バンッ!!
乱暴に開けたドアの向こう。
僕らの最悪の予想は、裏切られた。
それは一応、いい意味で。
「神田っ…………!」
「ん? …………ああ、お前らか」
新手かと思った、と言った神田は殆ど別れた時と変わりない姿のまま、腕を組んで立っていた。
その傍には、倒れ伏して呻く生徒達が。
「良かった…………無事だったんさね…………」
ラビも、ほっとしたように呟く。
「でもこれ…………ユウがやったの?」
其の後で、倒れ伏した生徒達を見やりながらラビが恐る恐る、といった感じで掠れた声で訊いた。
それに神田はあっさり頷いて、
「ああ。口ほどにもねぇ奴等だったな」
「…………神田って見た目によらず、喧嘩強いんですね」
「何だその見た目によらず、ってのは…………」
不満そうに眉根を寄せる神田に、僕は心底ほっとしていた。
もしも彼らが神田を傷付けでもしてたなら、(しかも僕らの想像していた方法で!)多分、タダでは済ませられなかっただろうから。
「さて、と。…………あんたら」
ラビが、低い声で言った。
「覚悟は出来てんだよね? 理事長子息に手ぇ出したって事はさ」
腕を組んだラビが、倒れてる奴等と、隅っこで震えてる一年に向かって言った。
その言葉に顔だけラビに向けた二、三年の奴等が眉根を寄せる。
「…………理事長子息? 我々は、別に貴方には」
何もしてない、そう続けたかったんだろう。
けれどその科白をラビが途中で断ち切った。
「手ぇ出しただろ? …………ユウに」
ラビの言葉に、奴等は不可解そうな色を浮かべ…………やがて何に気付いたのか、サッと顔色を青褪めさせた。
「あ…………」
「まさ、か」
奴等の視線が、俺の方へと向く。
「理事長の次男。…………僕らの兄ですよ、彼は」
モヤシが、こっちも腕を組みながら、放り出すように言った。
…………ラビとモヤシの声は冷え切っていたので、俺は内心で首を捻る。
「あ…………あ、」
「俺達は…………そんなつもりじゃ…………」
「じゃ、どんなつもりだったんさ? 教えてよ」
ラビが屈んで、目が全く笑ってない笑顔で奴等に視線を合わせた。
「八人掛りでこんなとこまで連れ込んで、ナイフとカメラなんか用意しちゃってさ。 …………何しようとしてた?」
…………その声の低さに、直接それを向けられた訳ではない俺までもが、背筋が冷えた。
思わず振り向くと、モヤシもラビと似たり寄ったりの顔で、あとの見た事の無い二人は完全に傍観者モードだ。
「そ、れは…………」
「言ってみろよ!」
ラビが、一人の首元を掴んで無理矢理顔を上げさせた。
「おい、ラビ、」
思わず静止の為に名前を呼ぶ。
何故か、何やら緊迫した雰囲気だ。
隅っこの一年なんか、泣きそう通り越して泣いてるし。
ラビもモヤシも一瞬ちらっと見ただけで一年の事はシカトしてるし。
「…………どうせ乱暴して、写真に残して脅そうと思ってたんだろ? これだから脳味噌まで筋肉なのは…………」
これみよがしに溜息をついたラビの続いたセリフに俺は目を見張った。
「…………だけどどっちみち、これだけ証拠は上がってるんさ。これから此処に居られるだなんて、思ってないよね?」