後悔後先なんとやらってのはこう言う時に使うんだろう…………。
「うわ何だこれ!? 何に刺されたんだ!?」
朝、ユウの様子を見に行って(本人もう大丈夫とか言ってたけど、いつもの時間に起きれてない時点でまだ駄目なんだと思う。引き続き部屋の中で軟禁が満場一致で決定した)そこで俺達が眼にしたもの。
それは首筋から胸元にかけてまで、いくつもの紅い跡を散らしたユウの姿、だった。
俺達が驚いて指摘した為に鏡でそれを見たユウがびっくりした顔で鏡の中の自分の姿を確認している。
「「「…………」」」
ギギギ、と音を立てるような不自然な動きで俺達三人(因みに俺と、ティキと、クロスの事だ)の視線がユウの膝の上に突っ伏して眠っているアレンに注がれる。
こ、こいつ…………!!
抜け駆けとかそういうレベルじゃないさ!! これ!!
「おいこら、起きやがれ」
ゴンッ
クロスの拳がアレンの頭に振りおろされた。
中々痛そうな音が立ったさ…………。
「いだっ! …………もー、何ですか? 乱暴ですね…………」
頭をさすりながらアレンが顔を起こす。
むしろお前が何さ。
「…………あれはどういう事だ?」
「あれ? …………ああ、言っておきますけどヤッてませんよ? 寝てる隙にキスマーク付けただけですよ?」
ベシッ
俺とティキの非常の息のあった平手が同時にアレンの頭を引っぱたく。
そーいう問題じゃ、無い! っていうか当たり前さ!!
「いたっ!! もー、何ですか二人まで!!」
「いや、つーか」
「お前が何やってんだ?」
殴られたアレンは不服そうな顔で俺達を睨み上げる。が、俺達も怒ってるので怖くない。
「もー、皆乱暴なんですから…………」
「「「お前が言うな」」」
俺達の言葉が綺麗にハモった。
家の中で二番目に乱暴で手が早いアレンが言っていい台詞じゃない。因みに一番は推して知るべき、だ。
尚もキャンキャン喚くアレンを取り囲んで、俺は溜息をついた。
ぶっ倒れてから二日経ち、俺達は通学の車内にいた。
久しぶりの学校だ。未だに進路も決まってない身で我ながら悠長な事をしてしまったもんだ。
家の奴等が家から…………っつーか、部屋に俺を閉じ込めやがった所為だが。
「おはよう神田君、体調が優れなかったと聞いたけど大丈夫かい?」
「おはようございますっ、もうお風邪は大丈夫なんですか?」
登校するなり昇降口近くでいつも通りラビとモヤシがファン? とやらに引っ掛かり、俺もそのついでにか何人かから訊かれた。
「もう平気だ」
そう応えると奴等は嬉しそうに笑った。
―――――――? 何が嬉しいんだ?
まぁどうでもいいが…………。
「やぁやぁ神田君、お久しぶり♪」
「…………コムイ?」
続いて生徒を掻き分けて現れたのはコムイだ。頭飛びぬけてデカいから直ぐ分かった。
「こんなにお出迎え引き連れて…………モテる子は違うねぇ♪」
「もて…………?」
…………、…………? ああ、ラビとモヤシの事か。
「それより熱出してたって? もう大丈夫かい?」
「ああ。もう下がった」
「ふむ、どれどれ?」
言いながらコムイは俺に近寄ってきて少し屈んで(くそ、背が高いからって…………!)俺の額に額をくっ付けた。
「うわ、」
突然のことだったので思わず目を閉じる。びっくりさせんなよ…………
「「「「「きゃあああああっ!!!!!」」」」」
ああ、また外野が騒いでやがる…………あいつらが何かしたのか?
「………………………………うん、大丈夫そうだね」
随分長いような気がした時間を置いてからコムイが額を離す。
そのまま離れてくもんだと思いきや、僅かに放しただけで動こうとしねぇ。
ちゅ、
…………顔、近いんだ…………が…………?
「…………は?」
「「「「「―――――――っ!!!!!」」」」」
唇に湿った…………は?
「「コムイ(先生)―――――――!!」」
「!!」
「ユウに何してるんさ!!」
「そういうの止めてくださいっていったでしょう!?」
いや何、つか、今俺何され…………た…………?
ギャーギャー喚きだす紅白コンビと、悪びれずに笑うコムイと、顔を紅くして(お前等も風邪か?)騒ぐ外野の奴等。
全てから取り残され、俺は一人途方にくれた。