…………予想はしていたんだが。
俺は、教室の窓際の最前列で溜息を付いた。
私立黒教学園高等部。
この学園では最終学年に進級すると希望進路別にまずは理数系文系に別れ、更に其の中で成績順に三クラスに分けるというシステムを取っている。AからFまでの六クラスだが、実際は此処にもう一クラス加わっている。
Gクラス・別名問題児クラス、一応建前は文系最下位クラスだ。著しい学業不振者とスポーツ推薦狙い組ばかりの、俺の在籍する事になったクラスの事だが。
いや、まぁ、薄々予想はしていた。
二年の学年末試験で担任も頭を抱えてたしな…………。
「…………」
はぁ、と思わず溜息が零れた。
今此処にいるというのは間違いなく自分の所為なのだが、これはなかなか堪える。
自然机の上で手を組んで視線を落としていると、
「おい…………あれ神田だろ…………」
「あいつもここかよ…………」
「まぁ部活特待生だろ? 当然じゃねぇか?」
遠巻きに野郎共がヒソヒソと話し合う。
…………悪かったな! 此処にいて!!
元々女子生徒の少ないこの学校。
二年まで一緒だった女子の同級生は皆文系のトップクラスか理数系のクラスに入った。
俺は、実に数年振りのGクラス在籍女子という訳だ。
…………しかも一人。悪い意味で目立つのも致し方ない。
これは自分を呪わざるを得ないだろう。
俺が暗澹たる思いで溜息をついていると、教室の前のドアが開いた。
担任教師だとすぐに察し、背筋を伸ばす。
後ろの方では阿呆がまだ騒いでいる。…………せめて黙れよ…………。
しかし次の瞬間俺は絶句する事になる。
ドアが開いた瞬間此処まで漂ってくる煙草と酒の匂い。
ついで姿を現したのは、凡そ教育者らしからぬ派手な服装と容姿の男。
教室の中だというのに咥え煙草のまま、やる気なさそうな表情。
そこにいたのは黒教学園の七不思議の一つ、(何で解雇されないのか不思議な)クロス・マリアン先生だった。
「あーお前ら、ちょっと黙れ」
やる気のなさそうな声だが、教室内はすぐに静まり返った。
予想外の人物の登場に皆が皆、黙り込むしかない。
「俺がこれからこの三年G組を担当する事になったクロス・マリアンだ。受験生のクラス担任なんぞ面倒でしょうがねぇんだが」
…………いや、言うなよ。本音でもそういう事は…………
「お前ら俺に迷惑掛けねぇようお前ら自身でどうにかしろ。ちなみに俺の専攻は科学だ、文系の事もスポーツの事も知らん。各自担当教師に聞くように。以上」
…………なんでこのクラスの担任なんだ?
俺は至極全うであろう疑問を浮かべながら、用は済んだとばかりに出て行く問題教師・クロス先生の後姿を見送った。