夏休み明けてすぐに運動会だ。
ちなみにその翌々週には文化祭も控えている。
…………今なら分かる。去年一昨年と、上の先輩達が何故あんなに死んだ顔をしていたのか。
――――――こちとら忙しいんだよっ!!
そう叫んで、暴れたい衝動を堪えながら――――――
「…………で、うちのクラスの…………だけど…………」
体育委員の奴が仕切って、今は運動会の種目決めの最中。
俺は連日の疲れでぼんやりと外を見ていた。
何ていったってこのクラスは男ばっかりで尚且つスポーツ推薦組ばかりなんだ。俺が出張る必要なんて何処にも無い。
無い、筈なのに。
「短距離の記録借りてきてあるんだけど、神田一番早ぇからアンカーでいいよな?」
何故 こうなる…………。
「…………。」
同級生全員の視線が俺に集中した。期待に満ちた視線が。
…………断れるわけも無く。
俺は曖昧に頷くだけにした。
「あらー、アンカーなの? 凄いわねユウ。ユウのクラスって男の子ばっかりなんでしょ?」
「…………はい」
夕食後。
伯母さんと一緒に食器を洗いながら俺は頷いた。
「ユウは運動得意だものね。姉さんと一緒で。羨ましいわぁ」
運動は全く駄目だという伯母さんは溜息をついた。
「あ、そうだ。会社休んで応援に行くわね」
ガシャンッ
俺は持っていた皿を取り落とした。
「何でですか!?」
小学生ならまだしも、高校生にもなって保護者の応援!?
そりゃ確かにたまにいるけどな!
「ちょ…………止めて下さい!」
「だって、先生にお会いしなきゃv」
しかも理由そんなのか!!
「色々打ち合わせがあるのよー?」
「何のですか!!」
寒気がする!
その後も暫く俺が説得を試みるも、伯母さんは笑っているばかりでちっとも聞き入れてくれているようには見えなかった…………。
「でもまぁ、クロスに感謝すべきところが無い訳じゃないんだよ?」
「何処がだ何がだあの元凶に!」
翌日コムイの所に愚痴りに言った俺は思わぬことを言われて速攻で反論した。
何でそこであいつが出てくる!?
「だって君のクラス、最初応援係欠席裁判で君になる予定だったんだからー」
「…………はぁ?」
「こないだ休んだでしょ? あの時のLHRで神田君が応援係に決まってたんだって。ちなみにブルマまたはミニスカ着用の」
「…………は?」
なんだそれ?
そんな話は全く…………
「ほら、Gクラス唯一の華だから。でもねー、クラスの賛成満場一致で決まってたのにそれをあとからクロスが変えさせたんだ」
「…………」
「リレーのアンカーと応援係、どっちがマシだった?」
「アンカー」
即答すると、コムイが笑った。
「でしょ? 『俺の婚約者になんつー格好させるつもりだ』って、男子生徒脅したんだってさ。愛されてるよねー」
「迷惑だっ!!」
俺が喚くと、コムイは声を上げて笑った。
運動会自体は例年通り恙無く進行した。
俺もリレーで一応、半周遅れでスタートながら一着になったので多少はクラス優勝に貢献できたかと思う。どうでもいいが。
ちなみにその頃うちの担任は、教師席で酒かっ食らって寝てた。誰かそんな奴は摘み出せよ!
後でコムイとティキ先生に聞いた所、俺の走ってたときだけ起きてたらしい。
…………見て無くてよかったのに。
バ…………もといスポーツ推薦クラスの面目躍如で何とか学年・総合共に優勝して、その発表のとき。
「良くやった」
何て言われて頭を撫でられた。それが最悪だった。
テンションが無駄に高かった同級生に囃し立てられるわ、三年の他のクラスの奴はニヤニヤしながら見てるわ、下の学年の奴らはヒソヒソ話し合ってるわ。
…………くそ。
俺は怒ってるんだ。怒ってるんだ。
だから、絶対勘違いなんだ。
褒められて満更でもなかった、なんて。
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