一家の朝は、騒がしい。
「んにゅ…………むー…………」
「くー…………すぴー…………」
「ぐぁー…………」
遮光性能の大変よろしいカーテンに阻まれ日光は部屋の中には届かない。
朝だと言うのが嘘のように暗い部屋の中、ベッドの上でタオルケットに包まって眠るのは紅い髪の青年と、紅い髪と白い髪の幼児二人だ。三人とも天下泰平、という顔で眠っている。
そこに、
バタバタバタッ
バンッ!!
「てめーらっ! 何時まで寝てやがる!?」
眠りを妨げる、妨害者が現れた。
「ラビ! ちび着替えさせろ!!」
「へーい」
「アレン、こっち来い!!」
「はーい」
「ちびは起き…………なくていいか。やっぱり」
一家の稼ぎ頭にして主婦もこなす万能選手、神田がてきぱきと家族に指示を出す。
「ほら、顔洗ってしゃきっとしろアレン」
「冷た、」
「その方が目ぇ覚めるだろ」
アレンの顔を拭いてやり、着替えるように言い含めてからキッチンに取って返す。
沸騰しかけた味噌汁の火を慌てて落とし、ついでにグリルの中の魚の様子を確認する。その手際は熟練の主婦の如し、手馴れた物だ。
「ちーび、起きるさー。顔洗うよー」
その後ろを、まだ三歳になったばかりの小さな子供を抱きかかえながらラビが通り過ぎて行く。
各々の茶碗にご飯と味噌汁をよそって、焼いた魚を並べ。
サラダはボールのままでドン、とテーブルの中央に置いた。
「神田ぁ、お腹空きましたー」
「もうちょっとで来るから待ってろ。牛乳とオレンジジュース、どっちにするか?」
「牛乳がいいです」
一番大きな茶碗が置いてある席に、よいしょ、とアレンがよじ登った。
とぽとぽと注がれた大きなグラスの牛乳に、手を伸ばしてミル○ークを取って混ぜる。
「お前それ好きだな…………」
「美味しいんですもん」
食べる量は大人並みなのに味覚は子供。
それがアレン・ウォーカー(居候・五歳児)なのだった。
「お待たせー」
「んー…………」
ラビと、そのラビに抱えられているラビ――――――同名で紛らわしいので大体仔ラビやらちびやらジュニアやらと呼ばれている――――――が席に着く。
「「「いただきます」」」「いたーきます」
「今日はちょっと惜しい感じさね。ちび、「いただきます」さぁ」
「?」
「まぁいっか。ちび、何飲む?」
「あまあまのー」
「甘いの、茶色のとピンクのと、どっちにしますか? ジュニア」
「ぴんく!」
この兄弟はミル○ークがマイブームらしい。
「ラビ、お前は緑茶でいいか?」
「あ、うん。ありがとユウ」
子供が二人も居れば朝食の席が騒がしくなるのも当然のこと。
アレンが作ってやったいちごミル○ーク入り牛乳にジュニアも歓声を上げている。
「今夜遅番だから、後は頼んだぞ」
「了ー解っ」
「アレン、ちび。今日はラビが迎えに来るからな」
「えー」「はーい」
「アレン、えーって何さえーって」
むにー。
生意気発言をラビによって、頬を引っ張る「おもちの刑」に処されたアレンが抗議の声を上げた。
「痛い! 引っ張んないでください!」
きゃあきゃあと騒ぎながら、朝一番の第一陣は終わるのだった。