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映しだされた映像は、酷いブレ方をしていた。地面がぐらぐらと揺れている。
ずっと見てたら酔いそうだ。
『撮れてる、んですか?』
『大丈夫よ、録画ランプ付いてるもの』
暫く同じ地面が続き、漸くビデオカメラは前を向いた。それもイマイチ焦点が定まらず揺れている。
数秒後コツを掴んだのか画面の揺れは収まり、それは少し離れた砂場を映しだした。
「…………公園?」
安全管理やら何やらで最近の公園からは撤去されてそうな遊具がいくつかと砂場。
その向こうには二階建てくらいの建物が見える。
撮影者が歩き出したのか、ゆっくりと画面が動き出した。砂場に近づいて行く。
そこでは小さな子供が二人で砂を高く積んで遊んでいた。
片方の子が顔を上げた。誰もが女の子だと思うだろう、そして誰しもが美少女になることを予感するだろう程子供ながらに整った顔立ちの、小さな子供。
真っ白い頬には遊んでた所為か、赤みが差している。
「「「!」」」
――――――っわー!
ぱぁっ、と華が咲くみたいに笑ったその子は立ち上がり、一生懸命両手を伸ばして訴える。多分抱っこ希望だ。
それが「誰」なのかは胸につけた鳥の形の黄色い名札を見れば――――――そこには「ひよこぐみ かんだゆう」と書かれている――――――、一目瞭然だ。
『あら。丁度いいじゃない、一緒に撮ってあげるわよ』
ビデオカメラが一度空を写し、地面を写し、それから希望通り抱かれて満足そうなちっちゃいユウと、それから、今のユウによく似た女の人を映しだした。
二人が揃って綺麗なもんだから、宛ら聖母子像みたいだ。
「…………若っ。東洋人がいくら若く見えるっつったってこれ、神田のお母さんハイティーンじゃないの?」
隣で見ていたティキが唸るように呟く。
「実際若いぞ。これ、俺が年少の頃だろ? つーと、母上は十九か。今の俺と丁度同じだな」
「…………はい?」
何ですと?
俺がそう答えると、ティキがぽかんとしたアホ面をした。いや、ラビも同様だ。勿論知っている俺とアルマは特に動じることもない。モヤシはよく分かってなさそうな顔をしている。
「な、何? どうしたんです」
続いてそのまま頭を抱えるティキとラビに、話がわかってなさそうなモヤシが声を上げた。
のろのろと力無く顔を上げたティキが、
「アレン。ガキでも出来る簡単な計算問題だよ。十九引く三は幾つ?」
「馬鹿にしてるんですか? 十六…………あ」
そこでモヤシもティキの言わんとする事に漸く気付いたらしい。
「えっ…………十六歳で?」
「しかもさ。多分この人、多分二年くらいはクロスんとこにいたんだよ。つーと、十四位から…………」
「やめてティキマジやめて、実の親父がロリコン野郎とか信じたくないさぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ちゅ、中学二年生の頃から、ってことですか?」
うわ、改めて言われるとちょっと引くな。
「ご近所さんは全員そう思ってたと思うよ。ユウのお母さん、年齢隠してなかったから」
「あぁ…………もしかしてそれでうちは何か色々差し入れ貰ったりしてたのか?」
「たぶんねー。皆心配してたし」
十六歳で此処に俺を連れてきた母上に周囲が何を思ったかはなんとなく想像が付く。
「あの時の事件も、工場にご近所さん揃って抗議しに行ったしね」
「…………? 事件?」
何のことだ?
俺が訊くと、アルマが言葉に詰まった。
「…………ユウ、お母さんが工場辞めた理由、知らない?」
「知らねぇ」
確かに俺が本当に小さい頃母上は缶詰を作る工場にいた。たまに何か貰ってきていてそれを食ってた記憶がおぼろげにある。
そしてそこを止めて何かを配達する会社に務めていた。
「…………、」
あちゃー、という顔でアルマが何処かに視線を彷徨わせる。
「何だよ、気になるじゃねぇか」
「あのねユウ…………。驚かないで聞いてね?」
「?」
そんな何年も前のこと、驚くも何も…………。
「ユウのおばさん、工場長にセクハラされたんだよ」
「「「「!?」」」」
それまで頭を抱えていた三人もばっ、と起き上がりアルマを凝視した。
「ユウのお母さんに付き合って欲しいって申し込んで、でも断られたら色々と…………。最初ユウのおばさんも我慢してたみたいなんだけど、その内限界が来たみたいで。工場長思いっきり殴って顎の骨叩き折ったって」
「…………さすが母上」
あの人、拳術も得意だったもんな。
「そしたら工場長が傷害で訴えるとか色々ユウのおばさんを脅したからご近所さんが怒ってね。うちの母さんたちもだけど…………皆で工場と工場持ってた本社に抗議しにいったんだ。未成年の女の子を無理矢理脅して付き合わせようとしたり、セクハラしたりしたのはそっちだろ! って」
「…………そうだったのか…………世話になったんだな」
知らなかった。全然。
「で、まぁ結局被害届は取り下げられて、でもユウのおばさんも工場に居づらくなって辞めちゃったんだ」
「…………あ、もしもしクロス?」
え?
突然電話を掛け始めたティキを見る。
「今から言う住所あたりにあった工場調べて。十五年位前の責任者も。――――――理由? 帰ってから説明する」
「お、おい何考えてんだお前!?」
何するつもりだ!? 何か怖ぇぞ!?
「…………子供は知らなくていいこと」
にーっこりと笑ったティキにラビが表情を引き攣らせた。平然としているモヤシは今度は訳分かってないんじゃなくて、どうでもいいんだろう。
家に帰ったら父上に乱暴なことは止めてもらうように頼んでおこう…………。
「あ、他のも見る?」
話が見えてないんだろうアルマは呑気にそんな事を言ってビデオを止めに行った。
幾つか積み上げてあるビデオテープから一本選び出して、ビデオデッキの中のテープと交換して再生させる。
と、だ。
『早く来いよアルマッ!』
…………うわ。
昔の自分だがこれは酷ぇな。
画面に写っているのは小生意気な顔で腕組みをする、約七歳の俺だった。
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ロリコン疑惑を掛けられた当人は実はサバ読まれてたので本当の年齢を知らなかった。実年齢+2で教えられてたりする。流石に本当の年齢知ってたらフロワ家に返してる。
ココからマイ設定の神田母の人生。興味ない人は読み飛ばし推奨。
9歳で両親と兄弟を亡くす。→9歳〜10歳、親戚中を盥回しに。その間に遺産は全て奪われ、虐待を受ける→11歳の時、友人の遺児が虐待されていることを知り見かねたフロワ家に引き取られる。→13歳、遅い初潮を迎えて出奔を決意。全ては血の繋がった家族が欲しい一心。→14歳、出奔してクロスのもとに転がり込む。愛人契約を結び、妊娠するまで置いてもらう事に。→16歳、妊娠したためまたしても出奔。アルマ達がいた町に流れ着き子供を産む。
出奔してばっかりの人生。基本人間不信、傍に自分より力の強い相手がいるのを極端に嫌がる。(また虐待される事を恐れていた)男性恐怖症の気すらあった。
クロスのことは嫌いじゃなかったけど(少しは好きだった)そもそも最初の契約で認知や養育費を求めない取り決めになって居た上に実際はクロスの種じゃないこともありあっさり出奔。使用人から責められるまでもなく最初からそのつもりだった。
過酷な人生だったけれど、子供を産んでからは彼女なりに幸せだった はず。
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