とあるゆったりとした日曜の朝。
 昨夜から泊まりに来ているユウを抱き寄せながら惰眠を貪っていると…………

 ピンポンピンポンピンポーン!!
 ドンドンドンドンドン!! ガンガンガンガンガン!!!

「おーい開けろー!!」
「「!?」」

 凄まじい騒音に飛び起きる羽目になった。

 

 

 

「ったく何さぁ…………」

 パジャマ代わりのシャツの裾から手を突っ込んで腹を掻きながら、招かれざる客三人を欠伸のついでに眺める。

「んだよ、だらしねーぞラビ」
「そうですよ、今何時だと思ってるんですか?」

 朝だというのに元気一杯のアレンとジャスデビだ。

「つっても十一時前じゃん…………昨日も遅かったんだって」

 流石に寝起き姿のままで二人の前に姿を現すのを嫌がったユウは今、身支度を整える為に洗面所に篭っている。

「「ケッ」」

 遅くなった理由はあと数日にまで押し迫った結婚式についての準備の所為だけど、アレンとデビットの二人はもっと違う理由を想像したらしい。
 因みにこのクソが付くほど忙しい今、二人の想像しているような艶めいたコトはお預け状態だった。忙しすぎてそんな気も起こらないっていうのもある。

「で、何?」
「喜べラビ、祝ってやる」
「?」
「バチェラーパーティーしますよ」

 バチェラーパーティー。それは結婚を控えた新郎が、独身最後の夜に羽目を外して騒ぎ自由な身分に別れを告げるパーティーだ。
 因みにストリップ鑑賞が伝統だったりする。…………って、おい。

「お前らそれアレだろ。俺がオタノシミのトコ写真とってユウに送りつけたりするつもりだろ!!」
「「バレたか」」
「ヒッ!?」

 恐ろしい、何て恐ろしい事を企んでるんさこの二人!!

「婚約者の突然の裏切りに傷心の所に言い寄るのって、略奪の基本だと思いません?」

 未だにユウを諦めていないらしい(…………)アレンが空恐ろしいことを言った。

「思いません? じゃねーさ!! 何考えてんだよ!!」

 さらっと言うな!!
 ユウはそういうのに非常に厳格な態度を取るので、式の前日だろうが当日の朝だろうが破談にするだろう。間違いない。

「神田もやりゃあいいんだろ、バチェロレッテパーティー」
「最近男性のストリッパー呼ぶ人も居るらしいですねぇ」
「ユウがそれ楽しむと思うんか?」

 そんなものお勧めしたところで怒られるか、もしくは「男の裸踊りなんて見て何が楽しいんだ?」と眉根を寄せるだろう。
 そんな話をしていた時、ユウが身支度を済ませて洗面所から姿を現した。髪は結わずに下ろしたままだ。

「こんにちは、神田」
「お前ら、来るなら来るって先に言え」
「この時間ならお前は起きてるって思ってたんだよ」
「無茶言うな、昨日だって準備で日付が変わるまで寝れてねーんだ」
「式の直前なのにそれってどうなんです? お肌の調子悪くしますよ? あーでも、すべすべしてそう…………」

 直ぐ傍まで行って顔を覗き込むアレンに迷惑そうな顔をしたユウは手で追い払う仕草をした。
 それから俺を見て顔を顰める。

「お前何時までそんな格好してんだよ。早く着替えろ」
「はーい」

 

 

 


「バチェラーパーティー、って何だ?」

 リビングで再びその話を持ち出され、ユウは不思議そうな顔で俺を見た。
 ストリッパー云々は置いておいて俺が適当に概要を説明する。

「っつー訳さ」
「ふーん…………いいんじゃねぇの、次の日に響かないんなら」

 但し寝坊したり式の最中寝てたらぶん殴るからな、と続けたユウはアレンの手土産のフォートナム・アンド・メイソンの紅茶を啜って高そうな味、と呟いた。スコーンもあったんだけど殆ど持ってきた本人が食べて終わっている。
 実際ハニートラップ紛いの事を仕掛けられるんじゃないなら気持ちだけはありがたい。気持ちだけでいいんだけど。何故なら俺達が飲んで、品行方正かつ適量で終わらせられるなんて事はまずないからだ。
 さっき男性ストリッパーがどうのとか言っていたアレンとデビットはその件については無かったことにしていた。流石にユウを目の前にしてそんな下品な事を口にする勇気は無いらしい。

「無理そー。絶対飲み過ぎる」
「だったら披露宴まで終わった後にしろよ」
「バチェラーパーティーの意味…………」
「いいんじゃねぇの別にそれは」
「ヒッ! じゃあ神田も一緒に飲み会する?」
「「おいバチェラーパーティーの意味!!」」

 よく分かってない顔でジャスデロが提案すると、途端にアレンとデビットが突っ込んだ。
 それは最早独身さよならでも何でもなく――――――まぁユウも独身とさよならするのは事実ではあるんだけど――――――、単なる結婚おめでとう会だ。
 まぁ俺としてもその方がありがたい。ユウがいればあの二人もエロ系トラップ仕掛けてくることも無いだろう。飲み過ぎになりそうだったら鉄拳制裁してくれるだろうし。

「ユウも飲み会する?」
「式の前日にか?」
「いやどうしても絶対前日って決まってる訳じゃないけど」
「前日はな…………実家で挨拶しておきたい」

 さらりとユウ参加の方向に持って行くと、悪巧み組は若干宛が外れた顔だ。誰が見えてる罠にほいほい乗ると思ってんさ!!
 
「…………まーいーか。 何処でやる?」
「ラビ、神田、どんなお店がいいですか? 予約しますよ」
「ヒヒッ!」
「俺ワイン飲みたいワイン」

 そう言うと露骨に顔を顰めたデビットが、

「やべぇそういやこいつザルだった! おいアレン飲み放題の店探せよ!!」
「僕は食べますけど」
「…………もう食べ飲み放題のチェーン店にするか」
「ね…………」
「いっそ此処でいいんじゃねえか?」
「え?」

 ユウがそう言うとジャスデロが驚いた顔をした。

「好きな物持ち込めば良いだろ」
「うーん、ゲストの家で…………?」

 そこはかとなく納得のいかない顔をするジャスデビに、ホームパーティーを極普通に行うアレンが頷いていった。

「いいんじゃないです? 色々買ってきましょうか。あ、神田冷蔵庫空っぽにしといてくださいね」
「どれだけ何を買い込むつもりだ、お前は」
 
 




 バチェラーパーティーという名の家飲み会に。
 タイトルはバチェラーパーティーを主題にした映画より。







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