ユウは俺の目の前で、俺のベッドに籠城中。ベッドの中、ブランケットにしっかり包まって、首だけ出して俺を睨む。
一方の俺は下にはデニム、上は裸…………風呂上りだからだ。断じて裸族ごっこしてる訳じゃない。
俺が何をこれ程拒まれているかというと――――――
「そんなふしだらな事、絶対にしない!」
「ふしだらって…………」
つい先程、ユウの項にムラッとしてユウにベッドのお誘いをした事だ。俺がお誘いするなりユウは無言でベッドに入り、篭城開始断固拒否の姿勢を見せた。
ふしだらも何も、ないんじゃないだろうか。
だって、俺とユウが付き合いだしてもう三年以上経ってる。俺もユウも成人してるし、しかも俺達は大学卒業した後すぐに結婚することを約束している。
それは両家とも確認済みで、つまり俺達は親公認の婚約者同士って事で――――――
そういう事をしたって、別に悪くない。と思う。俺達はまだ学生だから勿論避妊はするし、その事はユウにも伝えたんだけどそういう問題じゃないらしい。
「どうして駄目なんさ? 俺達結婚するよね? 婚約者同士だよね?」
ねぇねぇと俺もベッドに上がって籠城中ユウを軽くゆさゆさしてみる。
「それでも駄目だっ! 婚前交渉なんて不潔だ!」
顔を赤くしてユウは怒鳴る。その様子はまるで毛を逆立てて威嚇してくる猫みたいだ。
「ねぇユウ、俺ユウに触りたい」
「…………」
俺としてはむしろ、此処まで我慢できたことを褒めて欲しいくらいなのに。
隣に住んでるユウは良く俺の部屋に来るから、俺はおちおちアダルト雑誌もAVも見てられない。ここのところの夜のオカズはずっと、妄想の中のユウだ。壁一枚隔てれば本人がいるのに、と思うと情けない事この上ない話でもある。
「女の子のユウには分かんないかもしれないけど…………俺ずっとずっと、我慢してるんさ」
「…………」
「結構しんどいよ? これ」
「…………」
ユウは眉根を寄せて、見ると睨むの中間くらいの目で俺を視ている。
「ユウは俺が他の女の子でヌいても平気?」
「!」
俺がそう聞くとユウはびっくりした顔をして、それから俺を睨みつけた。
「浮気するつもりか!」
「いやそれはしないけど。そうじゃなくて、えっちぃビデオとか見て、って事」
「…………、…………お前が昔、モヤシ達と見てたような奴か?」
「ああ、うんまぁあーいうの」
やったのは俺じゃないにしろ、ユウを押さえ付けて無理矢理見せようとしたのは嫌な思い出だ。当時は何とも思わなかったし止めなかった。
…………もしかしてあーいうのがトラウマになっちゃってる部分もあるかな…………。
悔やんでも今更な事だ。
「…………あんまり嬉しくはねぇけど」
ユウはベッドの中で篭城したまま考えているみたいで、眉根に皺を寄せる。俺は指を伸ばしてその眉間に触れた。
「何だよ」
「皺寄っちゃってるさぁ」
くすぐったいのか目を閉じたユウの唇にキスしておく。
「…………、それで、駄目? どーしても、駄目?」
「…………駄目だ」
「むー…………」
ユウはあくまで頑なだ。
「そんな事したらお前だって父上にぶっ殺されるぞ」
「…………それはそーさね」
ただでさえ俺はよく思われてない。お祖父さんとお父さんは相変わらずそれはそれは露骨に俺に嫌そうな顔をしている。どうやら俺の高校時代の素行(というより女癖の悪さ)の悪さは学校長辺りを通して知れ渡ってるらしい。差し詰め、大事な跡取り娘を変な男に誑かされた、みたいな感じなんだろう。これはもう自業自得でどうしようも無いんだけどさ。しかもそれほど間違ってはいないし。
「俺だってそんな…………結婚前にそんな事したなんてバレたら髪切られて尼寺に放り込まれる」
「何時の時代さそれ」
幾ら何でも、と思うんだけどユウは極真面目な顔をしていた。っていうか神社に縁がある家系なのに尼寺? 何で?
「お前の部屋に来るのだって、何もないからって約束の上なのに」
「…………あー、」
言われた、気がする。
隣だから行き来するなとは言わないけれど、結婚まで清い交際を貫くこと――――――こっちにきて最初に申し渡された。最初の内なんてユウの門限は夜の七時だった位だ。実に信用が無い。
頷かなきゃあの厳しそうなお父さんは俺とユウが一緒にいるのすら許してくれそうに無かったから頷いたけど…………。
「だから駄目だ」
「…………」
むう…………、あ。
「!」
閃いた。
「じゃあさ、ユウ」
「?」
「ユウの躰、見せて?」
「…………は?」
「そしたら俺、自分で抜くから」
「…………あ?」
ユウがパチパチと瞬く
俺に言われた内容がよく分かんないみたいさ。
「どうしても駄目なら下着まででもいいから。ね?」
「ね、ってお前…………」
「エッチするよりいいでしょ?」
「…………それは…………そうだが…………」
ユウが困った顔で眉尻を下げた。
あともう一押し。
「ねー、その位いいさ? 絶対無理矢理挿れたりしないから」
「…………、」
無言で、仕方ない…………のか…………? という顔でユウは頷いた。