「ユウ、言ったとおり詰襟の方は持ってきてるよね?」
「ああ」

 何故かブレザーと詰襟、二種類あるこの学校の制服の上着。
 何でもブレザーは普段用、詰襟は入学式や卒業式、終始業式などの儀式用らしい。…………分ける事自体、無駄だと思った。
 しかし俺がそう言うと、

『っていうか此処の生徒で、制服一枚増えたくらいで困るような家庭の子はいないと思うさ』
『そうそう、確か詰襟一枚、十五万でしたっけ?』
『だろ? な、別に大したことないだろ?』
『意外に安かったよね! ヒヒッ!!』

 …………と金持ち的な発言をかまされたので、ちょっと殴った。…………ちっ、ボンボン共め!

 部屋の隅で俺は手早くブレザーを脱いで詰襟に着替えた。流石にサイズ合わせまでしただけあって、ぴったりだ。
 モヤシとジャスデビは会場準備の確認だとかで、先に講堂に行っている。

「じゃ、俺らも行こっか」

 俺はラビに続いて、十字会室を出た。









「…………すげ、」

 講堂は、やたら広かった。下手すれば前の学校の体育館と同じかそれ以上だ。
 四階まで吹き抜けになっていて、一階にはステージがある。
 どうやら今回は一階しか使わないらしく、ステージ前には丸いテーブルと椅子が大量にあった。しかし全員分はないのか何故か一年は壁際に立っての立ち見らしい。座っているのは三年と、二年。…………と思ったらそこにモヤシもさり気無く混ざっていた。…………やっぱ生徒会の奴だからって事か?
 
 ラビが先に立って講堂の中に入ると、歓声が響いた。

「ラビ様ーっ!!」
「「「「きゃーっ!!!!」」」」

 しかも一人二人じゃねぇし…………。
 ラビはそれらに笑顔で軽く片手を上げて答えた。
 俺達は二人壁際を通って中央のステージの近くへ進む。その脇に席があり、俺達はそこに座った。
 
「全学年の生徒、揃いました」
「じゃ、始めて」

 …………十字会、という腕章を付けた一人がラビに耳打ちするとラビは頷いた。
 そいつは軽く頷いて、さらにステージの向こう側にいた奴に合図した。
 するとそいつが立ち上がり、ステージの上に上った。

「では、これよりお披露目会を執り行います」

 ――――――そう宣言すると、拍手が会場から湧き上がった。

「まずは、学校長より編入生神田ユウ氏についてご紹介致します」




 

 



 学校長は当たり障り無く、簡単に名前と所属クラスの発表だけして直ぐに壇上から降りた。

「じゃ、ユウ行って」
「…………、」

 何言えと?
 よく考えなくても、リハーサルも無ければそもそも何を言うかすら考えてなかった。

 …………くそ、知るか!!

 俺は半ばヤケになって、足音荒く壇上に上がった。
 真ん中にあるマイクを掴んで、素っ気無く言い捨てるように、

「…………3−A編入生の神田だ。よろしく頼む」

 およそよろしく、と言葉の似つかわしくない態度だというのは自分が一番分かっている。
 事実最前列の三年が、ポカンとした顔でこっちみてるしな。

「あー…………」

 …………モヤシが、席で頭を抱えていた。
 で、俺は戻っていいのか? いいのかこれ?

「はいはいはいはい、ちょっとごめん、ユウそれ貸して」

 見兼ねたのか、ラビが壇上に上がってきて、俺からマイクを奪った。
 別に欲しくもなんともないので俺も大人しく手を離す。

「…………はい、皆今日はわざわざご苦労さーん」
「「「「「ラビ様ー!!!!!」」」」」

 …………大歓声…………。
 
 ラビは、しっかりと自分に注目を集めてから――――――突然俺の腰に手をやって、俺の身体を引き寄せた! 
 バランスを崩した俺はラビに倒れ掛かるような格好になるも、ラビに抱きとめられてそのままの姿勢だ。

「うわっ、何しやが、」
「「「「「きゃああああああっ!!!!」」」」」
「「「「「いやぁぁぁっ!!」」」」」」

 俺が何か抗議する前に、生徒達の悲鳴が上がる。

 う、うるせぇ…………!

 抗議しようと仰ぎ見た先で、ラビが、ちら、とモヤシの方を見た。
 
「…………」

 モヤシが小さく頷いて、何故かステージ横の階段から上がって壇上に来た。
 そのまま俺の隣に立って、何故か俺の手を握る。

「「「「「えええええっ、アレン君っ!?」」」」」

 ――――――今度は最前列の三年まで、騒ぎ出した。
 
 あー、もう五月蝿ぇったらありゃしねぇ!!

 と、モヤシがにっこり笑って俺を見た。
 そしてわざわざ、全員に聞こえるように、あえてマイクが音を拾うようにと大きな声で言い放った。

「――――――もう、兄さんてば口下手なんですね」
「あ?」

 兄さん、て。
 いやそりゃ兄貴だけど。兄貴だろうけど。
 ――――――なんで態々、そんな呼び方…………

「「「「――――――え?」」」」
「ア、アレン君っ!?」
「え、兄さんて…………」
「あの人、アレン君のお兄様なのっ!?」

 突然講堂の中が、一気に騒がしくなった。

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