「ただいま〜」
「お帰りー、神田〜、夕飯はー? お兄さん待ちくたびれちゃった」
「って何普通に人にやらせようようとしてんだよ! たまにはお前自分で…………いや…………やっぱ何でもない」

 …………うん。
 手ぇ切ってスプラッタだとか、台所が炎上だとか、そんなん見たくねぇ。
 
「マジでこれから夕飯どうする? 結構いい時間だけど」
「久しぶりに外でも出る?」
「…………三十分待てるならなんか出来るが」
「「「待つ!」」」

 …………こいつら返事はいいのな。

 昨日買った薄い豚肉を出しながら、ラビとモヤシに訊いた。

「お前らは? 料理した事ねーのか?」
「俺は無いさ」
「僕はピーかチンなら」
「いや、そんくらいなら俺達だって」
「ピー? チン?」  
 
 何だそれ、と振り返るとモヤシが肩を竦めて、

「ピーはお湯の沸く音、チンはレンジの出来上がりの音」
「よーするにお湯かレンジで暖めるレトルトの事さ」
「そりゃ出来るって言わねーよ」
「ゆで卵くらいなら出来ますよ」
「それも料理じゃねーだろ」

 今時小学生だってもうちょっとマシだぞ?

「神田は器用ですよねー」
「感心するさ」
「っつーかお前ら、母親の手伝い位しなかったのか?」




 その瞬間、

 何の気なしに俺が放った言葉に、一瞬で空気が凍り付いた。


 
 

「…………、え?」

 ラビは、笑ってるけどまるでそれは貼り付けたみたいな不自然なそれで、
 モヤシは、およそ表情らしい表情が無い。

 …………何だよ、これ!?

 突如変わった空気に、俺まで釣られて凍り付く。 
 …………地雷を踏んだ、って事は分かった。
 だけど、何が「そう」だったのかまでは分からない。
 息さえ出来ないような息苦しさの中に、俺が何か言葉にしようとしてはそれに失敗していると、

「あー、はいはい。ところでさ」

 ティキが、手を叩いた。
 その音に反応して、凍り付いた空気が緩む。

「神田、皿どこに並べればいい?」
「あ、ああ…………その辺に…………」

 強引な調子で喋るティキに救われた思いで、俺は即座に応じた。

「おいおいお前らも手伝ってやれよ、包丁と火使わないもの限定で」
「俺達はガキじゃないさ!」

 ティキの軽口にラビが応え、何とか空気がまともに戻る。

「とりあえず、此れこっちに運ぶよ、いい?」
「…………ああ」


 奴等が皿やら箸やらを並べている最中、俺は見た。 
 
 まるでティキが慰めるみたいに、ラビとモヤシの頭を撫でてたのを――――――………… 

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