「此処は東西南北の各館に別れてるんさ。南が今俺達がいた応接室や客用の寝室がある、来客とかに使われる館。で、西がクロスの私室、 東が俺達の私室とあと使われてないけどキッチンとかダイニングがある」
「…………使われてない?」
「誰も料理なんてしないんさ。大体皆それぞれ勝手に食いに行ったりケータリングで取り寄せたりしてる。食事は自分で調達、これが此処 の鉄則さね」
「…………」
「因みに食事は用意されないけど掃除は毎日通いの人がやってくれるから気にしないで大丈夫。洗濯もバスルーム備え付けの籠に入れとけば洗ってクローゼットに仕舞っといてくれるから」
そりゃまた随分と豪勢な話だ。親子二人、慎ましく暮らしてきた俺には理解しがたい。
「で、北は特に使われてない。…………入っちゃいけないって訳じゃないけど、西と北はあんま行かない方がいいさ」
「何故?」
「北は…………ま、色々。西は全館丸ごとクロスの私室だから、よく裸のおねーさんと遭遇する」
「行かないようにする」
俺が間髪入れずに返すとラビは笑った。
会話しているうちに東の館とやらに辿り着いた。
そこは先程の南の館よりは若干小さいようだったが、しかしそれでも三階までの吹き抜けの、これまた豪華な造りだった。
左右対称な階段をラビの先導で上りながら(何で階段が二つもあるんだ)、俺は続く説明を受けていた。
「一階がダイニングとキッチン、二階が俺達の部屋。三階がバスルームとか洗面スペースとか…………でも各部屋にも小さいの付いてるから、三階のはやっぱみんな使わんけど使いたかったどーぞ」
そう言いながら二階の廊下を歩く。
なから予想していた通り、やたらと広かった。ホテルだってこうは広くないだろう。
「此処には全部で六部屋あって、人が入ってるのは三部屋だから残り三部屋だけど特にこだわりないさね?」
「あ、ああ」
「じゃ、予定通り…………此処。はい、鍵」
俺に示されたのは、右側の階段側から数えて四部屋目の部屋だった。
「因みに通り過ぎてきた一番手前がティキ、その次がアレン、此処の隣の部屋が俺さ。…………入ってみて、何かあったら呼んで?」
渡されたのは小さな金色の鍵だ。
それを渡すと、ラビはじゃあね、と手を振り俺の隣の部屋に入っていく。
「…………、」
一人になった俺は、一瞬躊躇ってから部屋の鍵口に鍵を差し込んだ。
かちり、と音がしてドアノブが回るようになり、俺はそのまま押して部屋に入った。