あーもーあいつらっ!!
あんなケダモノが隣にいたらユウが危ないさっ!
二階への階段を駆け上がった俺は、ユウの部屋の前室をノック無しに開けて、更に寝室の扉をガンガン叩いた。
「ユウー!! 入るよ!!」
「あ?」
中からユウの声が返ってくる。
「ユウっ!! あいつら危な…………い…………」
危ないから、気をつけて。
そう言おうと思ってた。
だけど、目の前の光景に頭が真っ白になる。
ユウは、まだ髪から水滴を滴らせたまま、腰にタオル一枚巻いただけの姿でそこにいた。
東洋人の僅かに象牙色の掛かった、それでも尚透き通る白い肌。濡れている為にいつもより艶の増している漆黒の髪がその白さを尚引き立てる。
腰が細くて、足が長い。この華奢な体の何処に、大柄な男を叩き伏せるだけの力があるんだろう?
…………胸の黒い不思議な模様は、タトゥーなんだろうか?
思わず、ごくりと生唾を飲み込んだ。
「おい、ラビ。今何か…………?」
…………素直に言えば見惚れていた俺は、ユウの声にはっ、とする。
「ユっ、ユウ!! 何て破廉恥な格好してるんさ!?」
「…………破廉恥?」
ユウが不服そうに眉根を寄せた。
「野郎の風呂上りの何が破廉恥だ。大体此処には女もいねーだろ」
…………女の子がいなきゃいいって問題でもないさ!! むしろもっとタチ悪いのがわんさかいるのに!!
「はっ、早く服着るさ!!」
「その服取りに来てるんだよ」
どこ置いたっけな、と呟きながらユウがそのままの姿でうろうろする。
ああっ、やめてっ! その今にも全裸になりそうな、っていうかほぼ全裸の格好で俺の目の前うろうろすんのはっ!!
「…………〜っ、ユウ、服ってこれじゃない!?」
「あ、それだ」
俺はユウから視線を逸らそうと必死になって部屋の方へと視線を向けると、丁度良く、ベッドのサイドテーブルの上に畳まれた服が視界に入った。
「早く着替えて!!」
「うわ、」
俺はサイドテーブルに走ると、その服をすぐさま引っ掴んで、なるべくユウを見ないようにしながらその服を押し付ける。
「うわ、馬鹿、押すなっ…………! うわ!!」
「えっ!? うわ!」
ボスッ
俺達二人は、折り重なるようにしてベッドの上に倒れこんだ。
…………解説しよう。俺がユウの後ろを見ずにユウを押したから、ユウはベッドに脚を取られてベッドに背中から倒れこんだ。
そして正面にいた俺は、倒れたユウの脚に引っかかって、ユウの上に倒れこんだ訳さ。とは言え何とかユウの顔のすぐ横辺りのベッドの上に手をついたから、直撃は回避できたけどね!
…………けどね! じゃねぇぇぇぇっ!!!
考えようによらなくても、これはまるで…………押し倒したみたいな…………ていうかそのもの? さ!
…………衝撃にびっくりしたのか堅く目を瞑っているユウの顔が、物凄く近い。
どく、ん。
いやいやいや落ち着け俺! 落ち着け俺ぇぇぇぇぇ!!
ここでおっ勃てたら俺もケダモノの仲間入りさ!!!
「っつ…………」
「ご、ごめんユウ! どっかぶつけた!?」
「大丈夫だ…………が、てめぇ重いんだよ! さっさと退け!!」
「あ、うんごめ…………っ!」
…………っ!?
上半身の直撃は回避したけど、下半身はそうもいかなかった。
俺の布越しに触れる感触が、どうもタオルのものじゃ、ない?
「ユウ…………タオルは…………?」
「あ…………? 落ちたか?」
――――――っ!!
「うわ、ごめ、ちょっと待って!!」
「あ? 何がだよさっさと退けよ!!」
ユウが重いと嫌がって暴れる。
だけど此処で放してユウが起き上がったら、その時は…………ユウは本当に生まれたまんまの姿って事で…………
…………。
…………見ちゃったら最後、俺の理性飛ぶかも…………
って俺もそっち? そっちのケダモノなんさ!?
「重いんだよてめぇ! 早く退け!!」
「わー、わーわーわー!!! 駄目、駄目だってユウ!!」
暴れないで、脚に当るっ…………!
「ちょ、待っ…………!」
理性、が…………!
ガチャッ!
その瞬間だった。部屋のドアがノックも無しに乱暴に開かれたのは。
「入りますよ、神…………田…………」
「「「……………………」」」
ブチッ
…………誰かの、何かが、キれた。
その音にとりあえず最初に悟ったのは「ああ俺殺されるだろうな」という事。
「何やってんですかそこ――――――!!!」
「「「この発情兎――――――!!!」」」
怒号が、部屋の中に響き渡った。