「…………取り合えず、立てるか?」
「…………」

 …………びっくりした。
 何かヤバそうな気配がしたから、面倒ではあったが人として見過ごすのも問題だと判断して声を掛けたらよりによって顔は知ってる奴だった。
 取り合えず放置しなくて良かった、か?

「おい…………」
「うっさい。邪魔しないでくんない?」

 …………おい。

「お前その怪我やべーだろ」
「あんたに関係ないでしょ」

 そりゃ確かだが。

 目の前で赤毛は無理矢理立ち上がろうとして…………あ、失敗してる。
 膝をついて、忌々しげに舌打ちしてる。

「無理すんな、下手すりゃ骨やられてんぞそれ」
「…………っ」
「救急車呼ぶか」
「余計な事するな!」


 バンッ


「!」

 横っ面引っ叩かれた!
 …………この野郎…………っ!

「うるせぇ怪我人! こちとら怪我人放っといていいなんて教育されてねーんだよっ! 大人しくしやがれっ!!」


 ガッ!!


「!」

 大人しくさせるために、腹を殴った。
 ら、静かになった。というか、動かなくなった。

 …………あ、あれ?
 もしかしないでも…………今とどめさしたか? 俺。

「…………」
「…………、…………、…………救急車、呼ぶか…………」

 動かない赤毛を前に、取り合えず俺は携帯を探した。






「う…………」
「…………あ、起きた?」

 腹痛い。
 腹だけじゃなくて、色んな所が痛い。

「んあ? …………コムイ?」
「全く…………何やってんだい」

 顔を動かすのは辛くて、目だけで横を見る。
 其処にいたのは、コムイだった。

「内臓には異常なし。肋骨は一本ヒビ入ってるよ」
「…………どーりで痛い訳さ。所で、何でコムイ此処に…………」
「君が着てるのは何?」

 ああ、そりゃそうか。

「…………制服」
「うちの制服はこの辺の人ならすぐそうだって分るでしょ? 君、自宅の連絡先分かる物持ってなかったから学校に連絡が来たんだ」
「…………」

 そりゃ…………ラッキーさ。

「全治二週間ね。…………面倒そうだから、校長と保護者には黙ってあるけど」
「あんがと。連絡しなくていーから」

 どうせ数年顔を合わせてないような親だ。わざわざ連絡するような事でもない。

「ねーコムイ、病院って支払いカードOK?」
「大丈夫だけどね。病院から請求書来たら親御さんびっくりすると思うけど」
「…………一々目ぇ通してないに掛ける」

 そこまで暇じゃない筈さ。

 …………と、いうか。

「ねぇ、あいつは?」
「? あいつ?」
「あの、神田とかいう転入生」
「…………? 神田君?」

 コムイが不思議そうな顔をする。

「だって救急車呼んだの、あいつさ?」
「え? そうなの?」
「そうなの、って…………」
「救急隊が着いた時には通報者らしい人はいなかったらしいよ。君、ベンチに寝かされてたみたいだけど」
「…………」

 逃げたんかい。あいつ。

「余計な事しといて…………」
「…………? まぁ、次会ったらお礼位言っときなよ」
「…………誰が。呼ばなくていいっつったのに、余計な事したんさ」
「余計じゃないでしょ、余計じゃ。その怪我だ」
「だって肋骨ヒビ入っただけなんてたいした手当てしないじゃん」
「…………そりゃそうだけどねぇ」

 押さえる位なら家でも出来る。

「まぁともかく、退院許可が下りるまでは大人しくしてる事。また明日様子見に来るからね」
「…………へいへい」



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