「え、何アレマジなの?」(小声)
「マジ、絶対マジだって! 本気の目だよ!」(小声)
「間違いなく童貞処女ですよね」(小声)
「あんなに美人なのに!? 何で周りがほっといたの!?」(小声)
「今時、十八にもなって? おいおいおい何処の箱入り?」(小声)

「…………おい?」
「…………ユウが気にするような事じゃないさ!!」

 俺は無理矢理爽やかな笑顔で終了させようとしたが、ユウは納得できないのか眉根を寄せて、俺達をじっと見ていた。
 しかし俺達は目配せし合いながら、「いいか? 絶対喋るなよ!?」と互いに圧力を掛け合う。

「…………もういい。ならティキに聞く」
「「「「!!!!!」」」」

 俺達は、盛大に息を呑んだ。
 …………ティキといえばそもそも、男でも女でも美人なら何でもOKな、ある意味俺達なんかよりよっぽど性質の悪い遊び人だ。
 …………ユウが、わざわざそんな事聞きに行ったら!!

「駄目だ、どこぞのAVに出てくる親父みたいに実地で教えてあげるよとか言い出すぜ!?」(小声)
「喰われるね! 絶対!!」(小声)
「ああああ駄目駄目駄目っ! 俺達兄弟なんさよ!?」(小声)
「そんな事あの兄貴に関係ねぇよ!」(小声)

「っ、ユウ!! 駄目さ!!」
「お前らが教えねぇんならしょうがねぇだろ」

 俺が慌てて止めようにも、どうやらユウは臍を曲げてしまったらしい。
 …………っこの強情さん!!

 そこに、アレンが溜息を付いて口を開いた。

「神田、あのですね。騎乗位ってのは…………」
「「「!?」」」

 何言おうとしてんのさアレン!!

「ほら、競馬ってあるでしょう? あの時見たいな格好ですよ」
「…………競馬?」
  
 ユウが、んん? という顔をした。

「ああ、馬に乗る、あのなんか中腰で前屈みみたいな格好か」
「そうそう、それですよ」

 …………あれ、誤魔化すつもりなんさ?

「じゃあ、せいじょういってのは何なんだ?」
「ほら、普通に乗馬するときってしっかり鞍の上に座るじゃないですか。アレですよ」
「…………ああ、たいいって馬に乗る時の姿勢のことなのか?」 
「ええ、そうです」

 笑顔で、しらっと言うアレン。

(((全然違う!!!)))
 
 俺達の心の声は、見事な程に重なった。

「…………俺、乗馬なんかした事ねぇぞ?」
「この学校では初等部から体育の授業でありますから、全員が経験者ですからねぇ。乗馬部も部活であるくらいですし」

 …………ユウはその説明で納得したらしい。何で納得するのか良く分からないけど。
 
「俺は乗馬した事ないから、好きな姿勢とか言われてもねぇよ」

 …………わざわざジャスデビに、そう申告した。

「そ、そっか!」
「…………未経験って書いてもいいと思う?」
「駄目だろ…………」

 ジャスデビも額の汗を拭いながらアレンの嘘に合わせるつもりらしい。
 アレンが、ユウの視界の外から親指をビッ、と立てた。
 俺達もそれに万感の思いを籠めて頷く。

(((アレン、GJ!!))

「そう言えば、結局お披露目会って何だ…………?」
「あ、忘れてた」

 どうやってユウの、子供の「赤ちゃんは何処から来るの?」並みに答えづらい質問に答えようか悩んでたらそんな事すっかり忘れてた。

「会の進行は、学校長がユウの紹介して、ユウも挨拶してって感じさね」
「終わった後に所属クラスと十字会メンバーとの簡単なお茶会みたいなのもありますよ」
「…………」
「ユウ、そんなにメンドくさそうな顔しないでよ」
「…………全校に紹介だとか、お茶会だとか…………この学校は訳分かんねぇな…………」

 ユウはぶつぶつと文句を言う。 
  
「まぁまぁ。転入生は皆やるんですから」
「滅多にいないけどね」
「そうなのか?」
「うん、多分三年前に一人、一年に編入生があったくらいで…………」

 さり気無くジャスデビは俺達と同じように席に座って、中央においてある茶菓子(アレンの私物)に手を伸ばした。
 その手をぺしっ、と払いのけながらアレンも続ける。

「ほら、やっぱこの学校って変わってるじゃないですか。外から途中から来ると馴染めなくて大変でしょう? 生徒の実に九割以上が初等部、あ、初等部ってのは小学校のことですけどね、そこからの持ち上がりなんですよ。それでも初等部への編入とか、或いは中等部や高等部への進級時に入学してくるってのは結構あるみたいですけど」
「へぇ…………」

 ユウが感心したような、呆れてるような、そんな微妙な声を上げた。

 ――――――そしてそこで下らない言い争いをしたり、ご飯を食べに行ったりしている内に、遂には午後になった。

37へ
35へ

beautiful daysトップへ  



小説頁へ