神田が帰りが八時を過ぎる遅番、又は養護院に泊り込みになる夜勤の日は、アレンとジュニアはラビに迎えに来てもらう。
その足でスーパーへ向かい、夕食の材料を買い込み家で食事を作る。
そして皆で神田の帰りを待つのだ。
「はいはいはい、テレビは後ー。先風呂入るさ!」
「「えぇー」」
「不満そうな顔しないの。ほらほら、入るさ!」
まるで牧羊犬かなにかのように、ラビがアレンとジュニアを追い立てる。
お気に入りの番組から引き離された二人は不満そうな顔だが構うこっちゃない。
神田の帰宅までに風呂を済ませておかないと、何時まで起きているつもりだと怒られるのだ。
入るのは嫌がる割には入ってしまえばお風呂大好きな子供達を洗ってやり、逆に今度は早く出るよう急かす。
「のぼせちゃうさ、そろそろ出るさ?」
「えー?」「やー…………」
一々邪魔をされてぷくー、と頬を膨らませた二人を掴んで風呂から上がる。
ラビがまずはと二人をバスタオルで包んで、自分も手早く身体を拭いていると。
「「どーんっ!!」」
「うぉっ!?」
突如、背後から軽い…………いや、結構重い衝撃がラビを襲った。30キロに満たない子供二人とはいえ、油断している所に二人分のタックルを貰えばバランスを崩す。
転倒は辛くも回避したが、洗濯機とキスする羽目になったラビが、
「おーまーえーらー?」
「「きゃー!!」」
振り向くと、悪戯が成功したことに歓声を上げながら二人がバスタオルを放り出して逃げ回る。
突如全裸で鬼ごっこが始まった。
「こーら! 服着るさ! アレン! ちびー!」
キッチン、リビングと縦横無尽に駆け巡る二人は中々捕獲が難しい。
が、しかし。
ガチャ
「ただい…………ま…………」
神田が姿を現すと、二人は同時に神田に飛びついた。
「神田ー!」「まぁまー!」
「…………。…………何素っ裸で走り回ってんだお前ら。風邪引くだろ? 早く服着ろ」
「「はぁーい」」
神田の言う事は素直に聞き入れる二人。
…………ラビは舐められっぱなしである。
「…………お前もそれしまっとけ」
呆れた眼差しで、こちらも全裸なラビをちらりと見る。
子供達とは違い「可愛らしい」とは言えないサイズだ。色々な物が。
「…………いやん、ユウちゃんのえっちv」
「…………」
「…………ごめんなさい;」
無言の冷ややかな視線を喰らい、ラビは慌てて白旗を揚げた。
「にしても、遅かったね」
「ああ。保護者が残業だとかでな」
既に時刻は九時近い。
だが、園児が居る以上は何時であっても帰る訳にはいかない。
「ご飯、冷めちゃったかも」
「いい、勝手に暖めて食う。…………だからお前は早くそれ仕舞えっつってんだろ!!」
いつまでフリーダムでいるつもりだと神田が怒声を上げる。子供達が真似したらどうするつもりなのだろうか。
「はーい。…………じゃー、先寝かしつけてるね」
「ああ」
隣の部屋に姿を消したラビが、アレンとジュニアに寝るよう促す声を聞きながら、神田は実に十二時間以上ぶりになる我が家でようやく安堵の溜息をついた。