季節は六月。
いよいよ本格的に受験期が始まるこの月に、三者面談が執り行われた。
俺は伯母さんに来て貰って、二人揃ってクロスの前に座った。
「現状、志望先は難しいですね」
「そうですか」
伯母さんは大して残念そうでも無くあっさりと頷いた。
「まぁ無理して国立でなくてもと私は思っておりますし」
「…………本人の希望は、何が何でも国立のようですが?」
「ユウ、学費の事気にしてるの?」
伯母さんにそう聞かれて、俺は少し俯いた。
そりゃ、…………気にするだろう普通。
「全然構わないのよ? 家には貴方以外子供はいないんし、高校も結局無料だったし。勿論行きたい学校が偶々国立だったっていうなら応
援するけど」
「いっそ就職というのは?」
まだ言うかこの野郎!
「それはちょっと。…………姉に申し訳も立ちませんわ」
伯母さんがあっさり却下した。
…………俺が進学希望なのは伯母さんの希望でもあるので、当然だろう。
それから俺の成績について色々と耳が痛い話が続いて、そうして最後に。
「所で神田さん」
「はい?」
クロスが居住まいを正して伯母さんに向き直った。
いつもの破天荒振りを見ている俺としてはこんな全うな教師としての態度が気持ち悪くてしょうがない。
が、次の瞬間大真面目な顔でクロスが放った言葉は俺を凍り付かせた。
「卒業したら、姪御さんを私に下さい」
ザ・ワー○ド。
時が、止まった。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
おい、待て、今こいつ何言った!?
「なっ…………」
「…………はい? ユウを?」
「はい。卒業したら結婚させてください。責任もって幸せにしますので」
いやいやいや! 何言ってやがるんだこいつ!?
俺は人生最大のパニックに陥った。
「なっ…………な、な…………!」
怒鳴りたいのに言葉が言葉にならない。
俺が肩を震わせていると、
「それは本気なんですか?」
「ええ」
「じゃあいいんじゃないかしら」
…………は?
「ちょっと言葉遣いと思考が乱暴だけれど可愛い姪です。幸せにしていただけるならどうぞ」
…………な、何ぃぃぃ!?
俺は、頭の中が、全て真っ白になった。
その後どうやって家に帰ったか俺は覚えていない。
ただ「どうしてあんな事言ったんですか?」と虚ろに伯母さんに聞いた事だけは覚えている。
其れに対する伯母さんの、「あらだってあの先生格好いいじゃない☆」という衝撃的な返事も…………。