ドンッ!
変な奴等に付いてきた俺は、半ば突き飛ばされるような形でその小部屋に押し込められた。
運動用のマットレスやネットなんかがある…………って事は、体育準備室か。
成程、転入生をシメる為に呼び出すんならお誂え向きだな。
「…………」
奥まった所で、俺は腕を組んで俺を此処まで連れてきた奴等を見据えた。
…………人数は、八人か。
「…………で? 何の用事だ?」
「お前、新しい会長のコレなんだろう」
「…………あ?」
…………これ?
これって何だ?
「だが、間が悪かったな。会長には今、俺達のアイドルがいる」
…………アイドル?
「さっぱり話が見えねぇ、何言ってんだお前ら?」
俺が正直にそう申告すると、しかしそれは奴等にはむしろ小馬鹿にでもされたように感じられたのか、
「お前っ、人のもの盗っといて何だその態度は!?」
「あ?」
盗む? 何をだ?
…………大体、誰が人の物なんか盗るかっ!
「意味分かんねぇ事ばっかり抜かしてんじゃねぇ!!」
俺がそう怒鳴り返すと、一人が肩を掴みに来た。掴まれたところが若干痛むが、絶対引いたりしねぇ。
強く睨み返すと一人が後ろに回り込んで、両脇から拘束された。
「おい、やっぱりこいつ見てみりゃ随分と綺麗な顔してるぜ。会長がオトされただけはある」
「会長に黙って、遊ばせてもらうか?」
「…………、」
その時、ガタイのいい奴等の後ろから、一人細っこいのが出てきた。
色素の薄い髪の、
「…………お前、今朝の一年か?」
意味分らねぇ事言って走ってった奴だ。
そいつは相変わらず涙を目に溜めたまま、キッ、と俺を睨み付けた。
「あっ、貴方が悪いんだ! 僕からあの人を盗ったから…………!」
おい、誰か通訳連れてきてくれ。
真剣に話が見えない。
思わず俺は盛大な溜息をついた。
一つ確かなのは、今この状況になったのは少なからずあの一年の差し金って事くらいだ。
「どうせ顔で会長を誘惑したんだろう。ならその顔、愉しませてもらった後に傷でもつけてやれば…………ギャッ!」
例にもよって難癖付けてきた馬鹿の顔を、俺は拘束された姿勢のまま、右足で思いっきり蹴り上げてやった。
「なっ…………」
「こいつ!」
「何だか知らねぇけどな。…………気にいらねぇ転入生シメんのに、ごちゃごちゃ理由付けすんじゃねえよ面倒くせぇっ!」
「うぎゃッ!?」
俺の両腕を後ろから押さえつけてた奴には、頭突きで顎を打つ。
拘束が解け、俺は晴れて自由の身に戻る。
…………あと六人。
此処で六幻か、あるいは木刀か竹刀でもありゃ良かったんだが…………ま、この程度なら素手で問題無いか。
拳を軽く鳴らして、俺は六人を睨み据えた。
多分抵抗できると思ってなかったんだろう、思わぬ反撃に奴等が動揺しているのが良く分かる。
あの一年を背に庇うようにして、じり、と後退りするのに、俺は嗤ってやった。
「はん、口程にもねーな。それで喧嘩しようってか?」
挑発してやると、奴等が顔を赤くして俺を睨む。
そして息でも合わせるかのように突進してきたのに、俺は口の端を歪めた。
授業時間内では無い、まだ部活の始まっていない第二体育館は静かだった。
そこに四人で駆け込むと、準備室の前に立っていた奴がギョッとしたように俺らを見る。
「…………お前っ、其処で何やってるさ!?」
怒鳴ると、しかしそいつは俺達の前に立ちはだかった。
「今は取込み中です!」
「そこにユウがいんだろ!? 退けよっ!!」
押し問答をそこで繰り広げると、後ろからアレンが進み出た。
「…………けよ」
そして、左手でそいつの肩を掴むと、
「退けっつってんだろ!!」
一声怒声を上げると、無理やり引っぺがすようにしてそいつを突き飛ばした!
「…………こえー」
「アレンがキレてんの、初めて見た…………」
後ろでジャスデビがヒソヒソと囁き交わしているが俺もアレンもそんな事気にしている場合じゃない。
見張りを退かしても鍵が掛っていた為、アレンはつい先ほど自分が思いっきり突き飛ばした、未だに立ち上がれてないそいつの元に歩み寄った。
「…………鍵。持ってるんでしょう?」
低い声は殺気交じりだ。
普段は温厚で紳士的、上級生には「可愛い系」で通っているアレンの思わぬ一面に、その見張りは真っ青になりながらコクコクと肯いて、震える手で鍵を差し出した。
「ラビッ」
俺に向かってアレンはその鍵を投げる。
慌てて鍵穴にそれを突っ込んだ俺達は、中の光景に思わず絶句した。