幼稚園と小学校一年位まで一緒にいた奴だ」
俺が知ってるアルマは八歳までだ。誕生月の関係で俺より一個上だったから多分今はもう二十歳。…………分からなくたって仕方ないだろ!? 変な目で俺を見るなモヤシ、ラビ!!
しかしヤベェな、殴り飛ばしちまったもんな…………(モヤシがだが)
「わ、悪ぃ。アル…………わっ!!」
謝罪しようとラビとティキの前に出るなり、思い切り抱き締められた。
「うわァァァァん! もう二度と会えないと思ってたよぉぉぉぉぉぉ!!!」
「泣くなよ! お前もういい年だろ!?」
何だよこいつ泣き癖治ってねぇのかよ!?
大の男に抱きつかれ泣かれるという状況に戸惑って振り向く。と、置いてけぼり状態の三人は俺よりもっと戸惑った顔をしていた。
→after days 38へ
→after days 36へ
→beautiful daysトップへ
アダルト組のエロは星になりました。
以前拍手で頂いてたリクエスト(何時だ)にお答えし、アルマ登場。
小説頁へ