「おいこら、いい加減にしねぇと殴るぞ!?」
何してんだよこの野郎は!!
俺が逃げられないようにか、俺の上に乗っかって体重かけてきやがった! 重いんだよ馬鹿兎!
「…………ユウ、」
「放せ…………っ!?」
思わずぎょっとする。
奴と俺の顔が、やたら近い。
暗がりの中での、外の落雷の微かな光に照らされた翠は―――――――酷く空ろな色を湛えていた。
その色に、一瞬息を呑んで硬直する。
「―――――――!」
「ねぇ、ユウお願い。このまま黙って―――――――俺に抱かれて?」
「…………はあ?」
抱くって…………
…………?
何がしたいんだこいつ?
「溺れたら―――――――全部聞こえなくなるかな」
「…………?」
ガラガラガラッ!!
「!!」
また落雷だ、しかも今度はかなり近い。
一瞬ラビから意識を逸らし、また戻すと―――――――
ラビは何かに耐えるような表情で、唇を噛んでいた。
…………こいつ、もしかして…………
「お前、雷が怖いのか?」
「…………え、」
驚いたように顔を上げるラビに、思わず溜息をついて。
「ったく…………おら、来い」
言いながらラビの腕を引いて、頭を引き寄せた。
胸にラビの頭を抱え込んで望み通り抱いてやる。いや、あいつは「抱かれろ」っつってたから本来逆か? どうでもいいか。
「こうしてりゃ聞こえねぇだろ」
十八にもなって…………と思わなくも無いが、俺も子供の頃大層怖かった記憶が無いわけじゃない。いつの間にか全く気にしないようになったがまぁ駄目な奴はいつまでも駄目なんだろう。
「寝ちまえ、何も聞かなくて済む」
「ユウ、」
「あんだよ」
「…………何でもないさ、あーあ。毒気抜かれちゃった」
「?」
「じゃ、お言葉に甘えて…………一緒に寝かせて?」
?
何だ?
…………まぁいっか。
俺はラビの頭を抱いたまま、静かに目を閉じた。
いつの間にか、雷鳴も雨音も、何一つ耳に届かなくなり―――――――
俺達は静かなまどろみの中に落ちていった。
「…………ん、」
ピチチチ…………
鳥の声が聞こえる。
カーテンの隙間から、陽光が差し込んでいる。どうやら雨は上がったらしい。
見上げた天井がいつものと少し違うのは、…………此処が俺の部屋じゃないからだ。
「、」
いつの間にか。
ラビを抱いて眠った筈なのに、逆に抱かれているというおかしな事態になっていた。
…………あんま動いたら起こすよな…………。
つか、こいつも大概胸板厚いな…………。
人種的なものもあるとはいえ、同世代としては気になって仕方無い点だ。
…………やっぱもうちょっと鍛えるか…………
…………。
…………………。
………………………。
そろそろ起きねぇと、朝飯作れないんだが。
身体を離そうにも、意外なまでに奴の腕は俺を強く捉えていて、離せない。
…………どうするか…………
「ん…………、ユウ、…………」
「何だ?」
「…………」
なんだ、寝言か。
…………仕方ない。
「おい、起きろ」
「んぅ?」
「起きろラビ!!」
少々乱暴に胸元を引っつかんで揺さぶる。と、ラビがゆっくりと翠の目を見開いた。