「じゃあ行って来る」
「いってらっしゃい」
朝七時半。
ラビの見送りの元、出勤する神田に伴われ、アレンとジュニアも同時に登園する。行く先はどうせ同じだ。
所謂ママチャリの、後ろの籠にアレンを。前の籠にジュニアを。
いかに一人ずつは軽量とはいえ、毎朝この二人を抱え、保育園までの坂道を走っていく神田は流石に体力勝負な職に就いているだけあった。
手を振るラビを尻目に神田が漕ぎ出せば、アシスト付きでもないのに実に軽快に自転車は動き出す。
「ねぇねぇ神田」
「何だ?」
「今日のおやつと給食はなんですか?」
「…………お前そればっかりだな;」
自転車走るよ何処までも。
家から保育園までは自転車でおよそ二十分。
内、十五分は坂道(上り坂)である。
車か、原付でも使えばいいのだが――――――
――――――いかんせん、原付免許に三回落ちた神田にはそれは禁句なのだった。
「おはよう」
「お、おはよう」
保育園に付けば、既に早番の保父母が準備を始めていた。
「おはようございます、ティキ先生」
「はよーござます、てんてー」
「うんうん、おはよう。二人とも。今日も一番のりだな」
…………年長組担当、ティキ先生にアレンとジュニアはご挨拶。
「じゃあ俺達は朝礼だから、二人は遊んでてな」
そう言われ、アレンとジュニアは仲良く手を繋いで園庭へと駆け出していった。
一方。
「さーて、やるかぁ」
家族三人が出かけた後の家の始末――――――掃除・洗濯・食器洗いはラビの仕事だ。
基本的に篭りがちな仕事なので、家事をするのには困らない。
お気に入りの曲ばかりいれたウォークマンを掛けながら、脱ぎ散らかされたパジャマとシーツを回収し、洗濯機に放り込む。スイッチを押したら今度は食器洗いに舞い戻る。
油汚れを落として、後は食器洗浄機に任せてさぁ次は、と掃除を始めた。
「あーもう、アレンの奴…………スナック菓子食うのはいいけど散らかすなよ;」
リビングのテレビ周辺に散らばった黄色いスナック菓子の破片に渋い顔をしながらラビはそれらを掃除機で吸い込む。
「げ、これ…………ちびさ? 絶対ちびさ!?」
ついでに溶けかけたソファーの、座る部分と背凭れの部分との間に押し込まれ? ていたチョコレートを慌てて回収した。
宝探しかい、と文句を言いながらも掃除を続け、
「あー、すっきりした…………」
昨日も掃除したのに何故にこうも部屋は汚れ行くのか。
それがお子様を抱えた家の定めなのだが、思わず遠い目になってしまうのもしょうがない、そんなラビの午前八時だった。
朝の陣、これにて終幕。