お世辞にも好意的な視線ではない。睨まれてるようなもんだろう。…………こいつら、下級生だよな?
見た場所をゆっくり探して、思い当たったのは昨日の屋上。あの赤毛と一緒にいた姿、だ。
誰に用事かは知らないが、と通り抜けようとした所で、白い髪の…………多分一年に腕を掴まれた。
「…………何だよ」
「少しお付き合いいただけませんか? 『先輩』」
「…………」
あとの二人は俺が逃げ出さないようにか、俺を取り囲むような格好だ。
その更に向こうからは、見た事のあるクラスメイトらしき奴らが不安げにこっちを見ていた。
思わず溜息を吐いて、
「…………何だ?」
「昨日の事で少々お伺いしたい事が」
一年は笑って、それから有無を言わせぬ強さで俺の腕を引いた。
他の二人は二年のようだが、オピニオンリーダーはこいつらしい。
腕が痛むので大人しく俺は従うことにする(振り切ってもいいんだが兎も角俺は目立ちたくないんだ)。
校門前から俺が連行された先は――――――人気のない体育館の裏だった。
「んで? 聞きたいことっつーのは何だ?」
わざわざこんな所まで呼び出してまで。
「昨日ラビをやった奴の事だよ。見たんだろ? お前」
色黒で黒髪の奴がそう言った。
…………ああ、そういう事か。
あの赤毛に聞いたのか。
「黒の詰襟の、他校の奴だ」
あの赤毛と一緒に居たって事はきっと親しいんだろう。
大方、友人がやられたからお礼参りって所か。
「それは分かってるんですよ。そうじゃなくて、もっとこー…………どんな顔の奴とか」
「…………、…………、んー」
と言われたって俺もそんなにじろじろそいつらの事見てた訳じゃないからな…………。
考え込む俺を、三人は睨んでるのか見ているのか微妙な線の目で見ている。だから俺を睨むな、俺の所為じゃねぇんだから。
「一人は、やたらデカいゴリラみたいな奴がいた」
「ゴリラ…………」
赤毛の腕を押さえてて無理矢理立たせてた奴だ。
「あとは…………なんか金髪で、人相の悪い…………ああ、喉の下辺りに刺青いれてたような奴がいたな。そいつが司令塔みてぇな感じだったか」
何処を殴れだとか何とか、確かそいつがそんなような事を言っていた。
「…………!」
金髪の方の色黒が、はっ、とした顔をして反応する。
「そ、それって、髪の毛逆立ってるような…………」
「ああ、そんなんだった」
「ジャスデロやった奴か!!」
途端に黒髪の方が唸り声を上げる。
「野郎…………ジャスデロに続いてラビまで…………絶対ぶっ殺す」
…………? 何かあったのか?
「成る程ね…………分かりました」
白い髪の一年が腕を組んだ。
「行きましょう、デビット。やっぱり討ち入りですねこれは」
「だよなぁ」
「ああ、それと貴方。気をつけたほうが良いですよ?」
「?」
去りかけた奴らが俺に振り向いた。
「ラビを助けたって事はようは奴らの邪魔したって事ですから。多分貴方も狙われますからね」
「気をつけろよー」
「…………、」
他人事のように言った奴らはさっさと、金髪だけは何故か手を振りながら去っていく。
その背中を見ながら俺は早速の面倒ごとの気配に、何度目か知れない溜息をつく羽目になった。
教室に戻ると、中に居た奴等の視線が一斉にこちらに向けられた。見返すと直ぐにそれらは逸らされる。
「あ、おはよ…………大丈夫?」
「別に、」
隣の女子の小声の問いかけに短く答えて前を向いた。
腫れ物扱いのほうが、実際俺には有り難い。どうせそう長くない残りの学生生活だ。その方がボロが出なくて済む。
――――――直ぐに予鈴が鳴り、SHRが始まった。