「お帰り、遅かったねユウ。クロスには会えた? …………って、クロス!?」

 俺が台所に戻ると、ラビとモヤシはレタスを全て洗い終え(何せモヤシの所為で凄い量なのだ)、こんもりとサラダ用の大皿にのせていた所だった。

「師匠? 珍しいですねこっちに来るなんて…………」
「…………何をやってるんだ、お前らは」

 呆れ半分、驚き半分といった顔で父上は二人とその背後のレタスを見ている。
 …………そりゃそうだよな、あの量じゃ。

「手伝いさ!」「手伝いです!!」
 
 …………およそ高校生にもなった男が胸を張って言うような台詞でもないな。

 俺は椅子に掛けておいたエプロンをしなおして、鍋の中を覗き込んだ。…………よし、減ってない。
 少しばかり温くなっただろうから、再度火を入れなおす。

「ティキは何時ごろ戻るんだ?」
「もうじきさ、講義五限までって言ってたから。後十分十五分くらいさね」
「待つんですか? 食べちゃ駄目ですか??」
「駄目だ」

 人のエプロンを引っ張りながら言うモヤシの頭を軽く小突いた。
 数時間ならともかく数分位待てっつーんだ。

「…………、」

 父上が俺達を交互に見た。

「?」
「…………面白い事やってんな、お前は」

 言ってから、椅子一つにどっかり腰掛ける。

「俺にも寄越せ」
「えー? 師匠の分数に含まれてないんですけどー」
「…………お前こんなにあるのに文句言う気か」

 大鍋三つだぞ三つ。炊き出し訓練並だ。
  
「ラビ、もう一セット食器出しといてくれ」
「アイサー」

 小皿にとって、味を見る。…………少し薄めだったか?
 何か足そうか考えていると、いつの間にか背後にいた父上が小皿を取った。

「え?」
「…………、味が薄い」

 文句言うな! 俺も思ったけどな。

「…………だが、旨いな」
「…………え、」

 結局どっちなんだ、と俺は眉根を寄せる。
 と、唖然としながら俺達を見つめているラビとモヤシの二人と目が合った。

「…………って神田!! 抵抗してください少しは!!」

 …………モヤシが何故か抗議してきた。

「って、何に?」
「貴方今後ろから抱き着かれてるんですよ!?」 

 そうなのか?

 上を仰ぐと、頭一個分デカい父上と目が合った。…………くそ、俺は簡単に腕に収まるサイズかよ…………! 

「別に…………それがどうした?」
「「…………」」

 俺がそう答えるとラビとモヤシは顔を見合わせ、俺達を見、また見合わせた。

「え? ユウ、ハグされるの嫌なんじゃないの?」
「最初の時、ティキ殴ってたじゃないですか」
「そりゃベタベタすんのは元から好きじゃねぇけど…………あの時は揚げ物揚げてたんだぞ? 危ないだろ。しかもあいつ、何の嫌がらせか知らないが人の首筋舐めるわズボンの中に手ぇ突っ込もうとするわ、碌な事しねぇ」
「「「…………」」」

 …………? 何で此処で黙る?

「つかあいつ、めっちゃヤる気だったんじゃん! やっぱ血縁なんて関係無いって思ってるんさね!?」
「危険ですよ危険!!」
「…………アレン、」
「…………あとでちょっとシメときましょう」
「…………育て方を間違えたか…………」

 …………何をシメるんだ?
 突然気炎を上げ始める二人に首を捻っていた俺は、シチューが沸騰しかけたので慌てて弱火に落とした。

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